第44話 実は・・・②
説明回の続きです。ちょっと長くなってしまいました。
セリの過去を聞いたけど、思ってたより危ないやつだったらしい。
世界中で暴れまわっていたとは。
思ったより話が長くなったので、一旦休憩をすることになった。
お菓子を用意して早めのおやつタイムにする。
丸くなったセリが、部屋の隅っこ(転がってそこから動けない)で涙を流しているが、正直食べすぎなので抜きにした。
一応皆に聞いたけど、満場一致なので諦めてほしい。あと、こっちを凝視しないで欲しい。食べづらい。
「ふふふ、この中の餡子が美味しいですね」
あの・・・、それ以上泣くと面倒なのでセリの目の前で菓子テロするのやめて貰えますか?
あとで涙溜まりの掃除が大変なので。
「ふふ、美味しいです。和菓子もいいですが、たまには洋菓子も食べたいですね」
女性は、大福を優雅に食べながら言う。それはケーキなどを出せと言ってるのか?
残念だが、俺は和菓子派でな、洋菓子はよく知らないんだ。ネットがあれば調べられるので用意できそうだが。
「洋菓子?この大福などとは違うのですか?」
「ええ、とってもおいしそうなので一度食べてみたいんですけど・・進さんは用意してくれそうにないですね・・・」
二人してこっちをじっと見るのはやめてほしい。よく分からないから出せないんだよ。
というか、アンタは普通に出せるんじゃないのか?
どら焼きだって出してたし、出そうと思えば出来るだろ。
女性を見るとふふふと笑って答えない。
「ナギさん、悪いけど、洋菓子に関しては詳しくなくてな。イメージできないから出せないんだ」
「そう・・・ですか・・」
すごい残念そうだ。セリほどではないがナギもお菓子大好きだからな。
ナギはセリと違って、甘いもの限定ではなく何でも食べる。
最近は羊羹にはまってるみたいで、作り方を教えてほしいと言われた。
「ネットさえ繋がればいめーじできるんだけどなぁ・・」
ちらっと女性を見る。
この人なら繋いでくれそうだけど・・・。だめなら和菓子が続くだけだし俺は問題ないが、たまには洋菓子もいいかもしれない。
女性はこっちをみてふふふと笑っている。それはいいよと言っているのか?
結局、女性は何も言わなかった。笑みを消し、話を始める。
女性が急に真顔に戻ったので、びくっとした。
「では、そろそろ続きをお話しましょうか」
「・・・ああ、頼む」
「さきほど、セリの力を分散させた所まで話しましたが、今回の一件はこの分散させた力が原因になっています。最初は問題ありませんでしたが、徐々に力が溢れ周囲の魔物を呼び寄せるようになったのです」
「つまりチャロアイトみたいな状態になったってこと?」
「似たようなものですが、チャロアイトのように洗脳はしません。ですが、近寄った魔物を強化してしまう上、性格も凶暴になるらしく、かなりの魔物が凶暴化しました」
「じゃあ、結構被害が出たんじゃないのか?」
「いえ、各封印場所に監視員を配置していたお陰で、被害は最小限に抑えました。対策として、周囲に力が漏れ出ないよう結界を展開したのと、そこに魔物がよらないよう守護者を配置しました」
「結界?、守護者?、両方見当たらなかったけど?」
「結界は目に見えるものではありませんし、物理的な壁もありません。あくまで力が漏れ出ないようにするためだけですので。守護者はそこにいますよ」
そう言ってカイマンを指す。ああ、なるほどね。
言われてみると確かに守護者っぽい。一体だけ圧倒的に強いし、大きいし、存在感がある。セリとの戦闘を見ても守護者を任せられるくらいには強いはずだ。
「だが、カイマンも魔物だろ?あんなに近くにいたら凶暴化するんじゃないか?」
「それはありません。彼は守護者をやるに、あ、お茶ありがとうございます。やるに当たって、私たちから加護を与えてあります。なので影響を受けないのですよ」
ナギから追加のお茶おもらいつつ説明する。
つまり、カイマンはアンタ達が用意した魔物で、セリの力に他の魔物が影響を受けないよう守ってたわけか。
「だからあの時、セリの攻撃から守ったのか?」
「そうです。本当は放っといても良かったのですが、彼が守護者をやる上での契約で、彼を保護する事が含まれてますので」
「じゃあ俺の使い魔にしたのも同じ理由か?」
「それはちょっと違いますね。セリが力を吸収した時点で、カイマンの守護者としての任は解除されています。進さんの使い魔にしたのは、その方が貴方にとっていいと思ったからです。また、用が済んだカイマンを排除しようとする者もいますので、使い魔にしておく方が彼にとっても安全なのですよ」
庭でカイマンが「えっ?」みたいな顔をしている。そりゃなぁ、用済んだら消されるとは思わないだろう。
「守護者として使っといて要らなくなったら排除するとか、アンタらの組織は酷いな」
「そう思われても仕方ありませんが、あくまで一部の者でそういう認識があるだけです。組織としてはそのようなことをするつもりはありません。ただ、彼らの言い分が通ってしまった場合、組織としては排除を行う恐れがありました」
「言い分?」
「一つは、封印を守れなかったこと。もう一つは、危険な魔物を排除すべきということ。前者は封印を解かれてしまった事により罰として排除するということです。後者はそのままですね」
罰か・・・、つまり大義名分が通れば排除するつもりだという事だな。
で、使い魔になったらそれがなくなると。
「そうですね。使い魔にした事で、カイマンの主人は進さんということになります。つまりカイマンが悪事を行った場合の責任は進さんになるという事ですね。ですがーー」
「いやちょっと待って!!それだと俺が排除される流れにならないか!?」
「なりますが、進さんには私が加護を与えております。進さんに何かある場合、私がお守り致します。先程も言いましたが、私の権力は大きいので、私に発言できる人は居ません。だから大丈夫ですよ」
そうですか?全然大丈夫に思えないんですが・・・。
というか加護って何?いつ与えたのさ。
「ふふふ、ずっと前ですよ」
ずっと前?聞きたいけど、この顔は教えてくれる気無さそうなので聞いても無駄だろう。
取り敢えず守ってはくれるみたいだし、今はそれで納得するしかない。
あと、カイマンには極力悪事を起こさない方向でお願いしよう。
「勿論守らせていただきます。進さんに危害を加えよう者なら・・・ふふふ、どうしましょうかねぇ」
なんかブルっと来た。さっきと同じ笑みなのになんか怖い。これが殺気か!
「話が少しズレましたが、私の行動はご理解頂けましたか?まぁ色々言いましたが、結局のところ、私はカイマンを死なせたくないだけなのですよ。彼はずっと守護者を頑張ってくれていたので」
さっき放っておいてもいいとか言ってなかったか?まぁいいけど。
理由は分かったし、別に俺はどっちでも良かったからな。それにカイマンは誰かと違って色々手伝ってくれる。
ただ言葉が分からないのが残念だけど・・・。
「ふふふ、“念話”はカイマンにつけておきました。これは引き受けてくださったお礼です」
「ありがとう。くれと言ってるみたいで悪かったな」
「いえ、お気になさらず。そうです、貴方達にも一つずつ特異性をプレゼント致しましょう」
「え?いいのか?」
「はい。これはご迷惑をお掛けしたお詫びと、お近付きの印みたいなものですので。お好きなものを言って頂いて良いですよ」
いや、急に言われてもなぁ・・・
ナギもぶつぶつ言いながら考えている。焦って決めても後悔するぞ。
「ふふ、ではスマホに特異性の一覧を用意しましょう。今度来たときに差し上げますのでそれまでに決めておいていただければ」
「ああ、そうしてもらえると助かる。というかスマホ知ってるんだな」
スマホからピコンと音がした。見るとアプリが追加されている。
取説が追加されたの時も同じような感じだったな。て事はあの時もアンタの仕業か。
言いたい事はあるけど、まずはありがとうと言うべきだろう。
おかげで特異性が使いやすくなった。
「ふふふ、どういたしまして。ではいつものを・・」
ん?いつもの?
そう思った瞬間抱きつかれた。ああ、またこれか・・・
後ろのナギの視線が背中に突き刺さる。
「前もしてましたけど、これに何の意味が?」
「私が満足します」
それだけ?
どうやら意味はないらしい。俺が離れようとしないからか、後ろのナギから変なオーラを感じる。これも殺気かな?
冷や汗が止まらない俺をよそに女性は数分抱きついたあと名残惜しそうに離れた。
「ふふふ・・、今回はこれ位で我慢しましょう。では、そろそろお暇しますね」
「なぁ?アンタの名前を聞いていいか?いつまでもアンタと呼ぶのは何だから」
困りはしないけど、向こうは名前で呼ぶのにこっちは名前すら知らない。
今回の件で、関わりも深くなるしいい加減教えてくれてもいいだろう。
「別に名乗るほどのものではありませんが・・・。そうですね、ではフレイとお呼びください。偽名ですが」
偽名かい!
本名は教えてくれないようだ。
「本名は嫌いですので。では・・」
そう言ってフレイは消えて行った。
ふぅ・・行ったか。
さて、疲れたしお風呂でも入って一息着こう。せっかくだしカイマンとでも入るかな。
あれ?ワニってお湯大丈夫か?
そんな俺の肩にナギの手が置かれる。
気付いたら服の裾をフウも掴んでいる。
「ススムさん、少しお話があるのですが」
「おじちゃん、ちょっとフウにも説明してほしい事があるの」
ナギたちが揚揚のない声で言ってくる。何やら嫌な予感がする。
脳内選択肢で逃げるコマンドを連打する。
するとスマホが鳴った。
見るとメールアプリが追加されており、一件のメールが届いている。
きっとフレイの仕業だな。
《逃げられません》
その文字を見て、俺はそっとスマホを閉じた。
うん、そんな気はしてた。




