会いたい、でも会いたくない。
断りの連絡を入れた、直後
電話が、かかってきた。
相手は、もちろん
——彼だ。
一瞬、出るか迷う。
でも
結局、出てしまった。
「もしもし……ごめんね、今日」
「別にいいけど
どうした?体調悪い?」
「……そういうわけじゃないんだけど
ちょっと、色々あってさ
行けないんだ」
少しの沈黙。
「……そっか
分かったよ
無理しないでね」
そう言って
電話は、切れた。
断ったことを
少しだけ、後悔した。
(ばあちゃんもいるし……
大丈夫だとは思うけど
でも、姉貴も心配だしな……)
母屋に戻ると
姉は、もう起きていた。
「おはよ~
今日はデートでしょ?
帰りに、なんかお菓子買ってきて~」
元気そうな声だった。
「おはよ
デートは、断ったよ
それより、体調大丈夫なの?」
そう言った瞬間。
姉は、わざとらしく
いつか見た泣き真似をしてみせた。
「……お菓子、買ってきてほしいなぁ
お姉ちゃん、ポテチが食べたいなぁ」
「彼の大好きな甘いものも
食べたいなぁ……
……あーぁ、食べたいなぁ」
「人の話聞けって
断ったんだってば」
そう言うと
姉は、私の携帯をひょいと奪った。
「お姉ちゃん命令!
やっぱ行くって電話しろ
今、ここで。さあ、ほら、早く」
そのまま、勝手にかけようとする。
そして
少しだけ、真面目な声で言った。
「お姉ちゃんはさ
アンタが思ってるより
ヤワじゃないから」
「心配かけたけど、もう大丈夫
だからさ、デート行って
ちゃんと食べて、安心させてよ」
そう言うと
今度は、あのニヤニヤした顔で
「お姉ちゃんが言ってあげよっか?
やっぱりー、会いたいなーって」
(うわっ…出た……この顔……)
でも
この顔が出るってことは
体調は、本当に大丈夫なんだろう。
少しだけ、迷う。
それでも——
結局
彼に、電話をかけることにした。
……でも。
出ない。
(あ、そっか)
サウナにでも行って
運転中なのかもしれない。
断ったのは、自分だ。
(まあ、いいか……)
そう思って
姉をなんとか納得させて
久しぶりに
祖母の作った、お粥を口にしようとした。
そのとき——
家のインターフォンが鳴った。
(……誰?)
扉を開ける。
そこに、立っていたのは——
彼だった。




