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リナの冒険ノート2  作者: リナ


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55/93

リナ、進路カードを食卓に乗せる

**20xx年4月20日(月曜日) 高校1年生**

**朝**


目が覚めた瞬間、

ふくらはぎのあたりに、うっすら重さが残っているのに気づいた。


(今日は……○−寄りの○かな)


布団の中で、いつものセルフスキャン。


・ふくらはぎ → 「ちゃんと歩けるけど全力ダッシュはやめとけ」くらい

・下腹部 → 先週よりは静かだけど、じんわり存在を主張中

・腰 → ふつう。寝返りサボり度一割

・頭 → 目を開ければ動き出しそう。ただし、考えすぎると空回りしそう


ベッドから起き上がって、

壁のカレンダーを見る。


先週から始めた、○に「+/−」をつける実験の跡が並んでいた。


『火:○+(台本&勉強二時間半)

 水:△(だるさ強め)

 木:○−(ゆるめ行動)

 金:○+(体育あり)→ 土:△寄り□』


(○+の日に張り切りすぎると、

 だいたいその次の日が“地面重力強めデー”になるの、

 目で見るとわかりやすすぎる)


今日の枠に、

シャープペンで『○−』と書き込む。


(○−の日は“二時間まで+なるべく座り作業メイン”)


自分で決めたルールを、もう一回心の中で読み上げてから、

制服に袖を通した。


廊下から、お母さんの声。


「里奈ー、朝ごはん冷めるよー」


「今行くー」


リビングに出ると、

テーブルの上に、いつものトーストと目玉焼き。

その横に、新しいプリントが一枚置かれていた。


『保護者の皆様へ 進路オリエンテーションのご案内』


(あ、これ絶対“食卓に出す系”のやつ)


プリントをひっくり返すと、

小さく「※進路希望カードの内容について、ご家庭でも話し合ってください」と書いてある。


胃のあたりが、

じわっと縮んだ。


(……今日、うちで“仮コンパス会議”開催される流れ?)


トーストをかじりながら、

プリントだけとりあえず鞄に入れて、

家を出た。


---


**午前**


一時間目と二時間目の間の休み時間。


廊下の自販機前で、

先週いっしょに進路希望カードの話をした子が、

紙パックのミルクティーを振りながら寄ってきた。


「ねえねえ、先週さ、

 “今のところの第一候補”って言ってたじゃん」


「言ってたね」


「昨日、お母さんに進路カードのこと聞かれたから、

 そのまんまパクった」


「パクった?」


「“将来の夢決まったの?”って聞かれて、

 “今のところの第一候補は〜かなーって感じ”って。


 そしたらさ、

 “まあ一年だもんね、今のところって言えるなら十分じゃない?”って言われて、

 前よりだいぶマシだった」


「それは……よかった」


(“今のところ”って、

 ちゃんと家でも通じるんだ)


自分の言葉が、

別の家の食卓にまで出張していたことを想像して、

ちょっとだけ頬が熱くなる。


「田中んちは?

 もう進路カード見せた?」


(あ、来た)


手の甲をさりげなく見下ろす。

そこには、先週からの落書きがまだ残っている。


『余白/波/距/棚/声/仮/芯』


(“今のところはこう”って、

 ちゃんと前置きして話すって決めたんだった)


「まだ、“正式な会議”はしてないけど」


「会議て」


「でも、だいたいこんな方向がいいなーって話は、

 今日か明日くらいにする予定」


「どんな方向?」


「理科とか、人の心のしくみとか、

 そういうの両方に関われる方向……かな、今のところ」


“今のところ”を、

わざと少しだけ強めに発音してみる。


「へえ。

 田中、そういうの似合うかも」


「似合う?」


「なんか、

 話聞いてくれるときの顔が、

 保健室の先生っぽいっていうか」


「それ褒めてる?」


「褒めてる褒めてる。

 ちゃんと聞いてくれるけど、

 全部決められちゃう感じじゃないっていうか」


その一言が、

胸の奥にしみ込んでくる。


(“全部決められちゃう感じじゃない”って、

 めちゃくちゃなりたい方向なんだけど)


同時に、

小さい声も顔を出す。


(でも、

 もし私が変な方向に誘導してたら?)


喉の奥が、

一瞬だけきゅっと狭くなった。


その瞬間、

さっきの子がミルクティーを一口飲んで笑う。


「とりあえず、

 今のところの第一候補って言えるだけで、

 去年の私よりだいぶ前進だから。


 あの言い方、しばらく使わせていただきます」


「使用料は、

 コンビニスイーツ一個でいいです」


「安っ」


くだらないやりとりで笑い合っているうちに、

さっきのきゅっとした感じは、

いつの間にか溶けていた。


---


**昼**


昼休み。


今日は教室じゃなくて、

中庭のベンチで弁当を広げることにした。


風が少し冷たくて、

スカートの裾がひらひらと落ち着きなく揺れる。


「なんかさ〜」


隣に座った子が、

唐揚げをつつきながら言う。


「うちのお母さん、

 “女の子なんだから手に職つけなさい”って、

 ずっと同じこと言ってくるんだよね」


「手に職?」


「看護師とか、薬剤師とか。

 “産休とかあっても戻りやすいから”って」


(あー……)


中庭の風より冷たい風が、

一瞬だけ胸の中を通り抜ける。


「男の子には“手に職つけなさい”って言わないの?」


「弟には“稼げる仕事に就け”って言ってる」


「言い分変わってるじゃん」


「でしょ?

 “どっちも手に職じゃない?”って言ったら、

 “まあそうなんだけどさー”って濁されて終わった」


(“女の子なんだから”と“弟は稼げる仕事”か……)


里奈の頭の中の、

進路オリエンテーション用プリントの文言と、

昼の中庭の空気が、

変な角度でくっつく。


(たぶんお母さんは、

 娘が困らないようにって思って言ってるんだろうな)


(でも、

 “困らないための道”って、

 なんでいつも“安定してて、迷惑かけない道”なんだろう)


ふと、

自分の家の食卓の光景が頭に浮かぶ。


お父さんがニュースを見ながら、

「理系の資格持ってるとつぶしが効く」とか言いそうな顔。


お母さんがプリントを読みながら、

「女の子だし、ちゃんとした会社で……」と言いそうな口。


胃のあたりが、

じわっと重くなる。


(今日の晩ごはん、

 進路プリントと進路カードのコピーが

 おかずになる未来しか見えない)


膝の上に置いた手を、

ぎゅっと握る。


そのとき、

もう一人の子がぽつりと言った。


「でもさ、

 “女の子だからちゃんとした仕事につきなさい”って、

 言い方変えれば

 “女の子だからちゃんと稼げるようになりなさい”ってことだよね」


「たしかに」


「だから最近は、

 “うん、ちゃんと稼げるようになれる仕事探すよー”って、

 そこだけ受け取ることにしてる」


「都合のいいとこだけ翻訳する方式」


「そう。

 全部マジメに受け取ってたら、

 体が持たない」


(“都合のいい翻訳”か……)


思わず、

弁当の端っこを見つめながら呟く。


「それ、今夜使わせてもらうかも」


「使用料は、

 コンビニスイーツ二個で」


「さっきの子より高い」


くだらない値段交渉で笑いながら、

胸の中に、

さっきより少しだけ厚めのクッションができた気がした。


(“女の子だからちゃんとした仕事”を、

 “ちゃんと自分で食べていける力を持て”って翻訳する)


(その翻訳なら、

 私も結構同意できる)


---


**午後**


放課後。


昇降口で靴を履き替えていると、

担任がプリント束を手に近づいてきた。


「田中」


「はい」


「これ、今日おうちの人に渡しといて。

 来月の進路オリエンテーションと、

 個人面談の日程」


渡されたプリントの端には、

『保護者同席可』の文字。


(同席可……)


頭の中で、

「お父さんと進路の話」という四文字で

小さな教室が組み立てられていく。


(逃げ道なくなるやつ)


無意識に顔が曇ったのか、

担任が少しだけ笑った。


「そんなに構えなくていいよ。

 一年の段階では“今こんなこと考えてます”って共有する会だから」


「“仮コンパス共有会”ですか」


「そうそう。

 “今のところの矢印”を一回みんなで見とくの、大事だからね」


“今のところ”という単語に、

少しだけ肩の力が抜ける。


(今日、家で話すのも

 “仮コンパス共有会”ってことにしよ)


プリントを鞄にしまいながら、

心の中でそう名前をつけた。


---


**夕方〜夜(食卓)**


夕食は、

ハンバーグとポテトサラダ。


テーブルに座ると同時に、

お母さんが例のプリントを取り出した。


「これ、今日もらったんでしょ?」


「あ、うん」


お父さんも、

テレビの音量を少し下げて

プリントを覗き込む。


「ほう、オリエンテーションと個人面談か」


「“進路希望カードの内容について、

 ご家庭でも話し合ってください”って書いてあるよ」


お母さんの言葉に、

心拍数が一段階上がるのが自分でもわかる。


(来た)


ふくらはぎの重さより、

胸の内側のほうが重くなっていく。


(でも、

 “なんでもいい”って黙るのはやめるって決めたんだった)


テーブルの下で、

自分の太ももをそっとつねる。


「一応、

 学校に出したやつと同じ内容のコピー、

 ノートに貼ってあるんだけど」


「見せてくれる?」


「うん。

 ……でも、

 あくまで“今のところの第一候補”ね」


“今のところ”を、

昼休みに練習したぐらいの声の大きさでつけ足す。


部屋からノートを持ってきて、

進路カードのコピーが貼ってあるページを開いて

テーブルに置いた。


お父さんが、

腕を組んで読み始める。


「“理科や人の心のしくみを学んで、

 人が自分で選べるように支える仕事”か。


 ……ほう」


「ほう、ってなに」


「いや、

 “ちゃんと考えたんだな”っていう“ほう”」


お母さんも身を乗り出す。


「“支える仕事”って、

 具体的にはどんな感じのイメージ?」


(きた、具体例要求)


頭の中に、

病院、学校、カウンセリングルーム、

まだ名前も知らない仕事たちのイメージが

一瞬で渋滞する。


(ここで“この資格!”って言えたら、

 親的にはきっと安心なんだろうけど)


喉が乾いて、

水を一口飲んだ。


「まだ、

 これって決め打ちで言える職業名はないんだけど……」


「うん」


「理科で体のこととか、

 脳のこととか勉強するのも面白いし、


 人がどうやって進路決めたり、

 しんどいときにどう立て直したりするのかっていう、

 心の動きみたいなのも気になってて」


この時点で、

お父さんの眉間にシワが寄るのが見えた。


(あ、

 “それで食っていけるのか問題”が頭をよぎってる顔)


「で、

 それが全部まとまってる仕事っていうより、

 “こういう方向に太くしていきたいな”って感じで、

 今のところは矢印置いてる感じ」


「矢印?」


「“一生これ一本で行きます!”じゃなくて、

 “今の私はだいたいこっち向きです”っていう、

 地図の矢印みたいな」


お母さんが、

少しだけ笑った。


「矢印ね」


「女の子だし、

 ちゃんとした会社で安定してほしいって気持ちはあるけど」


出た、“女の子だし”。


胸のどこかが、

一瞬だけちくっとした。


(翻訳タイム)


昼に中庭で聞いた言葉を思い出す。


(“女の子だしちゃんとした仕事”=

 “ちゃんと稼げるようになりなさい”ってこと)


頭の中で、

言葉を一回通訳してから、

口を開いた。


「うん。


 ちゃんと自分で食べていけるようには、

 なりたいって思ってる」


「そこは一致してるんだね」


「うん。


 だから、

 そのために必要そうな勉強とか、

 高校でできる範囲の挑戦はしたいなって思ってるし。


 ただ、

 今の段階で“この会社、この仕事”って

 決め打ちするのは、

 正直まだ想像つかないから……」


ここで、

言葉が少し詰まった。


(“決めない=真剣に考えてない”って思われたらどうしよう)


胸の奥で、

「どうせ中途半端って思われるよ」という声が

小さく囁く。


そのとき、

ハンバーグを頬張っていた太一が、

もそっと口を開いた。


「でもさー、

 一年でそこまで考えてるだけでも、

 俺からするとめちゃマジメじゃね?」


「太一?」


「だって俺、

 “とりあえずゲーム作る会社とか楽しそう”くらいしか

 考えてないし」


「それはそれで、

 太一らしいけど」


笑いが起きて、

さっきまで張り詰めていた空気が

少しだけゆるむ。


お父さんが、

ハンバーグを一口食べてから言った。


「まあ、

 一年の段階で“仮”って書けるのはいいことかもしれん」


「仮って書いてあったの、見えた?」


「ちらっとな。


 “何も書かない仮”じゃなくて、

 “今のところこうですって矢印を出した上で仮”なら、

 俺はそんなに心配してないよ」


(“何も書かない仮”と

 “矢印付きの仮”)


その言い方が、

妙にツボにはまる。


お母さんも、

少しだけ肩の力を抜いた顔で言った。


「じゃあさ、とりあえず、

 理科と国語(台本も含む)と英語あたりは、

 できるだけサボらないで頑張る方向でどう?」


「“一生この仕事”じゃなくて、

 “そのへんの科目を太くしとく”って意味で?」


「そう。

 そのほうが、

 将来方向変えたくなったときにも動きやすいかなーって」


(それ、たしかにそうかも)


「……うん。

 それなら、私も賛成」


大きな爆発も、

劇的な説得もなかったけど、


“矢印付きの仮”と

“ちゃんと食べていける力”で

なんとか折り合いがついた感じがした。


食後、

シンクの前に立ったところで、

下腹部の重さがふっと主張を強める。


(あ、これ以上立ち仕事すると

 多分ふくらはぎが怒るやつ)


「お母さん、

 今日ちょっと足重いから、

 皿洗い“すすぎ担当”だけでもいい?」


「え、ああ、

 そういう日?」


「うん、たぶん“そろそろ期”」


「じゃあ、

 洗うのは私とさくらでやるから、

 里奈はすすぎと食器拭きお願い」


「了解」


全部やるかゼロか、じゃなくて、

三割くらいに落として手伝う。


それだけのことなのに、

体の奥が少しホッとしたような気がした。


---


**夜(台本タイム)**


勉強を一時間だけ済ませてから、

机の上に『二人の季節』の台本を広げる。


カレンダーには、

今日の枠に『○−』と『〜二時間まで』のメモ。


スマホのタイマーを

四十分×二セットにして、

一回分を台本、

一回分を軽めの復習に使うことにした。


今日は、

主人公の子が家で

進路の話をするシーンを書き足す。


> 「“女の子なんだからちゃんとした仕事に”って、

>  多分“ちゃんと自分で食べていけるようになりなさい”って意味なんだろうな、とは思うんだけど」

>

> 「そこ、翻訳して受け取ってるのね」

>

> 「うん。

>  そのままストレートに飲み込むと、

>  なんか窒息しそうだから」


自分がさっき実際にやった“翻訳”を、

ほぼそのまま台詞にしてみる。


鉛筆が進むたびに、

さっきの食卓の空気が

少しずつ別の形に整理されていく。


タイマーの音が鳴ったところで、

ページの端に小さく書き込む。


『・家での進路会話→

 女の子だから発言の“翻訳”を台詞化』


もう一セット分の四十分は、

英単語帳をゆるくめくって過ごした。


二時間きっちりではなく、

一時間四十分で切り上げる。


(○−の日は、

 これくらいの余白残しでちょうどいい気がする)


ふくらはぎの張りがひどくならないうちに、

お風呂に入って、

部屋の明かりを少しだけ落とす。


ベッドの上で、

日記ノートを開いた。




## 後書き


**日記**


**20xx年4月20日(月曜日) 高校1年生 田中里奈**


今日は、

進路カードの“仮コンパス”を

ついに家の食卓に乗せた日だった。


正直、

朝の時点では胃がキュッとしていたけど、


・昼休みの“都合のいい翻訳”トーク

・担任の“今のところの矢印”発言


のおかげで、

完全に固まる前に

少しだけほぐせた気がする。


---


### 今日できたこと


1. **進路の話を、家で“今のところの矢印”として共有できたこと。**

「まだ決めてないから」と話題ごと避けるのではなく、

「理科」と「人の心のしくみ」に興味があること、

「人が自分で選べるように支える仕事」に惹かれていることを、

ちゃんと口に出せた。

そのうえで「今のところの第一候補」と前置きすることで、

“一生これ一本宣言”にならないようにできたのは、

先週からの“仮コンパス”の考え方を応用できた結果だと思う。


2. **“女の子なんだからちゃんとした仕事に”を、

自分の中で“ちゃんと稼げるようになりなさい”と翻訳して受け取れたこと。**

昔なら、「女の子なんだから」で終わった瞬間に

ただイラッとして黙り込んでいた気がする。

今日は、中庭で友達が言っていた

「都合のいい翻訳」を思い出して、

“親なりの心配”と“自分の価値観”の両方が

ギリギリ共存できる日本語に

自分の中で変換できた。


3. **○−の日用ルール(合計二時間まで/座り作業メイン)を

守ったうえで、台本と勉強を一応一通りこなせたこと。**

タイマーを四十分×二セットに分けて、

一回を台本、もう一回を軽めの勉強に使った。

「まだやれる気がする」と思ったけど、

カレンダーの○+/○−と翌日のコンディションのメモを見返して、

あえて一時間四十分くらいで切り上げた。

ふくらはぎの重さが悪化しなかったので、

これはちゃんと“体の波を味方にした”一歩だと思う。


---


### 今日できなかったこと


1. **進路の話のとき、

お母さんの“女の子だし”に対して、

その場で自分の違和感を言葉にするところまではいけなかったこと。**

頭の中では

「弟には“稼げる仕事”、私には“ちゃんとした仕事”って言い方違うのずるくない?」

と思っていたけど、

実際には飲み込んでしまった。


2. **“具体的にどんな仕事?”と聞かれたとき、

うまく説明しようとして話が少しふわっとしてしまったこと。**

病院、学校、心理系、いろんなイメージが一気に浮かんで、

結局どれも決めきれず、

「なんかこういう方向で……」という曖昧な言い方に逃げた。

自分でも、「聞いてる側はわかりにくいだろうな」と思いながら話していた。


3. **体調が○−寄りだとわかっていたのに、

授業中の姿勢や座り方をあまり工夫できなかったこと。**

途中からふくらはぎと腰が重くなってきて、

「膝の角度を変える」「足を組みっぱなしにしない」など

事前に考えていた細かい対策をほぼ忘れていた。

気づいたときには、すでに足がパンパンに近い状態になっていて、

もっと早く体からのサインに気づくべきだったと感じた。


---


### 障害ハードルとその分析


1. **“女の子だし”に違和感を言葉にできなかった理由。**

親の言葉に対して真正面から

「それはおかしい」と言うことに、

まだかなりのハードルを感じている。

特に、

「親は心配して言っている」というのがわかる場面だと、

それを否定する=親の気持ちを全部否定する、

みたいに感じてしまう。

だから、違和感があっても、

「ここで波風立てるくらいなら自分の中で翻訳して飲み込もう」と

反射的に選んでしまう。


2. **具体的な職業像をうまく話せなかった理由。**

自分の中のイメージがまだ

“こんな雰囲気の仕事”レベルにとどまっていて、

ちゃんと名前を持っていない。

なのに、「ちゃんとした答えを出さなきゃ」と思うと、

頭の中で候補を一気に並べてしまって

逆に整理がつかなくなる。

“途中まで書いてある文にその日の言葉を足す”書き方は

ノートでは少しずつできてきたけど、

口頭でやる練習はまだ足りていない。


3. **体調のサインを授業中に拾えなかった理由。**

授業中は

「ノート取らなきゃ」「前見なきゃ」で

頭がそっちに持っていかれてしまう。

特に今日は、

進路のことが頭の片隅でずっとぐるぐるしていて、

そっちに気力を持っていかれていた。

体の重さを感じた瞬間に、

「今○−寄りのサイン出てるな」と思えればよかったのに、

「あと一時間だから我慢」と

まとめて耐えようとしてしまった。


---


### 明日以降の具体的な対策(小さな実験)


#### 1. “翻訳したあとに一行だけ本音を足す”実験


* 親からの言葉を自分なりに翻訳したうえで、

それに一行だけ自分の本音を足して返してみる。


例)

「女の子だしちゃんとした仕事に」

→ 「ちゃんと自分で食べていけるようになりなさい、ってことだよね」

→ 「そのうえで、私は“人の心のこと”もちゃんと仕事に混ぜたいなって思ってる」


* 一気に長い反論をするのではなく、

翻訳した一行+自分の一行だけを

まずは目標にする。


* 次の進路オリエンテーションの前後で、

どこか一回だけでもこの形を試す。


#### 2. 口頭版“途中まで文”実験


* お風呂上がりとか、

一人の時間に、鏡の前でこっそり練習する。


「将来の仕事について、

  今のところ私は____と思ってる」

「進路の話をするとき、

  私が本当は大事にしたいのは____だ」


* ノートに書いたときみたいに、

空欄を埋める感じで声に出してみる。


* 実際の会話で突然やるのはハードルが高いので、

まずは自分一人用の“声に出す練習”として

三日くらい試す。


#### 3. 授業中の“足チェック”タイマー実験


* スマホではなく、

腕時計の「毎時アラーム」機能を使って、

一時間に一回だけ小さく振動させる(設定できるなら)。

それが鳴ったときに、

「今、足と腰どんな感じ?」を

一瞬だけ確認する。


* 授業中はメモまで取らなくていいので、

帰宅後にざっくり

「今日の一限目:平気/二限目:ちょい重/三限目:重い」くらいで記録。


* 一週間続けてみて、

「いつもこの教科の時間帯に重くなりやすい」みたいなパターンが見えたら、

その授業のときだけ座り方や膝の角度を

事前に調整する工夫を考える。


---


### 繰り返しの意識


今日は、

「進路の話」という、

なんとなく“正解を出さなきゃいけない感じのするテーマ”を、


・“今のところの矢印”として共有する

・“都合のいい翻訳”を挟んで受け取る


という形に少しだけ変えられた。


それでも、


・親の言葉に違和感があっても黙ってしまう癖

・ちゃんとした名前のついてない夢を

説明するのが怖い気持ち


は、まだしっかり居座っている。


多分、

これからしばらくは、


「一歩踏み出してみる」

→「やっぱり怖くて引っ込める」

→「でも前よりちょっと長く踏み出していられた」


みたいな、

ジグザグを何回もやるんだろう。


でも、

一年前の自分はそもそも

“仮”って言葉を自分の進路にくっつけるなんて

考えもしなかったし、


○/△/□も、

“今日はなんかしんどい”を

ただ気合いで乗り切ろうとしていただけだった。


今は、


・体の波を印とメモで見える化して、

 ○+/○−を分けられるようになってきたこと


・“できたところを数える”おかげで、

 「二時間やれなかった」じゃなくて

 「○−の日に二時間以内で止まれた」を

 ちゃんと成功として扱えるようになってきたこと


・進路の話も、

 「何も考えてません」で終わらせずに、

 “今のところ”の矢印だけでも食卓に置けるようになったこと


この三つだけでも、

十分「前よりは自分の味方をしている」証拠だと思う。


だから今日は、


「まだ不安はいっぱいあるし、

 親の言葉に完全に言い返せたわけでもないけど、

 “矢印付きの仮”を家族と共有できたぶん、

 昨日よりちょっとだけ諦めるのが遅くなった」


ってことにしておく。


○+でも△でもない、

○−寄りの○。


それでも、

ゼロよりはずっとマシな場所。


このくらいの“仮合格”を

自分に出せるようになってきたこと自体が、

たぶん一番の進歩かもしれない。


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