第61話 2度目の買い取り
気を取り直してレーヴィア探索を再開する。
わけにはいかず、今日は中止になった。
一旦家に帰り、ナギが落ち着くまで待ったのだが、ナギは落ち着くと同時に落ち込んでしまった。
どうやら、思い出して自己嫌悪に陥っているらしい。
フウたちが何とかするからと言ってくれたので、ナギを任せて俺はまたレーヴィアに戻ってきている。
お金が減ったので余っているレギュラー・アリゲーターを買い取ってもらうためだ。
受付には用がないので、そのまま裏の解体工房にお邪魔する。
「あ!、アンタ!。こーー」
『何やちょび髭、まだおったんかいな?』
「っ!、うぅ・・」
入ったと同時にこの前のちょび髭と目が合った。向こうはこちらに気付いて何か言おうとしたらしいが、セリに睨まれてビクッとする。完全に縮こまってるな。
この前デカい態度を取っていたので、セリの印象は悪い。まぁ俺も良くないけど、腰抜かしてる姿見たし。今はもうどうでもいいかな。
『で?、今日はどれくらいやったら大物になるんや?、ん?』
「めんどくさくなるから、セリ黙って」
なんで煽ってるんだ。さっさと買い取ってもらって帰るぞ。
チョコたちにもすぐ帰るって言ってあるんだから。
チョコに収納空間を開いてもらって中からレギュラー級を2匹、あ、ついでにスモール級とミニマム級も適当に出しておこう。収納空間に上限があるのか分からないが、持っていてもしょうがないし売ってしまおう。
ちょうど需要もあるみたいだし。
「こ、これ全部か・・・?」
「ああそうだ、買い取ってくれ」
カウンター上に積み上げられた即席のアリゲーター山を見て、ちょび髭は呆然としている。今回はピラミッド積みにしてみた。
ちなみに、首を切られてるのがセリの獲物で、頭に穴が空いてるのが俺の獲物だ。しかしこうやってみると、やっぱりセリの方が多いな。
『ふふん。どやぁ!、やっぱりウチの方が多かったなぁ』
「まぁ知ってたけどね。ほら勝利の飴だ、落とすなよ?」
実はアリゲーターを狩っている時にちょっとした競争をしていた。単純にどちらが多く狩れるかで、見つけた魔物を先に倒した方に点数がつく。索敵が早いセリは俺が気付く前に何匹も倒していたので、負けてるのは分かっていた。
勝ったセリには数個の飴を口に入れる。セリは嬉しそうに舐めまわして
『口の中が、果物の宝石箱やぁ・・』
などと言っている。・・・また、懐かしいネタを。
元ネタを知ってるんじゃないかと最近思う。
まぁいいや、俺は敗者のどら焼きを食って待とう。カウンターをみるとちょび髭がスモール級に苦戦してるし時間がかかりそうだからな。
『ちょい待ちぃ!!。なんで負けたススムがどら焼き食うとんねん!?』
「なんでって・・・、今回は勝者が飴玉数個、敗者はどら焼き一個だからな」
『そんなんいつ決まったん!?。てゆうか何で敗者にお菓子あんねん!』
そりゃ敗者が可哀想だからな。まぁ食べたかっただけなんだけどね。
もうお昼だからお腹空いてるんだよ。
という言い訳がセリに通用するわけでもないので、結局セリにもどら焼きを渡したけど・・・。
「な、なぁアンタ。アレ全部どこで狩ってきたんだ?」
「え?、蛇神の森だけど・・。え?、うわっ!」
急に後ろから声をかけられて振り向くと冒険者が集まって渋滞になっている。どうやら昼で切り上げる冒険者たちが買い取りしてもらおうと集まって来てたらしい。
セリと遊んでいたので気付かなかった・・・。この渋滞ってどう見ても俺のせいだよなぁ。
とはいえまだアリゲーターの精算が終わってないし離れられない。
どうしよかと考えてると、入口から大きな声が聞こえてきた。
「なんだぁ?、この行列は?。って、またお前か!」
そんな常習犯みたいに言わないでほしい。まだ2回目なんですけど・・。
入ってきたのはスキンヘッドの大男。名前は確か・・
『ヘッドライトや!』
「テット!。テット・ライトだ!!。ヘッドは兄貴だ!」
そう言われてもよく分からない、両方スキンヘッドだし。俺は人の顔を覚えるのが苦手なので特徴で覚えるのだが2人とも特徴同じだからな。
「で?、今日は何しにきたんだ!?」
「あ、要らないから買い取ってもらおうと思って・・・」
アリゲーター山をテットに見せる。見た瞬間、テットは手で目を覆った。
「グレード級もそうだが、どこであんなに狩ってくるんだ?」
「だから蛇神の森ですけど?」
「いやそれは分かるが、そこの何処だ?」
「さぁ?。彷徨ってたから分からない。それに彷徨ってる時に見かけた奴を片っ端から狩ってただけだし、一か所って訳でもないからさ」
実際は物凄く奥の方で場所も大体分かるけどそれは言わない。
まぁチョコの話だと、そこに行くには数週間かかるそうだし言っても行けないだろうけど。
テットは首を振ると「もういい」と言ってため息をつく。どうやら聞いても無駄だと悟ったようだ。
そのままカウンターに移動し、てんやわんやしているちょび髭をどかす。
「おい!。後は俺がやるからお前はあっちの対応をしろ」
「わ、わかりましたぁあ!」
ちょび髭は少しホッとしつつ並んでいた他の冒険者の対応を始める。意外と手際がいいな、思ったより出来るみたいだ。
『ふふん。うちらの獲物では奴のスペックで対応できひんみたいやなぁ』
「一応言っとくが、これは迷惑行為だからな?」
え?、そうなのか?
迷惑かけてるのは見れば分かるけど。
「大体、予約もなしでこんなに狩って来るんじゃねーよ。前のグレート級もまだ片付いてねぇのによ」
テットはぐちぐちと文句を言いつつも物凄い早さで精算業務を行なっている。
対応の差から、ちょび髭はやっぱりダメだな。
「そういえグレート級は売れそうか?」
「ああ、情報を流した途端、資産家や、大手の商会、上位貴族までもが欲しがりやがった。値段はかなり跳ね上がりそうだぞ」
それを聞いて安心した。その上位貴族が何かは知らないけど。
「この国を治めている20の統治議員の1人だ。まぁ王国でいう王族みたいなものかだな。一応出品者は伏せてるが、バレるのは時間の問題だ。これからちょっかいがかかるかもしれないし気をつけろよ」
『なんやちょっかいって?』
「大したことはない。ただ個別依頼を要求されるだけだ。奴らは金さえ出せば、冒険者は動くと考えてる節があるからなぁ」
・・・・・
よし、さっさとこの街から脱出しようか。何でこの世界でも強要されなければならないんだ。俺は金なんていらないからちょっかい出される前に出て行こう。
『そのちょっかい出してきた奴は消してええんか?』
「やめろ。そんな事したらこの国が敵に回るぞ」
『ならこの国ごと消せばええんか?』
「やめろ。後が面倒だからさ」
全くセリのやつは物騒だな。フレイに聞いた過去を考えるとやりかねないから余計に困る。
テットは冗談だと思ったのか笑ってるだけだったけど。
「まぁ言われたら適当にあしらっておけ、最初を引き受けると逃げられなくなるからな」
「ああ、分かった。気をつけるよ」
「ああ、そうしろ。ほら今回の金だ。確認するか?」
「いや、いい。チョコたちを待たせてるからな」
テットは「そうか」と言ってお金を渡してきた。うっ・・、重い。一体何枚入ってるんだ?
まぁこれくらいあれば服も買えるだろう・・・。
後はナギの調子が元に戻ってればいいんだが・・・。




