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第30話 森の端?いえ、ただの崖でした

30話になりました。ちょっと嬉しい。

おはようございます。本日も旅を続けています。


川沿いを歩き始めて数日たった。出てくる魔物も大したことなくのんびりと進む。


『ちょっとのんびりしすぎちゃうか?』

「私もそう思います・・・」


・・・そうか? 

そんなこと無いぞ・・・。


『そんなことあるやろ! 大体アンタとフウが遊び過ぎなんや!!』

「私もそう思います!」


・・・すみません。

実を言うところセリの言う通りで、数日歩いてるがあまり進んでいない。

通り道にある花などに、俺やフウが反応しその都度止まるのだ。最初は付き合ってくれていたナギも、ちょっとオコらしい。


これ以上怒らせると小太刀を持ち出しかねない。

フウによると、ナギを怒らせるのは良くないらしい。いや誰でもそうだけどさ。

ただナギは一定値を超えると豹変するのだそうだ。ただどう豹変するのかは教えてもらえなかった。

フウは思い出すのも嫌らしい。ちょっと見てみたいが、危険度の方が高そうだ。


やめておこう。

そう決めた俺とフウは握手して頷き合った。


それ以降は極力止まらず、ナギ達の顔色を見ながら進む。

どうしても気になることは許可を取るようにした。正直めんどくさい。


だが1日の移動距離は倍近く増えたので、俺自身もやり過ぎたと反省した。

移動時間の半分も止まってたら、そりゃ怒るわな。


後で二人には謝っておこう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「なぁ、アレ見てくれ」


それから数日経った頃、俺は前方の指差す。

まだ遠いが川の左右にある木々の壁が途切れているのだ。どうやら端まで来たらしい。


移動が長かったので少し嬉しくなってしまう。まあ自分のせいではあるが。


『まだよう見えんけど、森はあそこまでみたいやなぁ』


セリにもそう見えるようだ。

俺たちは、気持ち早歩きになりながらそこに向かう。近づくにつれ、テンションと何やら音が大きくなる。


「この音は何でしょうか?」


ナギが気にしていたが、テンションが上がった俺にはどうでもいい事だった。

最後は走って端までたどり着く。


そして呆然とした。

森の端だったのは確かだがその先は崖だった。まあ半分くらいそんな気がしてたけど。

だって木々が途切れてたのと同時に地面も途切れてたから、段差があるのは分かってた。ただその段差が想定外だったけど。

真下を見てないので崖の高低差はよく分からないが、少し向こうに見える地上が低い。高層ビルの屋上から地上くらいの差があるように見える。


そして先ほどから聞こえていた大きな音は、崖から水が落ちる音だった。

ただ高いところが苦手な俺は、真下を見れないので下がどうなってるかは分からないけど、おそらく水しぶきでよく見えないだろう。


さっきまで高かったテンションが崖から飛び降りてしまったみたいに、一気にやる気がなくなった。


『これは・・・どないしよっか?』

「流石にここを下りるのは無理ですね・・」


高い所が大丈夫っぽい二人は真下を確認して言う。

どうやら絶壁らしく崖を降りることは出来ないらしい。出来ても俺は行かないが。


「回り道するしか無いですが・・・。どこかに降りれるところがあるのでしょうか?」

『ここからやとよう見えんし分からんな。ススムどないする? ・・・って、どないしたんや?』


座り込んでしまった俺を見てセリが戸惑う。

ナギも慌てて寄ってきてくれる。


「すまん、俺高いとこダメなんだ。落ちると思うと、どうもビビってしまう」

「・・・フウも高いとこ嫌い」


隠しても仕方ないので正直に話す。

フウの顔色も悪い、高い所がダメなようだ。

二人並んで座り込り、ため息を吐く。


「なぁフウ、今日はもう帰ろっか?」

「そうだねおじちゃん。フウもう疲れちゃった」


フウと頷き合う。そのまま門を出して帰ろうとするとナギに止められる。


「現実逃避しないでください」

「ナギさん。時には逃げることも重要なんだ」

『そうかも知れんけど。今はその時ちゃうやろ』


そうだけどさ・・・

ほんとダメなんだって。


「セリさん。とりあえず一旦戻りましょうか?」

『せやな、この状態ではあかんわ』


俺の顔色がよほど悪かったのか二人は了承してくれた。



家に帰って一息つく。大分気持ちも落ち着いてきた。

やっぱり高いところはダメだ。柵もないし怖すぎだろ。


ちなみに同じく怖がってたフウは、現在お昼寝中だ。


そんな俺をみてセリがはぁっとため息をつく。


『そんな怖ないやろ? あんな高さ、空飛んでるときに比べたら低いほうやん』

「そりゃ空飛べたら怖くないだろ、落ちないんだから。あと人間は空飛べないからな」


世界中探したら飛べる人間がいるかもしれないけど、俺は飛べない。

とはいえこのままだと先に進めない。なにか考える必要がある。


「やっぱり崖沿いを回って降りれるところを探すべきか?」

『いや、全部は見えてないけど、崖の高さは一定やったから降りれるところは無いで。見えてないところまで行けば分からんけど』

「私もセリさんと同じ考えです。崖沿いを歩いてもおそらく降りることが出来る場所は無いと思います」


ナギも同じ意見か・・・

二人とも崖際で見てたしそうなんだろうな。でも崖沿い歩くのは嫌だったしそれはそれでいいのが。


「ならどこかに洞窟とかあって、降りられたりしないのかな?」

『そんなん探すだけで大変やで。それになかったらどないすんねん?』

「無かったらセリに穴掘ってもらってーー」

『無理や!まじめに考えーや!』


うん、知ってた。言ってみただけだって。


「あの、先ほど空を飛ぶとか言ってましたが・・・、セリさんって空飛べるんですか?」

『飛ぶとはちゃうけど、似たようなことは出来るで』


俺も初耳なんだけど?

でもこいつスカイサーペントだったな。

種族に空がつくし飛べても不思議じゃないし、予想はできるか。


「どうやって飛ぶんだ?」

『“風生成”で体を浮かすんや。後は移動したい方向に風で動けばええねん」


どうやらそれも“風生成”の応用らしい。攻撃、防御、移動まで可能とは汎用性高すぎないか?

便利すぎだろ。


『アンタの“旅の宿”ほど便利やはないで・・・。それで? ナギはそれ聞いてどないすんねや?』

「いえ、飛べるのであれば、飛んで降りれば良いだけの話かと思いまして」

「確かにそうだけど無理じゃないか? できるならセリが真先に提案してると思うんだけど」

「そうですよねー」


そう言い合いつつセリを見る。本人の目は点になってた。


『その手があったわ!』

「「気付いてなかっただけだったの!?」」


セリは舌を少し出して「忘れてた♡」みたいな顔をする。

ちょっとイラッときたが、これで先に進めそうなので我慢しよう。


なんとか出来ると分かったので気にしなかったが、それは俺にあの滝を飛んで降りるという事になる。

俺はまだその事に気づかなかった。






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