水に沈んだ、小さな手(下)
それまで抱えてきた痛みから、ある程度予想はしていた。覚悟もしていた。
でも、それらを容易く超えていた。
こんなもの、どう向き合ったらいいというのか。
考えても、答えは出なかった。
直視し続けられなかった。
わたしはずっと、このままなのか。
そんなことが、頭をよぎった。
ふらふらと、来た道を戻る。
そうしてしゃがみ込んだところで、何やら声がした。
歌だった。
その歌はただ、悲しい、と歌っていて。
不思議と、涙が止まらなくなった。
そうだ、悲しい。そう思った。
もうずっと、悲しいと、思うことすらできずにいたのだと。
ひとしきり泣きじゃくった後。
顔を上げる。辺りを見渡す。
姿は見えない。けれども、背中がじんわりあたたかい。
まるでぴったりとくっついて、体温を分け合っているような感触だ。
キリのところに戻って、たくさん話をした。
かつて、何を思っていたのか。
何を、どうしたらよかったか。
これから、どうしたいのか。
ゆっくりと時間をかけて。
きちんと、答えを出すことができた。
「もう、大丈夫だね」
そう言って、キリは切り株から、大きな種に姿を変えてふわりと宙に浮かび。
再び根を張る前にやることがあるからと、どこかへ行ってしまった。
瑠璃も、改めて外へ出た。
よくよく見れば、外にはたくさんのものがあった。
あちこちに書き殴られた言葉、添えられた花々や手紙や贈り物。
帰っておいで、また会いたいよ。
そんな思いが込められたものだった。
それらの後押しを受けて、また、水辺へと向かう。
もう一度。
今度はしっかりと覗き込む。
水の中に、手を伸ばす。
そうして、小さく伸ばされた手を掴み、引き上げた。
骨になった身体を小さく抱きしめながら、思う。
――これは死ではなく、挫折である、と。
長くかかりましたが、これで、シリーズ完結です。
だいぶ粗削りな出来……もう少し掘り下げた話を執筆中です。
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