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私は二度、三十キロ痩せた  作者: かゆると


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太ってても、幸せ…?

ある日

姉の家に、遊びに行った。


ドアを開けて


顔を見た瞬間——


私は、言葉を失った。


姉が

太っていた。


それも

明らかに分かるほどに。


昔から

痩せている姿しか、知らない。


あの姉が、目の前で

まるで、別人のようになっていた。


(……え?)


頭が、追いつかない。


ただ

じっと、見てしまった。


そんな私に

姉は、苦笑いを浮かべて言った。


「びっくりしたでしょ」


「ちょっとね

 ……太っちゃった」


どうやら

子育てのストレスで

食べるようになってしまったらしい。


姉に、言われた。


「アンタが太ってた時の服

 まだあるよね?」


「もう着ないなら、ちょうだい」


「いいけど

 姉貴の好みじゃないかもよ?」


「いーの、いーの

 どうせ家にいるだけだし」


「誰が見るわけでもないしさ

 今度来るとき、持ってきてよ」


「うん…分かったよ」


そう答えたものの


(今の姉が……

 着れるのかな……)


そんな疑問が、頭をよぎる。


それくらい

姉は、変わっていた。


でも——


実家にいた頃よりも


ずっと、ずぅっと

幸せそうだった。


おおらかに口を開けて

笑う、その姿は


どこか


軽くなったようにも見えて


それを見ていると


私も、自然と嬉しくなった。


姉の家を出たあと

彼と、落ち合った。


姉のことを話す。


「……すごい太っててさ」


自分でも

少し驚くくらい

その言葉は、あっさり出た。


彼は、少し考えてから

こう言った


「健康は、ちょっと心配だけど」


「でも

 お姉ちゃんが幸せなら

 それで、いいんじゃない?」


(……太ってても、幸せ)


その言葉が

胸の奥に、静かに落ちていく。


痩せている人を見て


『どうせ、自分には無理だ』


そうやって

どこかで、諦めていた頃の自分。


太っていることに

卑屈になっていたわけじゃない。


でも


〘どうせ〙という気持ちは

ずっと、消えなかった。


努力もせずに


勝手に、自分を

不幸な側に置いていたのかもしれない。


痩せたことで


少しだけ

自信は持てるようになった。


でも——


そこにたどり着くまで


私は……

ちゃんと、笑えていただろうか。


痩せていても


太っていても


笑えているなら——


それで、いいんじゃないか。


そんなふうに、今までの


“当たり前”


それが、静かに崩れていくのを感じた。

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