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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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甘いものが、沁みない夜

父が書類の手続きを終えて

車に戻ってくるまで


私は、外で待っていた。


どうせ車に乗れば


母の

〘自分がどれだけ可哀想か〙という話が

延々と続くのは、目に見えている。


聞くなら、父がいるときの方がいい。


私一人で相手するのは

正直、面倒だった。


やがて父が戻り

車に乗り込む。


……予想通りだった。


母の話を

右から左へ流しながら

私はスマホに視線を落とす。


父は

必死に相槌を打っていた。


しばらくして

車は、コンビニへ入った。


「飲み物いるか?

 なんか食べるか?」


運転席から

父が声をかけてくる。


(……夜中だしな

 でも……甘いもの、食べたい)


時計は、0時を回っていた。


ダイエット中としては

完全にアウトな時間。


でも——


精神的に疲れていて


どうしても

糖分が欲しかった。


「……一緒に行こうかな」


「そうか……

 あ、でもお母さんがな……」


二人で母を見ると

助手席でうとうとしていた。


「大丈夫そうだな

 よし、一緒に来い」


そう言って、父は珍しく

後部座席のドアを開けてくれた。


(……いなくなったら

 いなくなったで……いや、やめとこ)


思考を途中で切って

父と一緒に

コンビニへ入る。


父とコンビニに来るなんて

いつぶりだろう。


父は

母が好きそうなお菓子や

飲み物を選んでいた。


私は、お茶を手に取り


そのまま

デザートコーナーへ向かう。


久しぶりのコンビニ。


並んだデザートの数に

思わず迷う。


(……え、どうしよ)


気づけば

隣に父が立っていた。


「…好きなの、選べよ」


そう言いながら

父は

どら焼きをカゴに入れる。


(……どら焼きか)


(和菓子もいいけど……

 お母さんと一緒は、なんか嫌だな)


そう思って

私はチーズケーキを手に取った。


(……ふふ)


(こんな時に

 お義姉さん思い出すとか)


義姉は

チーズケーキが好きで

甘いものも好きだ。


でも

お腹がいっぱいだったり

体調が悪いと


匂いだけでも

受け付けなくなる。


それを分かっていて


甘いもの大好きな旦那が

わざと差し出して


よく喧嘩になっていた。


そんな光景が

ふと頭に浮かんで


少しだけ、気持ちが緩んだ。


コンビニを出て

車に戻る。


そのまま実家へ戻り

私は、そのまま帰ることにした。


母は

食べていけとしつこかったが


父が


「息子君もいるんだから」


と、なだめてくれた。


手には、父が持たせてくれた

チーズケーキ。


帰り道。


信号待ちで

一口、食べる。


「……美味しい」


でも——


「……もうちょっと元気なときに

 食べたかったな」


ぽつりと

誰もいない車の中で

そう、つぶやいた。

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