第80話 重い土地①
「「しんどい」」
昨日渡ったスネークス・リバーの川岸でぼやく。体の疲れが何故か取れてない。
・・・理由は分かってるけど。
しかしチョコも辛そうだな。風呂上がった後すぐ寝たようだけど、疲れが取れなかったのか?。
「大丈夫か?」
「ちょっときついかも。ハンマーがいつもより重く感じるわ。昨日の疲れが残ってるのかしら」
「俺もなんか体が重くてさ・・・」
チョコも本調子じゃないみたいだから今日は休みでもいいかな。
天気はいいけど、この調子だとそんなに進めそうに無い。ならいっそ、1日休んでからにしよう。
「今日は休みにするか」
「そうね。賛成」
さすがにチョコも急いで山に行こうと言わなかった。
よほど疲れてたんだな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2日目。
「「しんどい・・・」」
1日休んだので大分疲れは取れたはず。なのに体がだるい・・・いや重い。家を出るまではそんな感じはなかったのにいざ行こうとすると重い。
チョコも昨日と同様にハンマーが重そうだ。
「なんか体が重いんだが、チョコはどうだ?」
「うーん・・・、体はそうでもないけどハンマーが重いのよね。背負うとひっくり返りそうになるわ」
『ウチは何ともないで!』
チョコとセリがそれぞれ答える。
セリは動いてないんだから疲れないだろ!。
そうセリに言おうと振り向き、少しバランスをくずす。
「おっとっと・・・」
こけはしなかったけど、少しふらついてしまった。背負ってるリュックがいつもより重いのか後に倒れそうになった。
『危ないなぁ。しっかり立ちーや・・』
「いや、なんかリュックが重いんだけど。・・・・もしかして、セリ太った?」
『太ってないん!』
そういわれてもいつもより重いし・・・、太っただろ。見た目は変わってないから分からなかった。
『太っとらん。ウチは太っとらんで!』
喚きながらセリが暴れる。多分おやつを制限されると思ってるのだろう。だが今暴れられるとバランスが・・・。
「わ!」
後にこけてしまった。
お尻からいったので尾てい骨が痛い、だがたいしたことはなさそうでよかった。セリは反動でリュックから投げ出され、地面に転がった。
「ちょっと!、大丈夫?」
「ああ、なんとか・・・」
尻の土を払い起き上がる。やっぱり体が重いな。
セリが抜けたのでリュックは軽くなったけど。
「セリ、大丈夫か?。・・・・・何してるんだ?」
投げ出されたセリは仰向けで転がっていた。何とか起き上がろうとしてるみたいだが、ジタバタしてるだけで一向に起き上がれない。尻尾で地面を叩いている音だけが響く。
『お、起きられへん・・・』
「おまえ・・・、とうとう自分で起きられなくなるまで太ったのか?」
『ちゃ、ちゃう!。昨日や朝は起きられたんや!』
確かにソファの上では寝返り打ったりしてたな。
でも今は出来ない・・・。
さすがのセリでもそこまで急激に太ったりはしないだろう。
それに見た目は変わっていない。
・・・・もしかしてセリは太ってないのか?。
となると重くなった原因は他にある。
体重が変わらなくても重くなる場合は・・・
「重力?」
ちょっと試しに跳んでみる。・・・よく分からないな。
そもそも普段どれだけ跳べるか知らないし当然か。
「セリ、ちょっと思いっきり垂直に飛んでみてくれないか?」
『ええけど・・・、なんでや?』
「ちょっと確認したいことがあるから」
自分だと良く分からないのでセリにお願いする。セリなら垂直でもかなり高くまで跳べるはず。ウインドドラゴン戦時は10m位跳んでたかな。
『行くで?、ちょっと離れときや』
俺たちが離れるのを確認してセリが跳んだ。
相変わらず速過ぎて見えない。消えたと同時に上空を見上げる。
セリは・・・、あそこか!
上空に小さな粒が見える。うん、跳びすぎてよく分からん。あいつ10階建てのマンション位なら一気に屋上まで跳べるんじゃないか?。
「ねぇ?、セリは何処なの?」
「あそこ・・・あ、落ちてきた」
完全にセリを見失ったチョコに教えようとした時、セリが落ちて来た。受身も取らず地面に激突する。
衝撃で周囲に大きな音と土埃を上げる。
「「げほっげほっ・・」」
口を手で塞ぎ、土埃をもう一方の手で払う。
アイツ・・・着地失敗したのか?。
『跳んでみたけど、何の意味があるんや?』
土埃の収まりセリの姿が見える。自身が作ったクレーターの真中に刺さってた。
冷静を装ってるが、どうやら抜けないらしい。それとなく抜けようとがんばっている。
「重力が強くなってるのかを知りたかったんだ。どうだ?、跳んだ高さはいつもと比べて低かったか?」
低かったのなら重力が強くなってるということだ。そうでないのなら体が重いのは別の原因になる。
『知らん。跳んだん初めてやし』
「え?、ウインドドラゴンの時飛んでただろ?」
『あの後進化してるし、あの時も本気や無いで!』
あ、そうか・・・。
進化してたの忘れてた。つまり・・
「ごめん。跳んでもらった意味無いわ」
『なんやてぇ!?』
比較元が無いのなら跳んでもらう意味無かった。
しかしそうなるとどうやって確認したらいいのだろう?。
「重力うんぬんは分からないけど、家と外で比べたらダメなの?」
「あ!」
その手があった。
門を境にすれば体感で分かるな。何で気付かなかったんだろう。
よし、すぐに試してみよう。
門を出し潜ってみる。潜った瞬間一気に体が軽くなった。チョコも潜った瞬間に変化を感じたようで、出たり入ったりしている。
「家に入るとハンマーが軽くなるわ」
「こっちも体が軽くなった。やっぱり重力のせいか・・」
となると、パルチ山に登るにはこの強い重力の中を歩くしかない。なかなか辛い旅になりそうだ。
何か対応策とかないかな?。
帰って一旦考えよう。
『ちょい待ちぃ!!。先にウチを助けてーや!!』
未だに地面から抜けないセリが叫ぶ。自力ではどうにもならなかったようだ。
叫ぶまですっかり忘れてた。




