作る笑顔、ぽっかり胸に空いた穴
車へ戻る途中
同期の二人が、前を歩いていた。
一人は、私の一週間前に入った人
もう一人は、私の一週間後に入った人
二人とも歳は
私の親世代だった。
特別、ものすごく仲が良い
というわけではない。
でも、入った時期が近いこともあって
気付けば
よく三人でつるむようになっていた。
昼休みも、三人そろって
車で過ごすことが多かった。
「おーぃ!お疲れ~ぃ!」
そう声をかけると
二人が振り返り
こちらへ近付いてきてくれる。
「おー、お疲れさん」
「面談、呼ばれてたじゃん
どうだったよ?」
そう聞いてきたのは
私より一週間早く入った人。
そして
「長くかかってたね~
なんか言われた?大丈夫?」
そう心配してくれたのは
私より一週間後に入ってきた人だった。
「いやー
フルタイムパートにならないかって話だった~」
そう言いながら、私は苦笑いした。
すると二人は
「あ~、やっぱりか!」
「絶対そう言われると思った~!」
そんなふうに笑う。
「一応、自分でも考えては
いたんだけど
色々思うところもあってさぁ
なかなか決断出来なかったんだけど
まあ、上司から打診もらうなら
やるかーって決めた感じ」
そう言うと
二人は、ニヤッと笑った。
そして、ぽんっと
私の肩に手を置く。
「まぁ、分かるよ!
心配しなくても大丈夫!」
「実は、私たちも
フルタイムパートになるからさぁ!」
「そうそう!
いくら年金あるからって言っても
稼がないとね~」
「まぁ…… 時給はやっすいけど!」
二人はそう言って
笑い合った。
「あ、そうなの!?!」
「なんだよ~!
だったら、あんな悩むんじゃなかったな~!」
私も、そうニヤッと笑いながら
二人の肩に手を置いた。
「色々あるけどさ~
三人で頑張ろ~!」
すると
「ホント……色々あるけどね~」
「ね~!あー、お腹空いた!」
「午後に備えて
ご飯食べよ、食べよ~!」
そんなふうに
三人で好き勝手言いながら
その場は解散した。
(……ちゃんとは言えないけど
二人の存在は……心強い)
でも……
(……信じ切るには
まだ、怖いんだよな)
二人は、良い人だ。
それは、ちゃんと分かっている。
でも、前の会社での出来事が
どうしても頭をよぎる。
信じていたはずの周りの人たちが
まるで、蜘蛛の糸みたいに
少しずつ、少しずつ……
私の周りを囲んでいった。
中央にいる蜘蛛へ近付くように
逃げ道を塞ぐように
徐々に、追い詰められていく。
絡め取られる足
逃げられない囲い
あの感覚だけは
今でも、忘れられなかった。
人と笑っていても
ふとした瞬間に
虚無感みたいなものに、支配される。
「はぁ……」
まるで、身体そのものが
〘疲れた〙
そう訴えているみたいに
自分の意思とは関係なく
深いため息が出る。
そして、そんな自分に
嫌気が差してしまう。
それでも……
自然と笑顔を〘作れる〙のは
きっと、職業病みたいなものなのだと思う。
前の会社で、長い時間をかけて
染み付いた癖。
苦しくても
疲れていても
とりあえず、笑う。
そうやって、私は
ずっと…働いてきたのだから。




