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第50話 川の主現る

どれくらい寝たのだろうか。

起きるとまだ川を下っていた。


「ん?どれくらい寝てたんだ?」


ぼけーっとした頭で周囲を見渡す。

すると近くでセリが転がっている。デカい鼻提灯を作ってるのでただ寝てるらしい、ナギも俺にもたれかかって寝ている。何この状況。


『あ、だ、旦那さん起きましたか?』

「おお・・、すまないが状況を教えてくれ」


どうやらカイマンは起きてるらしい。1人ずっと泳いでいたようだ。


『え、えと・・。姐さんもナギさんも寝てます・・・』


うん、見たら分かった。


『さ、さっきまで落書きをして遊んでいたので、遊び疲れたんだと思います』


ん?落書き?

よく見るとナギの手に俺のペンが握られている。

この2人、もしかしてカイマンに落書きしてたんじゃないだろうな。


それとも・・・


『い、いえ。ら、落書きは旦那さんに・・・』


うん、俺だな。腕や足にびっしり描かれている。

この調子だと顔もやられているだろうか。鏡が無いので見れないけど。


『す、すみません。と、途中で止めたんですが・・・』

「ありがとな、でも気にする必要はないぞ。悪いのはこの二人だからさ」


本当はやる前に止めて欲しかったが、おそらくセリがやりたがったんだろう。実際書いたのはナギのようだけど。


「まったく、何が『任せときぃ』だ。遊んでた上、寝たらダメだろ」


カイマンがいるから大丈夫だったが、もしものときはどうする気だったんだろうか。まぁ寝た俺も悪いのであまり強くは言えないけど。


俺はナギからペンを取ると二人にお返ししておいた。ナギに書くのはちょっとためらったが、やられた以上はやり返さないとな。

といっても手の甲に文字書くだけだけど。セリには背中全体に描いておいた。


ふう、これでよし。

後は起きたときの楽しみに取っておこう。


「カイマン。何か変わった事はないか?」

『い、今の所は・・・。で、ですがそろそろ縄張りに入ると思います・・・』


縄張り?誰の?

魔物って縄張りを持ったりするのか?


『は、はい。こ、この森では主に三匹の魔物の縄張りで構成されています。ひ、1つは姐さんの力が封印されていた川のこっち側。ふ、2つ目が川を挟んだあっち側。み、3つ目がこの川になります。と、特に取り決めなどはありません』


つまり、この川と、川の両岸でそれぞれが縄張りを持っていると。

主とかいそうだな。


「それで?その縄張りに入るとどうなるんだ?」


もうすでに入ってるかもしれないけど。

と、その時、前方で大きな水しぶきが上がる。水しぶきの中に大きな蛇のようなシルエットが見えた。


『え、えと・・・。こ、こうなります』


まぁそんな気がしていた。

縄張りに勝手に入った以上襲ってくるわな。


水しぶきが収まり、そこには大きくなったセリと、同じくらいの大きさがある鰻が姿を見せる。しかし口が丸い、もしかしたらヤツメか?

周囲には、すこし小さいヤツメを複数侍らせている。どれが目かわからないが、なんかこっちを睨みつけるように見えるし、完全に敵対モードだな。


『あ、あれがこの縄張りの主です』

「やっぱり主がいたのか・・・。カイマンは勝てそうか?」

『む、無理です!か、川の中では勝てませんー!』


カイマンは若干パニックになっている。

そうだよな。カイマンは俺たちを乗せてるので潜れないし、そもそも泳ぎでも向こうの勝ちだろう。

それにカイマンの得意攻撃である回転アタックは川の中では使えない。


というか、主がいるなら先に言っといて欲しかったぞ。

それならまだ対処できたんだが。


とりあえず急いでセリとナギを起こす。

さっさとセリに倒してもらおう。このままでは危ない。


「ん・・。あ、ススムさん・・。あれ?わたし寝てましたか・・?」

『まだや、まだ終わらんで・・・』


ナギはすぐに起きてくれたが、セリが起きない。いつものことだが、すぐ起きないなこいつ。

もう昼寝時間は終わってるんだが!

ヤツメたちはすでに戦闘態勢に入っている。カイマンはUターンして距離をとろうとしているが、そうすると川を上ることになるのでなかなか進まない。


「ええ?・・な、何が!?」


ナギはヤツメたちをみて混乱しているようだが、今説明している時間は無い。

このままでは全滅する恐れがある。


「さっさと起きないとお菓子食えなくなるぞ!」


死んだら食べれないしな。


『んぁ!?お菓子?』


やっと起きたか。相変わらずお菓子には反応するな。


「ほら、戦闘だ。出番だーー」

『どら焼きぃー』


セリを持ってヤツメたちのほうに顔を向けようとしたら、いきなりセリが噛み付いてきた。言ってる内容からどうやら寝ぼけているらしい。もうちょっとで頭噛み付かれる所だった。

こいつの首が短くてよかった。


『と、届かへん!。ウチのどら焼きに届かへん!』


ガッチン!ガッチン!と噛み付いてくるセリ。まだ寝ぼけている。

普段は寝ぼけないくせに、こういう時だけやらかすから困る。セリが挑発したと勘違いしたのか、ヤツメたちは一斉に突っ込んできた。


セリはまだ寝ぼけてるけど仕方ない・・。

俺はセリを一旦落とし、尻尾を持つ。


「いい加減・・・起きろぉ!!」


そしてハンマー投げの要領でヤツメたち向けて投げた。


「ええ!!?ススムさん!?」


セリはそのままヤツメたちに飛んで行き、取巻きの1匹に命中する。適当に投げたが当たった。


まぁ当たらないほうがおかしいか・・・。

気付いたらあたり一面にヤツメたちがいる。それ以外にも違う魔物がちらほら見えるが、全部あの主ヤツメの子分だろう。


ヤツメにぶつかったセリは、そのまま川に落ちた。同時に周りのヤツメたちが一斉にセリへと向かう。


「ちょっと、ススムさん!!セリさんに何してるんですか!!」

「アイツなら大丈夫だ」


カイマンに轢かれてもノーダメージだったし、主ヤツメなら分からないが取り巻きがどうにか出来るとは思えない。


『何すんねやぁーー!!』


ほらな。


さっきよりも大きな水しぶきを上げて大きな白い蛇が出てきた。どうやら“顕現”を使ったみたいだ。

水しぶきと同時に子分のヤツメたちが吹き飛ぶ。


セリはヤツメたちを無視してこっち・・いや俺に寄ってきた。


『ススム!ウチを投げ飛ばすとかどうゆうつもりや!』


どうやら投げ飛ばしたのを怒っているらしい。デカいからいつもと迫力が違う。

でもセリなのは分かってるので怖くはない。カイマンは前のがトラウマなのかビクビクしてるけど。


ナギに至ってはポカンとしている。そうか、このセリは初めて見るのか。

怖いのか、ずっと俺の腕を掴んでいる。


『で?どうゆうつもりや!?』


セリが再度問うてくるが、できれば先にあっちを片付けてからにしてくれないか?すぐそこに敵がいるんだが。

と言っても主ヤツメたちは、突然のセリの登場に驚いているのか様子を見ていて攻撃して来ないけど。


俺は無言で主ヤツメたちを指差す。

セリは振り向いてようやく状況を理解したらしい。ヤツメたちを見るなり怒気が収まっていく。


『なんやそういうことかいな。ならさっさと言わんかい』


ならさっさと起きんかい。お前が起きないからこうなったんだぞ。そもそも寝なけりゃここまで慌てなくてもよかったんだが。


セリはニヤリと悪い笑みを浮かべながらヤツメたちを見ている。対してヤツメたちは徐々に後退し始めている。どうやらセリには勝てないと本能で分かっているようだ。それとも最初の一撃で吹き飛んだ味方を見たからかもしれない。


ただし主ヤツメだけは引かず、セリと対峙している。

どうやらやる気のようだ。ただし子分たちは戦わせるつもりはないらしい。ひと鳴きすると周りのヤツメが一斉に川へと潜り姿を消した。


『ほう・・一騎打ちか?、なかなか度胸あるやないか。ええんやで?全員でかかってきても』


セリはそう言うが潜っただけで潜んでる可能性もある。油断しなければいいけど。


『だ、大丈夫です。“気配察知”にはそのような敵は居ません』


セリに忠告しようとしたら、カイマンが伝えてくれるた。

どうやら本当に一騎打ちのようだ。


ナギと主ヤツメはジリジリと距離を詰め・・・


「シェァァアア!!!」


主ヤツメが声を上げ、戦闘が開始された。

ちょっとストーリーを書き直していたら遅くなりました。

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