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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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43/67

分かっているのに、止まらない

次の日——


目が覚めた瞬間

身体が、ずん、と重かった。


(……しまった 

 お酢、飲み忘れた)


お酢のおかげか

食べすぎた日でも


翌朝

身体が重くなることは、なかった。


でも——

昨夜は、そのまま寝てしまった。


浮腫みと重さが

はっきりと残っている。


なんとか息子を送り出し


実家へ行く準備をしながら

旦那にLINEを送った。


帰りが遅くなること


昨夜のこと


すぐに返事が来た。


〘無理しないでね〙


その一言に

少しだけ、気が緩む。


でも、今回は

無理をしないわけには、いかなかった。


(行きたくない……)


(行きたくない……)


(行きたくない……)


呪文のように繰り返しながら

車を走らせる。


実家に着くと

玄関は、開いていた。


父が出たあとだろう。


リビングに入ると

母がソファで横になっていた。


「……寝てるの?」


「起きてるよ」


その一言で

昨夜の話が、また始まった。


——悲劇のヒロイン劇場。


最初は、流していたが


だんだんと

イライラが積もっていく。


(……はー……帰りたい)


このままじゃ、キレる。


そう思って

私は母を外へ誘った。


「気分転換になるしさ

 海でも見に行かない?」


母は、あっさり頷いた。


車を走らせ

小さめの音で音楽を流す。


母は、相変わらず

話し続けている。


でも

音楽のおかげで

少しだけ、距離ができた。


海は、白波が立っていた。


(……今日は、荒れてるな)


ぼんやり海を見ながら

ふと、思う。


(このまま……

 沈めて帰ろうかしら)


自分でも

くだらないと思いながら

少し、笑ってしまった。


それが気に障ったのか

母が声を荒げる。


「なんで笑うの!?

 お母さんが可哀想だと思わないの!?」


(……思わねぇよ)


心の中で吐き捨てる。


「ああ、ごめんね   

 それより、ご飯食べない?

 奢るから」


そう言って

なんとか場を収める。


近くの定食屋に入ると


そこは偶然

旦那との初デートで来た店だった。


母は相変わらず

愚痴をこぼし続けていたけれど


私は、それを聞き流しながら

当時の記憶を思い出していた。


(……懐かしいな)


そのおかげで

不思議と

ちゃんと食べることができた。


帰りの車で

母は、眠ってしまった。


(……やっと静かになった

 はー…疲れる)


音楽のボリュームを

少しだけ上げる。


そのまま、実家へ戻り

母をソファに寝かせる。


私は、スマホをいじりながら

父の帰りを待った。


予想より早く

21時頃父が帰宅した。


母は起こさず

そのままバトンタッチして

私は家を出た。


(……あ、そういえば)


まともに食べたのは

昼の定食だけだった。


コンビニに寄る。


その瞬間——


また、お腹が空いた。


昨日と、同じだ。


気づけば

カゴに、次々と商品を入れていた。


昨日より、多い。


袋は、三つ。


(……まーた、買っちゃった

 でも今日は、旦那もいるし……)


そう思って帰宅する。


でも

旦那も、息子も、もう寝ていた。


静かな家。


そして——


目の前にある、食べ物。


(ダメだって……)


頭では、分かっている。


でも……止まらない。


気づけば

ほとんど、食べ尽くしていた。


(……あー……またやっちゃった)


強い罪悪感。


それでも

今度は忘れないように、お酢を飲む。


そのまま——


また

眠りに落ちた…。

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