六作
「急に呼び出してすまぬな、直孝。」
「そのような。家康様のお呼び出しであればどこへでも参ります。」
江戸城に突然呼び出されたと思ったら目の前には神君と呼ばれる家康公の目の前に連れてこられた。
秀忠様との面会は言い方が悪いが慣れてきた。
しかし、この方だけは一向に慣れない。
「そうかしこまるな。実はおぬしに頼みたい事がある。
おぬしもここ最近の大阪の動きは聞いていよう?」
「はっ、秀頼殿の名で兵を募っているとか。」
「うむ、茶々様おっと今は淀殿だったな。
まったく野心の強さで言うならお市様や長政殿よりも信長様に似ておられるのではないかと思ってしまうは。
徳川の治世はこれより先も続けねばならん。
今また豊臣の世に戻れば戦国へと戻ってしまう。
ワシもそう長くはないのでな、心配の種は片付けておきたいと思っておった。
豊臣を………討つ。」
「はっ!」
「そこでお主には井伊家の総大将となり出陣して貰いたい。」
「はっ?」
「まぁ、おぬしの言いたい事もわかる。
直継が直政の跡を継いでおるのだから、井伊家の総大将は直継がすべきではある。
だが、ワシは未だに家臣をまとめきれぬあの者に総大将…いや近江の藩主も勤まらぬと思っておる。
秀忠からおぬしの勤勉さや聡明さは聞き及んでおる。
おぬしを正式に彦根藩主とし、直継は上野国の大名に配置換えを行う。直継に現状で従っている者をそのまま直継の家臣として共に移しかえ、その他の者は直孝の家臣とする。主に甲斐の武田氏の遺臣だった者達からの反感をかい、井伊谷からの家臣に直継は支持されていると聞いておるのでまとめられる家臣だけ連れていってもらう。直孝には色々と面倒をかけるが、近江の重要性と役割を任せられる者は少ないのだ。
他の家の者を置くより井伊家の血筋の者を代わりに置く方が良いと判断した。
よろしく頼むぞ。」
「かしこまりました。」」




