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三国志  作者: 大田牛二
第二章 群雄割拠

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徐栄

 朝廷が詔によって北軍中候・劉表りゅうひょうを荊州刺史に任命した。


 当時は寇賊が横行しており、道路が塞がっていたため、劉表は単馬で宜城に入った。


 劉表は南郡の名士・蒯良かいりょう蒯越かいえつを招いて共に謀ることにした。


「今は江南の宗賊が甚だ盛んで、それぞれ衆を擁して帰順しない。もし袁術えんじゅつがこれに乗じれば、必ずや禍が至るだろう。そこで私は徴兵したいと思うが、恐らく集めることができない。何か策がないだろうか?」


 彼は南陽にいる袁術がこちらに兵を向けてきた時のことを考えてそう言った。


 蒯良が言った。


「衆が附かないのは仁が不足しているからです。衆が附いても治まらないのは義が不足しているからです。もし仁義の道が行われれば、百姓は水が下に向かうように帰服することでしょう。なぜ徴兵して集まらないことを患いるのでしょうか?」


 蒯越はこう言った。


「袁術は驕慢でしかも無謀です。宗賊の軍は多くが貪暴なので、下の者の患いとなっています。もし人を使って利を示せば、必ずや民衆が集まって帰順します。あなた様がその無道な者だけを誅殺し、彼らを慰撫して用いれば、一州の人が楽存の心(正常な生活を楽しむ心)を持ち、あなた様の威徳を聞けば、必ず幼児を背負って訪れるようになります。兵が集まって衆が帰順すれば、南は江陵に拠り、北は襄陽を守ります。そうすれば荊州八郡が檄を伝えるだけで平定できましょう。その時になったらたとえ公路(袁術の字)が来ても何もできません」


 劉表は、


「素晴らしい」


 と言って蒯越に宗賊の帥を誘わせ、誘いに応じて来た五十五人を全て斬って彼らの衆を吸収した。


 その後、治所を襄陽に遷し、郡県を鎮撫した。こうして荊州の江南が全て平定された。




 











 董卓は洛陽から長安へと遷都し、献帝を長安に移した後、洛陽に留屯し、宮室を焼いた。


 当時、袁紹えんしょうが河内に駐屯し、張邈ちょうぱく劉岱りゅうたい橋瑁きょうぼう袁遺えんいが酸棗に駐屯し、袁術が南陽に駐屯し、孔伷こうちゅうが潁川に駐屯し、韓馥かんぷくが鄴にいたが、董卓の兵が強さを恐れて、洛陽を放火するという董卓の強行を止めないどころか。互いに牽制しあって、袁紹らは敢えて動かなかった。


「董卓を討伐する気があるのか」


 曹操そうそうは呆れるように言った。何のために挙兵したのか。何のためにここに兵を集めているのか。全ては董卓を打倒するためではないか。


「頭が多くては船は進まないか」


 袁紹は盟主であるとはいえ、連合ということもあり、袁紹の盟主としての力はそこまで強く無い。そのことを考えれば、この状況は当然のことかもしれない。


「だが、それでも進まなければ天下に対して示しが付かないではないか」


 曹操は連合の諸将に向かってこう言った。


「義兵を挙げて暴乱を誅し、大衆が既に合したのに、諸君は何を躊躇しているのか。もしも董卓が、山東の兵が起きたと聞いて、王室の重い権威を利用して、二周(東周時代の西周と東周の地)の険に拠り、東に向かって天下に臨めば、無道によってそれを行ったとしても、まだ患いとなるに足りた。しかし今、宮室を焼き払い、天子を脅迫して遷したため、海内が震動して帰すべきところを知らない。今こそ天が董卓を亡ぼす時だと告げいるのだ。一戦するだけで天下が定まるだろう。この好機を失ってはならない」


 しかしながら諸将の反応は薄かった。


「ここには男は一人もいないのか」


 曹操はそう呟くと、自分だけで西に向かい、成皋を占拠することにした。


 張邈はそんな曹操のため衛茲えいじに兵を分けて曹操に従わせた。


「張邈が兵を貸してくれたか。友というものは持つものだ」


 張邈は数少ない曹操の友人である。


「これぐらいの友情で感動しておりますとあの方の友情はどのように感動されますかな?」


 衛茲が兵を率いて駆けつけてきた鮑信ほうしんを示す。


「曹操殿、我らも共に向かうぞ」


「おお、鮑信殿」


 曹操は彼が来てくれたことを喜んだ。


 曹操が勝てば彼に兵を貸した自分だけが諸将の中でも上になれるからこそ、張邈は兵を貸したのである。負ければ負けたでそこまでの痛手は無い。しかし、鮑信は自らの命の危険性があっても駆けつけた。


 張邈は形だけの友情で、鮑信の行動は誠の友情の行為であったと言えるだろう。


 曹操は彼らと共に滎陽汴水に至った時、董卓の将・徐栄じょえいの軍と遭遇した。


「董卓の軍か」


 僅かに緊張が走る。しかしながら董卓と戦うためにここまで来たのだ。それに負けるつもりも無い。曹操は正々堂々と徐栄の軍へ進撃した。


「ふん、曹操とやらめ」


 徐栄は首を鳴らしながら曹操の軍の攻撃に対応した。


「右翼が下がらせろ」


 徐栄の指示を飛ばす。右翼が下がると曹操軍はそこに合わせるように前進し、突破を図る。


「こちらの弱さを見るやすぐさまそこに漬け込むように動くか」


 曹操軍の動きを見て、徐栄は呟く。


「基本に忠実な動きだ」


 左翼にほころびを見せるとそこに騎兵を投入。こちらが騎兵を投入しようとすれば、それを防ぐように兵を動かす。


「基本に忠実によくやる」


 徐栄は再び首を鳴らす。


「だが、それだけだ」


 曹操は相手の動きをしっかりと読み取りながら指示を出していた。


「段々とこちらが押してきているな」


 夏侯惇かこうとんがそう言った時、曹操は何かが可笑しいと思った。


「なんだ、この違和感は……」


 曹操の呟きに呼応するように徐栄が指示を出した。


「前進せよ」


 徐栄の指示を受けた兵が一斉に前進を始め、曹操軍の兵たちによって押し上げられた前線を一気にお仕上げた。それどころか一気に押し返し、曹操の本陣にまで迫る勢いになった。


「なっ」


 曹操は自軍がこれほど圧倒されるとは思っていなかっただけに唖然とした。


鮑韜ほうとう将軍戦死。衛茲将軍戦死」


 次々と報告がなされる中、曹操は夏侯惇を前に送り、崩壊する前線をどうにか保とうとする。


「そうか……相手はこちらの体力切れを狙っていたのか」


 だからこそ相手はせわしなく歩兵や騎兵を動かし、こちらの動きを激しくさせていたのだ。


「曹操とやらの軍としての対応力は若いながら中々だ」


 徐栄は曹操軍を蹂躙しながら呟く。


「だが、その対応力を行えるほど、お前の兵は鍛えられてない。体力がない」


 名将の戦を実現するにはそれ相応の兵が必要である。


「名将の戦をやったが故にお前が負けるのだ」


 曹操は名将であると彼は素直に褒めながらだからこそ負けつつある曹操軍の様子を皮肉る。


「曹操とやらよ。未来の名将と呼ばれるか。ここで死ぬか。どちらかな?」


 徐栄は更に攻勢を強めるよう指示を出した。


 更に勢いを増した敵軍を前についに曹操軍は崩壊した。数多の兵が死傷していった。


 曹操は必死に指示を飛ばしている中、流矢に中り、乗っていた馬も傷を負った。


「孟徳を逃がせ」


 夏侯惇、夏侯淵かこうえんが殿を務めることになり、二人は曹操を曹操の従弟・曹洪そうこうに預けた。逃走中、曹操の馬は傷が元で倒れてしまった。そこで曹洪が自分の馬を曹操に譲ったが、曹操は受け取ろうとしなかった。


「このままでいられるか」


 自分の至らなさを痛感するあまり曹操は意気地になりつつあった。すると曹洪が叱咤した。


「天下に私がいなくとも構いませんが、あなたがいないわけにはいきません。さあ乗るのです」


 この曹洪の言葉に曹操は冷静さを取り戻し、馬に乗った。曹洪は歩いて曹操に従い、二人とも夜の間に遁走した。


「ほう、あそこからここまで粘るとはな」


 夏侯惇と夏侯淵は敗走する兵たちをまとめながら必死の殿戦を行い、奮闘した。それによって徐栄軍の勢いが弱まった。


「酸棗を攻略するのは容易ではないようだ」


 これ以上の戦いを止め、徐栄は兵を率いて還ることにした。


「曹操は死ななかったが、また戦えると嬉しいものだ」


 徐栄は今後、有望な若者との次の戦を期待しながら去っていった。しかしながら彼は二度と曹操と戦うことはなかった。悲しいことである。


 曹操が自らが大将としての初めての戦は経験の差、兵の質の差によって大敗という結果で終わった。



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