第76話【VSペロリスト26 プライドバトル】
第二チェックポイントへの道はS字の通路を経由していく。
サイドに展開して裏どりが可能な道もあるが、高いレンガの壁に阻まれたロンドン市街のマップにおいて、一人浮いたところを狙われればひとたまりもない。
その点、防衛側のペロリスト達の構成はコンセプトが硬かった。
まず第一に前線はもちなの操る高耐久キャラ、パラディンが圧力を加えて敵の進行を遅らせる。
アツシがボマーの火力で盾割り役を果たし、まぐれの直撃があればDPSとサポートのキルに繋がる。
バジリコのホワイトウィングはヘッドショットが決まれば、タンク以外のキャラは一撃必殺だ。
ソーマのバジュラは遠くの味方を継続ヒールをし、敵に被ダメージ増加のデバフを付与してDPSの火力のサポートも兼ねている。
デジ男のパルカは射程距離内の敵であれば、シールドを貫通してHPを直接削っていく。
瞬間的なヒール能力が低いが、瞬間的な火力であれば全チームトップの歪な構成だ。
OTPとして様々な小技を理解していると、もちなは自負していた。
勝負事になると視野が狭まる悪い癖はあるが、それを理解してサポートしてくれる仲間がいる。
だから自分は前を向いて殴り合いに集中することができ、スクリム期間中から現在まで、最高のパフォーマンスを発揮できていると実感していた。
仮に相手が現シーズンのメタであるキャラを使ってこようが、全てのキャラに対してハンマー一本で勝負してきた経験値がある。実際にスクリムでも何度か勝っている。
レギュレーション上、元プロは専門ロールを使うことは出来ない。
ましてや、自分の最も得意とするキャラのミラーマッチであれば、引けを取ることはないと考えていた。
だがそれは見込み違いだったと理解させられる。
(ウソウソウソ、ウソでしょ! なんでっ……同じキャラを使ってるのに! 私の方が得意なはずなのに!)
リッカーのパラディンは少し様子が違うのだ。
まず警戒しなくてはいけない動きの中で、スキルの『通当て』が存在する。
直撃一二〇ダメージの高火力で、パラディン唯一の遠距離攻撃。タンク以外が直撃をすればHPの半分近くを持っていかれる危険な攻撃だ。
パラディンは攻撃の瞬間は必ず、シールドを解除しなくてはいけない。また、シールドは展開し続けているといずれ割られてしまうため、定期的に直接体力で受けながらシールドの耐久値を回復させるのが基本的な動きだ。
リッカーはそのシールドの開閉が恐ろしく速かった。
攻撃された瞬間だけを狙ったかのように合わせるシールドの展開。こちらのシールド開閉を見透かしているかのような『遠当て』と通常攻撃の殴打が炸裂する。
一歩踏み出してハンマーを振っても、後退のステップでスカされてしまい、あと少しが届かない。
正面ファイトをするキャラ同士のはずなのに、もちなはほぼ一方的に殴られていた。
「わーおヤバイね。やはり韓国のパラディンプレイヤーは三七四〇パーセントが狂ったプレイヤーなのかもしれない」
楽しそうに戦うリッカーの様子を見ながら、ネコプライドは珍しくジョークを挟む。
リッカーは実際にその通りだと思っており、むしろ肯定的に捉えていた。
「そうだねェ! 楽しいよォ! すごくねェ!」
リッカーはFPS以外のゲームもやり込んでおり、特技の一つに格闘ゲームがあった。
パラディンミラーの対決の際は、まるで格闘ゲームのような攻防だと常々思っている。
今の相手と自分の状況を表してみるなら、定期的なガードでアベレージの高い攻撃と防御を目指すプレイヤーと、その攻撃を全てジャストガードとパリィで対応しているようなもの。
格闘ゲームでお馴染みの弾技は、強制的に相手へ選択を行わせる試合を動かせる強力な行動だが、リッカーは全てをなかったことのように受け流す。
傍目から見れば、異質な光景だ。
これはリッカーの持つ反射神経の良さと、相手の選択肢を奪い合うというリソース合戦で優位をキープし続けていることにある。
リキャスト時間が四秒とやや早めだが、『遠当て』の予備動作となるシールドの開閉は目で見て対応できるレベルのものだ。
そのためリッカーは細かくシールドを開閉することで、相手に無防備な姿をあえて演出し、スキルを吐かせるように促した。スクリムでの数度の対戦で得た経験と、アカリから「この人スキル溜まったらすぐ吐くクセがある」という話があったからだ。
現にリキャストの四秒が経過したタイミングでシールドの展開をやめると、もちなは迷わずスキルを吐いている。
安定択ではあるものの、いつ仕掛けるかが分かっていれば、事前に対策することができるのだ。
「くっそ! 攻撃が通らないっ!」
「おーんダメダメェ! リズムが同じだとツマンナイよォ」
ジリジリと前線の後退が始まり、車は徐々にS字の最初の曲がり角へとたどり着く。
裏どりが可能な地形に入り、DPS達の側面攻撃が始まった。




