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三国志  作者: 大田牛二
第一章 数多の戦旗

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傅燮

 186年


 朝廷が中常侍・趙忠ちょうちゅうを車騎将軍に任命した。


 霊帝れいていが趙忠に黄巾討伐の功を評定させた。


 執金吾・甄挙しんきょが趙忠に言った。


「傅南容(南容は傅燮ふしょうの字)は以前、東軍におり、功があったのに封侯されなかったため、天下が失望しました。今、将軍は自ら重任に当たることになりました。賢才を進めて屈(冤情)を正すことで、衆心に副うべきです」


 趙忠は忌々しそうにしつつもこの進言を受け入れ、弟の城門校尉・趙延ちょうえんを派遣して傅燮に殷勤(厚い情意。親交)を伝えさせた。


 趙延が傅燮に言った。


「南容が少しでも我が常侍に迎合すれば、万戸侯も取るに足りません」


 しかし傅燮は態度を厳粛にして断った。


「功があるのに論じられないのは天命である。傅燮がどうして個人的な恩恵を求めることがあるか」


 趙忠は心中でますます恨みを抱いたが、その名声を憚ったため害を加えることができず、朝廷から出して漢陽太守に任命した。


 187年


 漢軍の討伐を破った韓遂かんすいらに不和が起きていた。


「やれやれ、わかっていたことだが……」


 辺章へんしょう北宮伯玉ほくぎゅうはくぎょく李文侯りぶんこうが自分を殺そうとしたのである。そのことを昔から仲が良い羌賊の人々に知らされた。


「私利私欲で立ち上がる者はこうだから駄目なのだ」


(まあ私もそう変わらないだろうがな)


 それでも自分を慕っている羌の人々のためには動きたいとは思っている。


「彼らがわざわざ教えてくれたことを無駄にはせん」


 韓遂は辺章と北宮伯玉、李文侯らを殺し、王国おうこくを長にして兵十余万を擁して進軍した。隴西を包囲した。


 隴西太守・李相如りしょうじょは朝廷に叛して韓遂と連和した。朝廷への失望もあったが、韓遂ならばという思いもあっただろう。


 涼州刺史・耿鄙こうびが六郡の兵を率いて韓遂を討伐しようとした。


 耿鄙は治中従事・程球ていきゅうを信任していたが、程球は姦邪によって私利を求めていたため、士民に怨まれていた。


 漢陽太守・傅燮は耿鄙に言った。


「あなたが統政して日が浅いため、民はまだ教化を知りません。賊は大軍がもうすぐ至ると聞いて、必ず万人が一心になっています。辺境の兵は多くが勇猛であるため、その鋭鋒に当たるのは困難です。しかも集結したばかりの我が軍は上下がまだ和していないため、万が一、内変があれば、悔いても及びません。今は軍を休めて徳を養い、賞罰を明確にすることに務めた方がいいでしょう。賊が緩和を得たら我が軍が急攻しないと知れば、必ずや我々が怖気づいたと判断し、悪人の群れが権勢を争うことになるため、分裂するのは必至です。その後、已教の民(既に教化した民)を率いて成離の賊(分裂した賊)を討てば、その功は坐して待つことができます」


 耿鄙はこの意見に従わなかった。

 

 四月、耿鄙が行軍して狄道に到った。


 しかし州の別駕(別駕従事)である馬騰ばとうが反して韓遂に呼応し、耿鄙軍を大破した。まず程球を殺して次に耿鄙を殺害した。


「汝が馬騰か」


 体格は勇異というべき男がそこにいた。


「此度は汝のおかげで勝てた。感謝する」


「耿鄙は屑であった。あれに従うなどよりはあなたに従った方が良いと思っただけである」


「うむ、それで良い。私はあなたを従えるつもりは無い。同士として共に行こう」


 馬騰を一目見て、韓遂は下手に自分の下に置かない方が良い男では無いと思い、敢えて自分から引き離し、彼に一勢力を築かせることにした。


 韓遂は勝利の勢いそのまま一気に進軍して漢陽を包囲した。


 城中では兵が少なく食糧も尽きていたが、傅燮は固守し続けた。


 当時、北地の胡騎数千が賊に従って郡を攻撃していた。


 しかし皆、傅燮の恩をかねてから思っていたため、共に城外で韓遂に叩頭し、傅燮を郷里に送り帰すことを求めた。


 傅燮の子・傅幹ふかんはまだ十三歳という若さであったが、傅燮にこう言った。


「陛下が昏乱なので、父上を朝廷に居られないようにしました。今、自守するには兵が足りません。羌・胡の請いを聴いて郷里に還り、有道の名君が現れるのをゆっくり待ってそれを輔佐するべきです」


 言い終わる前に傅燮が憤って嘆息し、こう言った。


「汝は私が必ず死ぬと知っているのか。聖人とは節に達し、次は節を守るものだ。商の紂王は暴虐だったが、伯夷は周粟(周の食物)を食べずに死んだ。私は乱世に遭ったが、浩然の志(剛直な精神)を養うことができず、禄を食してきた。それでも難を避けようと欲するというのか。私がどこに行くというのだ。必ずここで死ぬ。汝には才智がある。生きて努力せよ。主簿・楊会ようかいは私の程嬰である」


 程嬰は春秋時代・晋で孤児になった趙武を援けて養育した人物のことである。それだけの信頼し、彼ならば助けてくれるということである。


 漢陽の人・王国おうこくが元酒泉太守・黄衍こうえんを送って傅燮を説得させた。


「天下は既に漢が有しているのではありません。府君には我々の指導者になる意思がありませんか?」


 傅燮は剣に手を置いて黄衍を叱咤し、こう言った。


「汝は剖符の臣(国から割符を与えられた臣。太守)でありながら、逆に賊のために説くのか」


 傅燮は左右の部下を率いて兵を進め、陣に臨んで戦没した。


 傅幹は馬騰の下に従うことにした。やがて彼は曹操に従うようになり、彼の息子・傅玄ふげんは司馬一族を支える側近となることになる。





 

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