第71話 ヘッドの執務室(本日2回目)
冒険者組合に連行された。朝来た部屋に通される。
そこにはヘッドがいた。
「兄貴、やっと捕まえたぞ」
「そうか、お疲れさん。おっと、チョコとお嬢さんも居るのか」
ヘッドは職員にお茶の用意を頼むと俺らを椅子に座らせる。
お茶なんていいから帰らせてくれないか?。
「俺たちの用件を終えたらな」
「用件?」
「用件は三つある。一つはさっき見せたウインドドラゴンについて。二つ目はウインドドラゴンを発見した場所、三つ目はお前が何処から来たのか、だ」
ヘッドはそれぞれの理由を説明してくれる。
一つ目は単純に買い取りたいとの事。二つ目は、今後の防衛のために発生源を特定、可能であれば調査するため。三つ目は色々おかしい俺を知るためだ。
一つ目と二つ目はなんとなく分かるが、三つ目の理由は適当すぎないか?。
俺が何処から来たのかなんてどうでも良いだろうし、言ったところで信じてくれないだろう。
「どうでも良かねーよ。とはいえ強制できることでもないからな、言いたくなけりゃ言わなくても良いけどよ」
とは言いつつ何か言わないと開放してもらえない気がする。違う世界から来たことや、“旅の宿”以外ならある程度話しても大丈夫だから、その辺りを注意して説明する。
「じゃあお前は蛇神の森に居た以前の記憶が無いのか?」
「ああ、気付いたらあの森に居た。セリと会ったお陰で森を抜けられたんだ」
「ほー、こいつとか・・」
日本に居た頃のことは記憶喪失になったことにして、知らないフリをしておいた。
あとはセリやナギたちと出会った経緯なども簡潔に説明しておく。
「まさかあの森の奥に村があったとはな・・・」
「信じるのか?」
蛇神の森の奥に行くのにも苦労するらしい冒険者たちからすると、森の奥で、かつ高台の上から来たなんていっても信じられない気がするんだが・・・。
「完全に信じてるわけじゃあないが、グレート級を持ってきたお前のことだし、森の奥に行ったのは信じられる。だがさすがにあの高台の上から来たってのはどうもなぁ・・・。ちなみにどうやって降りてきたんだ?、まさか崖を降りてきたわけではないだろ?」
飛びました。いや、落とされたの間違いか?。
「・・・何だって?」
『飛び降りただけや、いちいち崖なんて降りとったら時間掛かるやん』
「そういうことです」
ライト兄弟とチョコが「マジで?、馬鹿じゃねぇの?」みたいな顔をする。やめろ俺が発案者じゃない。
「セリは“風生成"を使えるからな。その特異性を使って降りてきた。上がるのはちょっと無理だが」
『今なら上がれんで、あの頃のウチと違うさかいに』
セリが念話を飛ばしてくる。
そうか、進化したから特異性も強くなってったっけ。だが飛ぶのはもう嫌だから行かないけどな!。
「・・・お前の頭がおかしいのは分かった。その蛇がおかしいのもな」
『当然や、ウチは最強やからな』
心外だが、ここで言い返すと時間が掛かりそうなので黙っておこう。
概ね理解してもらえたようだしいいや。
あとセリ、褒められてないからドヤ顔やめとけ。
「それで、お前らはこれからどうするんだ?。出来れば先程のウインドドラゴンを売ってほしいのだが?」
「別にかーー」
「「だめ」」
構わないと言おうとしたら女性陣からストップがかかる。
2人の顔に「自分たちに寄越せ」と書いてある。どうやら2人も欲しいようだ。
「すまない。2人が欲しがってるので売ることは出来ないわ・・」
「そうか・・・残念だな」
ヘッドはあっさり引き下がった。
あんまり残念そうじゃないように見えるな。欲しくなかったのか?。
「いや、欲しいのだが金がな・・・。かと言ってまたすぐにオークションを開くのもよくないし」
昨日グレート級のオークションをしたばかりだ。すぐにまたすると「何で一緒にやらないんだ」と出席者から言われるらしいので、普段は大体数ヶ月の期間を開けて行ってるらしい。
だから欲しくてもすぐに買い取り出来ないようだ。
「2人が使った余りで良ければ売れるけど」
「「そんなものは出ません」」
あ、そうですか。
どうやらドラゴン素材に余りは出ないらしい。
「悪い、やっぱり無理なようだ」
「ははは、だろうな!。ドラゴン素材で余りを出すやつは無能だからな」
ヘッドは笑っていた。
ドラゴンは全部使える。それがこの世界の一般常識らしい。
爪とか角とか、皮くらいしか使えないと思ってたがそうでは無いようだ。
「じゃあ・・・ウインドドラゴンはなしかぁ・・・。一度でいいからドラゴンを解体してみてぇんだがな」
笑ってるヘッドと違い、テットは肩を落としている。
ちらちらとこちらを見てくるのは、代わりに何かを寄越せと言ってるように見える。
はぁ・・・、仕方ない。
「セリ。アリゲーター以外で何か持ってる?」
マッドロブスターとかは魔石だけ回収して捨ててたしセリの“収納”には入れてない。
入れときゃよかったな。アリゲーター以外でセリが何か持ってるといいんだが、
『ススムと会う前に取ったやつならあんで。ちっちゃいのでええか?』
「まぁ普通サイズで」
セリは
収納空間から出す。あ、アーススパイダーだ。懐かしい。
鎌風で首元を斬られている。
「これで良ければいいけど」
出してから聞くのは間違ったな。いらないと言われるとセリに悪いし、向こうも断りづらい。
そもそもアーススパイダーなんて結構見るしそんなに需要ないか。
「い、いいのか!!?」
「・・・あ、ああ」
どうやら杞憂だったようだ。
テットはかなり食いついている。それどころかヘッドやチョコも興味津々だ。
「これがあのアーススパイダーか・・。初めて見たな」
「危険度Bくらいだったかしら?。私1人じゃ無理ね」
アーススパイダーはテットが色をつけて買い取ってくれた。
「もうお金要らないんだけど」
「・・・冒険者になって数日の奴が言うセリフじゃねぇな。なら代わりにこれでどうだ?」
テットが本棚から一冊の本を取り出し、そのまま俺に渡してきた。
ん?、魔物図鑑?
開くと魔物の絵と説明がびっしり書かれている。おお、これはいいものだ。
「ある程度の魔物ならそこに書いてある筈だ、変異種は流石に少ないが。旅を続けるんだろ?、なら持っておいて損はないぞ」
「お前は魔物の価値が分かってないし、それ持っといたほうがいいな。いいのが居たら狩って持ってきてくれよ」
「あらいいわね。後でわたしにも見せて」
「ありがとう。遠慮無く頂くよ」
分かっている範囲で生息地も書かれてるし、見たくなったらそこにけばいい。なかなか使えそうだ。




