第51話 ギガント・ランプリー
セリと主ヤツメの戦闘が始まった。
ぶつかり合い。2匹を中心に川に大きな波を発生させる。
種族 :ギガント・ランプリー
特異性 :身体強化 穴掘り 気配察知 水泳 水中呼吸 粘液 水生成 吸血
戦闘開始前にセリから送られてきた情報を見る。ギガント級だが思ってたより特異性が少ない。
それに名前から変異種とかではなさそうだ。
『何や、一騎打ちをする割には大した事ないなぁ!』
ドォン!と大きな音がして水しぶきが上がる。ギガント・ランプリーの顔が水面に叩きつけられていた。
戦闘場所が近いので水しぶきが俺たちにかかる。
「カイマン。もう少し離れてくれ」
ここだと巻き込まれる恐れがあるので2匹から離れる。
もう少し濡れてるけど、これ以上濡れると風邪を引くかも知れないし・・・。
接近戦はダメだと判断したギガント・ランプリーが離れたので、セリは鎌風を使って攻撃中だ。
しかし、流石はギガント級まで進化しているだけあって、ギガント・ランプリーはセリの鎌風を器用に避けている。それに動きが素早い。
だがあの巨体で、よくあそこまで避けれるよな。
しかし、攻撃する余裕は無いようで一向に攻めて来ない。
『ならこれはどうやぁ!』
鎌風は当たらないと判断したセリは、ギガント・ランプリーを中心に竜巻を作り出し、ギガント・ランプリーを閉じ込める。竜巻は川の水を吸い上げつつ、空高くへと伸びている。
『ひ、引き寄せられますー!』
川の水を吸い上げたことにより、川にいた俺たちも徐々に竜巻へと吸い寄せられる。カイマンが踏ん張っているが吸い寄せる力の方が強い。
『おっとっと、すまんなぁ』
こっちの状況に気付いたセリが慌てて竜巻を消した。
さっきまであった竜巻がきれいさっぱり消える。そして閉じ込めたはずのギガント・ランプリーも居なかった。
『し、下です!』
『分かっとる!!』
“気配察知”を使って居場所を見つけた直後、川の中からギガント・ランプリーが飛び出してきてセリに吸い付いた。そのまま体を巻きつけて離れられないように固定する。
『おい、血ぃ吸われるぞ!』
ギガント・ランペリーの特異性に“吸血”があったのを思い出す。
『大丈夫や!!』
そう言った途端セリとギガント・ランプリーは川の中に沈んだ。まるで急に重くなったみたいに見えたが・・・。
『こ、“鋼質化”ですね』
ああ、“鋼質化”か。あれ重さも増えるんだったな。
重さが増えたのでそのまま沈んだだけのようだ。恐らく血を吸われないために使ったんだろうが、沈むことまであいつは想定していたのだろうか?
カイマンやナギは俺の問いに首を振る。・・・やっぱりそうだよな。
数分してセリが川から出てきた。セリは水中で息ができないので、ゼェーハーゼェーハーと荒く息をしている。限界だったようだ。
姿も元に戻ってるが、時間切れかな?
『はぁはぁ・・あ、あかん。ウチも水の中で息出来たらええのに』
カイマンの上でプルプルと体を震わせ、水滴を飛ばす。
ギガント・ランプリーはまだ上がってこない。
「セリ、アイツは倒したのか?」
『まぁ・・・倒したようなもんやな』
セリの説明によると、“鋼質化”して“吸血”はガードしたものの、ギガント・ランプリーはセリから離れなかった。どうやらそのまま溺死を狙ったようだ。
なので麻痺毒で攻撃し、“顕現”を解いて拘束を逃れたらしい。
麻痺毒は“毒牙”で使える毒の一種でセリは複数の毒が使える。
噛み付かないとダメなので普段使用する機会はほどんどないらしく、俺も今言われるまで忘れていた。
セリが説明していると、ギガント・ランプリーが水面に浮かんできた。麻痺で動けなくなっているらしく。ビクビク痙攣しているだけだ。
今なら簡単に倒せそうだが、セリがどどめを刺そうとしない。
「とどめ刺さないのか?」
『ええやろ。さっさと先いくで!』
疑問が残るけど、一騎打ちしたセリがいいならそうする。
俺たちは何もしていないので、口を挟むつもりも無い。
それに、襲われなければこっちも問題ないので放っておいてもいいだろう。どうせ次ぎ来るかも分からないし。
カイマンに指示を出し、動けないギガント・ランプリーを放って先に進む。
まだ先だが、遠くに森の出口が見えてるのでもうちょっとだ。
まさかまた崖だったら笑うけどさ、空から見たとき、そのような所はなかったし大丈夫だろう。
「セリさん。先ほどはどうして止めを刺さなかったのですか?。また襲われるかもしれないのに」
しばらく進んでから、ナギが聞いてきた。
『多分もう襲われへん。奴らはウチの強さをわかっとるし、戦っても勝てへんのは理解しとる。さっきの一騎打ちも、アイツが部下を逃がすための時間稼ぎに過ぎん』
セリは寝たりないのか大きなあくびをしている。
寝るのは構わないが、森を抜けてからにしてくれよ。森を抜けたら今日の旅はやめるからさ。
「時間稼ぎ?。何でそう思うんだ?」
『アイツ、一向に攻めてこうへんし、そう思っただけや。それにウチの“気配察知”にアイツの部下が引っかからんようなったら、すぐ攻めて来よったしな。まぁ、勝てるんなら勝つつもりではあったようやけどな』
そんなもんか。こっちは普通に戦ってるように見えたが、戦ってる本人からすると違和感だらけだったらしい。
『それに、もうここに来ることもないんやろ?。そやったらもうええやんってなってな。ウチは無駄な殺生はせーへんねや』
戦闘狂が何言ってるんだか・・・。出会った奴を片っ端から倒してたくせに。
そう言ったセリはそのまま俺のリュックに入り込み、寝てしまう。よほど眠たいみたいだ。俺はもう目が冴えてしまったけど・・・。
結局、セリの言うとおり森を抜けるまで、一切襲われることはなかった。カイマンが言うには最初と同じで、周りが逃げている状態らしい。てことは襲われたあの縄張りだけが特殊だったということか。
森を抜けた所で、カイマンには陸に上がってもらい。サイズも小さくなってもらう。この先は見通しの良い草原なので、さすがにカイマンが目立つ。いや森でも目立つけど、目立ち度レベルが全然違う。
遠くに街も見えるので、もしかしたらこの辺りに人も居るかもしれない。さすがにカイマンを連れていると警戒されるので見られないようにしたほうがいいだろう。
もう遅いかもしれないが・・・。
「お疲れ様。今日はもう終わりにするから、家でゆっくりしてくれ」
『は、はい・・』
ちょっとお疲れみたいだし、早く家に帰ろう。
門を潜ると、家ではアンダルシアに乗ったフウが走り回っていた。そういえば探検するとか何とか朝言ってた気がする。
『ぼ、僕も付いていけば良かった・・・』
駆け寄ってくるフウに対し、アンダルシアはぼやいている。
フウにずっと乗り回されていたらしく、かなり疲れているようだ。
「おかえりー!!・・あははは!、おじちゃんすごい落書きされてるー!」
フウは俺を見るなり笑い出した。
そういえば落書きされたままだった。ギガント・ランプリーのせいですっかり忘れてたわ。
描いた張本人のナギが気まずそうに目をそらす。
「ああ、これか。すっかり忘れてた」
「ねぇねぇ!、フウも描いていい?」
「やめてくれ」
ただでさえ、油性で描かれてるんだからさ。これ以上洗う場所を増やさないでくれ。
断ると、フウは頬を膨らませる。
そんなにやりたいなら・・・ほら、コイツならいいから。
フウにペンとセリを渡す。フウは受け取ったと同時に描き始める。
全然躊躇わないけど、勝手に描くのは悪いことだからな?
「でもセリちゃんには《おやつ抜き》って書いてあるよ?」
「それは勝手に落書きした罰だ。悪いことしたんだから罰を与えないとな」
視界の端でナギが自分の体を確認している。確か書いたのは手の甲だったはず・・・あ、気付いた。
書いてある内容を見て悲しそうな顔をするナギ。落書きした以上、ナギもおやつを抜きにした。
「じゃあおじちゃんもおやつ抜きだよね?」
「ん?、何でだ?」
「だって、セリちゃんやお姉ちゃんに落書きしたんでしょ?。だったらおやつ食べたらダメだよね?」
・・・・・ごもっとも。
落書きしたからおやつダメなら、俺もそうだな・・・。
しまった、2人の前で美味しそうにケーキでも食べてやろうかと思ってたのに・・・。
「じゃあ今日のおやつはフウだけだね!」
フウが嬉しそうに言ってくる。だが残念、それは違うぞ。
俺はフウの右手に持っているものを指差す。
「フウも落書きしたろ?。だからフウもおやつ抜きだぞ?」
その言葉に衝撃を受けるフウ。慌てて描くのをやめるがもう遅い。
この日は結局、全員おやつ抜きになった。
まぁ、[森を抜けた記念]お菓子を用意したので抜いた意味はないがな。
ギガント・ランプリー「いつなったら動けるの?」
セリ『あと17時間やで』




