第24話 過去視
ウインドドラゴンを討伐した後、周囲に魔物がいないか確認してナギ達を呼んだ。
二人とも心配でずっと門の傍に居たようだ。開けた途端飛び出してきてびっくりした。
出てきた二人の顔がいかにも怒ってます状態だけど・・・
「二人とも大丈夫か? 悪かったな、急だったから説明できなかった」
とりあえず謝っとこう。
ははは・・・、それで万事解決だ。
「そんなわけ無いでしょう!!」
ダメか・・・
その場でナギに怒られる俺とセリ。
『何でウチまで・・』とセリがぼやいていたが、こういうのは連帯責任という奴だ。あきらめてくれ。
腕の傷は怒られてる間にフウが直してくれた。
言いたいことをひとしきり言ってナギが落ち着いた後、俺たちはチャロアイトの側まで来た。近くで見ると高さは3メートルはある。思ったよりも大きい。
それにしても、模様が禍々しいというか何というか・・・
『結構成長しよったな。数日放置してたしこんなもんか』
「ん? その言い方だとチャロアイトは成長するのか?」
『せやで。発生してから時間が経ってるほど大きくなり、強い魔物を使役するようになるんや。けどその分付与する特異性もええもんになるし悪い事ばっかりとちゃうで』
つまり、出来たばかりだと対処しやすいが、特異性は大した事なくて。時間が経ったものは対処が大変だが、特異性も凄いということか。一長一短だなぁ。
「あの・・これに触れれば特異性が得られるのですか?」
ナギがそわそわしながら聞いてくる。
「セリが言うにはそうらしいが・・・。触れれば全員貰えるのか?」
『1度きりやけど壊すまでやったら何人でも大丈夫や』
「大丈夫だそうだ。先に触れてみるか? 」
なんかすごく欲しそうだし。全員貰えるのであれば誰からでもいいからな。
「いいのですか!? で、では失礼して・・・」
そう言ってナギがチャロアイトに触れてみる。しかし何も起きない。
セリを除く三人の頭に「?」が付く。
『もうええで、ナギには“物質再生”がついたみたいや』
「物質再生?」
名前からして壊れた物を直せる感じかな。
『そんな感じやな。物であれば壊れても直せるし、使い勝手は凄くええはずや。大当たりちゃうか?』
確かに使い勝手は良さそうだ。俺の“旅の宿”は、外から持ち運んだ物以外は新品で再生出来る。ナギが手に入れた“物質再生“と合わせればほぼ全ての物が直せるようになる。
俺はセリがしてくれた説明をナギに伝える。本人はまだ実感がないようなので家に帰った後確認したらいいだろう。
「次わたしー!」
そう言ってフウがチャロアイトに触れる。やはり何も起こらない。
付与はされているのだろうけど、これじゃよく分からんな。そもそも何が付与されるかもランダムだし、普通はどうやって確認しているのだろうか? 俺たちはセリが“心眼”で確認してくれるから大丈夫だが。
『フウは・・・“分割”やな。ウチも初めて見るし内容は分からへんわ』
お、セリでも知らないとはレアだな。
フウにはセリの言葉をそのまま伝える。
「え~!?セリちゃんでもよくわかんないの~?」
ちょっと不服そうだ。まぁ本人はすぐに使って遊びたいだけだろうけど。
分割か、何かを分けると言う事だろうか。
これも家に帰ってから確認だな。
「次は俺か・・・ セリ先にどうだ?」
『ええわ、ススム先でええで』
セリは順番を俺に譲ってくれた。
少し怖い気持ちもあるがチャロアイトに近づいて触れてみる。
見た目の想像通り表面は冷たかった。
「これでいいのか?」
俺はセリに確認する。
やっぱり目視じゃ付与されたかは分からないし、付与された感じもしない。
『アンタは・・・“過去視”?』
「かこし? なんだそりゃ』
名前 :イマオ ススム
種族 :人間
状態 :健康
特異性:旅の宿 光生成 過去視
セリが俺の情報を送ってくれた。
なるほど“過去視”ね。
名前から未来視の反対っぽいな。つまり過去が見えるって事か。
見てどうしろと?
『ウチに聞かれてもなぁ・・・』
確かにそうだけど・・・なんだろこの微妙な感じ。使えるのか使えないのかはっきりしない。
こう言う時は取説を見よう。
『今取ったやつが見れるんか?』
見れなかったら後で試すよ。そう思いつつセリと二人でスマホを見る。
“過去視”は追加されてた。
『「更新はや!」』
二人して突っ込んだ。
まだ取得して数分しか経ってないぞ。
過去視
物、風景などの過去の状態を見ることができる。意思により時間を遡ることが可能だが物に依って限度がある。また透過物に付与する事で第三者にも過去を見せることが可能。基本見えるだけであり、過去の状態に触れることは出来ない。
・・・見ても結局微妙だった。
媒介がいるが第三者でも見れるのはいいと思う。ただ、過去が見えるだけでは実用性があまり感じられない。しかし取得してしまった以上、このチャロアイトからはもう付与はされない。もうほっといても害しかないので壊すか・・・
「セリチャロアイトを頼む」
『分かったで。破片が飛ぶし少し離れといてや』
そう言ったので、ナギ達を連れてチャロアイトから離れる。
俺たちが離れたのを確認したセリは、体当たりで壊し始めた。
てっきり鎌風で切るんだと思ってたんだが・・・
そんなセリが壊すのを見つつナギが聞いてきた。
「ススムさんはどんな特異性だったんですか?」
「ああ、なんか過去が見える“過去視”だってさ」
「過去が見える・・・・えっと、忘れ物探すとき便利そうですね」
苦笑いしながら言ってくるナギ。無理しなくてもいいぞ、俺だって使い道が分からん。
「旅をしてたらどっかで使い道があるだろう。それよりもナギさんはいいの貰えたみたいだし良かったな」
「はい、ありがとうございます。私、種族固有しか無くて、自分の特異性が欲しかったんです!」
そう言って嬉しそうに話すナギ。
隣のフウは既に特異性からセリの解体作業に興味が移っている。
フウは元から持ってたし、ナギほど特異性に興味は無いみたいだ。
それから数分してセリが魔石を加えて近寄ってきた。チャロアイトは無事壊せたらしい。
・・・まだ少し残ってるが。
『これがチャロアイトの魔石や。これさえ取ってしもたらあとは勝手に風化するし、ほっといてもええんやで』
そう言う事であればそのままにしておこう。
ウインドドラゴンの魔石と、必要素材(ナギが欲しがった)も回収したし、一旦家に帰ろうか。
みんなにそれを伝え、門を出す。
「・・・・・」
扉を開けようとした時、ナギが村をずっと見ている事に気付いた。
「ナギさん?」
「あ、ええと、すみません。すぐ行きます」
そう言いつつも、目が村から離れない。
思い起こすことがあるのだろう。
「後で墓でも作ろうか・・・、俺たちにできるのはそれくらいだから」
「はい・・・ありがとうございます・・・」
そう言った彼女の目には涙が見えた。




