第34話 無限どら焼き
おやつの時間になったからか、セリが復活した。
しかし凄い使い方ねぇ・・・どうせ大したことではない気がする。
どうやら検証中の間に起きて見ていたようで、“分裂”の内容は理解しているようだ。
「セリちゃん。凄い使い方って?」
フウが不思議そうに聞き返す。
ナギは半分目を細めてるな、これは「またどうでも良い事言い出したな」的な事を考えてるに違いない。
セリはフンスッと鼻息を出し、ドヤ顔で答える。
ちょっとイラッときた。
『簡単な話や、どら焼きをなフウの“分裂”で分ける。ほんで片方食べた後にナギが“物質再生”でどら焼きを元に戻すんや。そしたらどうなると思う?』
「そりゃ食ったどら焼きが消えて元に戻るだけだろ?」
セリはさらにフンスーと鼻息を出す。ドヤ顔がいい加減ウザい。
『ススムは分かっとらんなぁ。戻したどら焼きをまた分裂させて食べた後に元に戻す。そうすれば・・・」
「何度でもどら焼きが食べられると?」
『さすがナギ、その通りや。これを繰り返せば永遠にどら焼きが食べられるんや!!!』
「ほんとだ~!セリちゃんすご~い!」
はしゃぐフウ。まあそうだろうけどそんな言うほどか?
どら焼きなんて“旅の宿”があればいくらでも出せるんだけど・・・。
『分かっとらんなぁ!。これの真髄はなぁいくら食べても太らへんことにあんねんで!!」
「ほ、本当ですか!?」
あ、ナギが食い付いた。
確かにいくら食べても太らないのは女性にとっては魅力的かもしれないけど。
『そうやで!、考えてみい、食べたどら焼きはお腹から消えるんやし残らへん。つまり・・・太ることもないってことやぁ!!』
「すご~いセリちゃん!天才だよ!」
「確かにその発想はありませんでした。」
女性陣はセリの案に共感したようだ。ナギまで共感するとは思ってなかった。
太るのが嫌なのはどの世界でも女性の共通の悩みなのだろう。
『旦那ぁ、大丈夫なのか?』
困り顔のアンダルシアが寄ってきた。女性陣のテンションについて行けてないようだ。
安心しろ。俺もだ。
「知らん、まぁ好きにさせても良いんじゃないかな」
その使い方は考えてなかったし、ちょっと面白そうだし試してみても良いかもしれない。
ちょうどここにどら焼き(セリのおやつの予定)もあることだし。
『ふふん!これでススムにおやつ減らされても大丈夫やで!毎日一個でも満足できるわ!』
こっちを見てニヤリと笑うセリ。マジでウザい、イライラする。
お望みどおり今日から一個にしてやろう。
「セリさん、あまりそう言うことは言わない方が・・・」
ナギが止めようとするがもう遅い。
どんな結果になっても知らんぞ。
「じゃあこのどら焼きを使って試してみるか。で、誰が食べるんだ?」
『もちろんウチやぁ!!』
まぁセリのおやつだしいいけど。あまりの迫力に二人が引いてるぞ。
「じゃあまずフウちゃん。“分裂”でどら焼きを分けてみて」
「はーい」
フウがどら焼きに手をかざすと、どら焼きが二つに分裂した。
『では、頂くで』
言った瞬間それをペロッと平らげるセリ、速技みたいに速かった。
一瞬舌が出たと思ったらどら焼きは消えていた。お前はカメレオンか!
本人は驚くみんなの反応を見て鼻を高くしている。
「ええと・・・あとはこの残ったどら焼きに“物質再生”を使えば良いのですね」
ナギがそう言って残ったどら焼きに手をかざす。これで戻ればセリの言う通り、無限に食べても太らないだろう。
しかしどら焼きは元の大きさに戻らなかった。
『『「「「あれ?」」」』』
全員が一つのどら焼きに注目する。
ナギが何度やってもどら焼きは元の大きさに戻らない。
「ダメです。何度やっても戻りません」
「もしかして、分裂した片側が消失すると戻せないのか?」
食べた事で無くなったと認識されたのだろうか。
だとすると、分裂させて片方を使い潰すといったことはできないな。
「そう見たいですね。こちらのどら焼きでは元に戻せますし」
もう一つ渡したどら焼き(これもセリのおやつの予定)で試した所、こちらは難なく元に戻った。
やはり食べたら戻せないようだ。
『そんなぁ・・・ウチの完璧なプランがぁ・・』
セリがガックリと項垂れてる。発想は良かったが、そう旨い話はなかったようだ。
良い検証だったな。
「本来の“物質再生”では無くなってる部分も再生できるのですが、“分裂”した場合はダメみたいです」
もう一度分裂させたどら焼きの一部を食べたナギが呟く。ちょっとでも齧るとダメなようだ。
「となると“分裂”を使った物は“物質再生”で戻せないと思っといたほうがいいな」
何が原因で、消失したと認識されるか分からない。消失していないように見えてもダメな場合があるかもしれないからな
「そうですね。フウも分かった?」
「うん。分け分けした物を食べちゃったら戻せないんだよね。フウ、ご飯は分け分けしないようにするー」
うーん、だいたいあってるし良いかな。
細かいことはナギが教えるだろうし今は良いだろう。
さて、検証も終わったしおやつにしようか。
ちょうどいい時間だし。
『うう・・・、今回はあかんかったけどウチは諦めんへん・・。おやつ食べて練り直すで』
ヨロヨロと家に戻るセリ。
こいつさっき言ったこと忘れてないだろうか?
「なぁセリ、お前1日一個でいいってさっき言ってたよな?」
ギクリッとセリの動きが止まる。
まさか忘れたとは言わせんぞ?
「それに、お昼に置いておいたどら焼きも食ったよなぁ? 俺食べていいって言ったっけ?」
食べるだろうとは思って置いたけど。あえて言わない。
セリから冷や汗がだらだらとで始める。
食べかすがついてたのは見てたので言い逃れは出来ないぞ。
『・・ス、ススムさっきはウチもちょっと調子に乗って言っただけやで?・・・分かるやろ?、やっぱり1日一個はないと思うねん』
すまんな、俺には分からないよ。
だから言ってやった。
「セリ・・・今日のおやつは無し!!!」
『嫌やぁ!! 絶対嫌やー!! 堪忍してーやぁ!!!」
セリが号泣し出した。数日我慢してた分、いつも以上に泣いてる。
堪忍しません。自業自得だ。
「ちなみに分かってると思うけど、検証中に食ってたどら焼きは明日の分のおやつだからな。」
つまり、明日もおやつ抜きということだ。
『い・や・やぁーーーーー!!』
セリは更に泣いて駄々をこねだした。
残念だが一個でいいと言ったのは自分だ。
「自業自得ですね・・・」
『姐さん、自業自得だ』
「セリちゃん、じごーじとくーだって」
尻尾をビタンビタンとしながら泣き続けるセリを見て全員がため息をついた。
そしてセリは数分後動かなくなった。
いつものことなので放っておくが、こりゃ明日も旅できないな。




