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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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戻れなくなった日常

帰宅すると

旦那が出迎えてくれた。


「おかえり。大丈夫?」


事前にLINEで


仕事を休むことも

病院に行くことも


伝えてあった。


それなのに……


顔を見た瞬間


「……ごめんなさい」


その言葉が

自然と出てきた。


何に対してなのか

自分でも、分からなかった。


謝る私に


旦那は


「……いいよ

 なんにも謝ることはない」


「大丈夫、大丈夫」


そう言ってくれた。


その言葉に

少しだけ、力が抜けた。


そのあと

義姉にも連絡をした。


今朝のこと


仕事を休んだこと


病院に行ったこと


義姉は、これまでもずっと

会社での話を聞いてくれていた。


心配して、姪と共に

職場まで来てくれたこともある。


病院を教えてくれたのも

義姉だった。


ずっと

支えてくれていた人だ。


〘お疲れ様〙


〘身体は元気だから

 休んでいいのかって思うかもしれないけど

 熱が出たり、怪我したりしたら休むでしょ?〙


〘それと同じだよ〙


その言葉を読んで


(……ああ)


頭では、納得できた。


でも、それでもどこかで

罪悪感が消えなかった。


(……甘えてるだけなんじゃないか)


(……情けないな、自分)


そんな気持ちが

ずっと、付きまとっていた。


何を見ても


何を聞いても


笑えない。


気づけば、涙が出てくる。


眠ることも

うまくできない。


身体は、ずっと

重りを背負っているみたいで


吐き気も、消えない。


未来が……

見えなかった。


どうすればいいのか。


どうしたらいいのか。


ずっとそんな事が頭をグルグルしていた。


そんな状態で

しばらく過ぎた頃。


いろいろ考えた末に

私は、退職を決めた。


会社とのやり取りは

最初こそ、電話だった。


でも……


着信の番号を見るだけで

動悸がして

電話に出ることすら、できなくなった。


最後には

手紙でのやり取りになった。


(……なんて情けない)


(こんな辞め方……

 何してるんだろう、自分)


そうやって

自分を責め続けていた。


体重は、休職中

食べることはできていた。


でも、気持ち悪くなって

吐いてしまうことがあり


気づけば

59.0キロまで落ちていた。


嬉しくない落ち方だった。


「……はぁ」


体重を見て


ため息が出る日が来るなんて

思ってもいなかった。


気持ちが追いつかないまま

身体だけを、無理やり

動かしているような日々が続いていた。


けれど…


友人が、家まで来てくれたり


義姉や姪が、話を聞きに来てくれたり


旦那が、外へ連れ出してくれたり


周りの人たちに支えられながら


少しずつ、少しずつ

笑える時間が増えていった。


泣く回数も 以前よりは減っていった。


〘未来〙のことも


ほんの少しだけ

考えられるようになっていた。


それでも


ちょっとしたきっかけで


会社での出来事が


フラッシュバックみたいに

頭を駆け抜けることがあった。


スーパーで似た声を聞いた時


仕事関係のCMを見かけた時


LINEの通知音が鳴った時


その瞬間


心臓が、ぎゅっと縮こまる。


息が苦しくなる


身体が強張る


(……もう終わったことなのに)


そう思っても

心は、簡単には忘れてくれなかった。


そんなある日


旦那が


「これ、見てみ?」


そう言って YouTubeを見せてきた。


そこに映っていたのは


『芸能界で抱かれたくない男No.1』


そう言われていた、あの人だった。


でも……


その動画が


思っていた以上に

私を救うことになるなんて。


このときの私は

まだ、知らなかった。

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