敗走の騎馬隊
この作品はフィクションです。
特に歴史上の人物、時代背景については、演出の都合上、改編を加えたり、筆者の想像で補っている部分が多々あるため、史実とは異なる描写がある事をご了承ください。
登場人物
鄧聞 呉蘭の戦死の後、馬岱の下に配属された。馬岱軍第六隊の隊長。
馬岱 蜀漢の将。官位は平北将軍。爵位は陳倉侯。
符雙 氐族の内の族長の一人。
強端 氐族の内の族長の一人。かつて蜀の将軍呉蘭を討ち取っている。
衛兵の張索という男に無理を言って馬岱のいる陣幕に通してもらった。
目当ては馬岱を訪ねてきたという氐族の族長の二人だった。
どうやって、ここまで来れたのかは分からない。
どうして、ここを探り当てられたのかも分からない。
ただ…。
そう、目の前にいるこの二人は元々は敵だ。
色々あって現在は味方だが、過去の事もあって鄧聞にとっては因縁の相手と言っていい。
そうでなかったとしても無警戒に接するのは危険な相手…のはずだった。
だが当の馬岱は、まるで旧知の間柄の者に接するかのように酒を酌み交しながら談笑している。
話を聞いていると実際に旧知らしかった。
確かに現状では、この二人は蜀の傘下だ。
しかし北伐軍の撤退の混乱の際に散関が魏軍によって陥されてしまっている以上、そして今回、馬岱が、その奪還に失敗してしまった以上、この二勢力…と言うより氐族のほぼ全てが、いつまた、魏と手を結ぶか分からないのだ。
実際に小規模な離反は北伐の総司令官だった丞相諸葛亮孔明の死の直後から数例、報告されている。
丞相の死を好機と見たのか魏帝曹叡により蜀討伐の大号令が発せられたのも痛かった。
その本隊を率いる司馬懿や郭淮は陳倉に留まって周辺への圧力を強めている。
攻め落とした散関には守備隊1万の他に増援の野戦軍として牛金が軽騎1万を率いて南下してきた。
そして、北上して散関を狙う馬岱軍1万と交戦し、1千余りの被害を出して馬岱は撤退した。
これをこのまま放置すれば大規模な反乱に繋がりかねない。
今は小川のせせらぎ程度でも、いつ奔流と化すか分からない危うい局面なのだ。
散関が陥とされるということは、少なくとも馬岱にとってはそういう事なのだと鄧聞は解釈していた。
撤退中の緊張感に覆われた軍勢の中で、この陣幕の中だけが、どこか呑気な雰囲気に包まれていた。
苦々しくもあり微笑ましくもあるような複雑な想いを抱きながら鄧聞は侍立してその様子を見ていた。
特に人払いもせずに馬岱は普通に話をしている。
それも鄧聞の苛立ちに拍車をかけていたのだが同時に邪魔をしてはいけないとも思い、ただただ侍立して聞いているしかなかった。
二人のうち、どちらかと言えば強端の方が寡黙だった。
馬岱と向き合いながら、あまり口を挟まずしっかりと話を聞いているという印象だった。
その強端の口から、かつての上司である呉蘭の話が出た。
彼を討ち取った当の本人が何を言い出すのかと一瞬、怒気に全身を支配されそうになりながら、それでも鄧聞は侍立の姿勢を崩さなかった。
別に今さら仇討ちなど考えてもいない。
ただ一言ぐらいは言わせてもらってもバチは当たらないだろう。
無礼を咎められて処罰されるならそれはそれでいい。
そのぐらいのつもりだった…のだが…。
予想以上に恨みを抱いている自分に鄧聞は自身で驚いていた。
馬岱は、あいつは良いやつだったと言い、強端は最期まで武士だったと言った。
どちらにしても、その死を惜しむかのような口ぶりに鄧聞はいささか戸惑った。
「で、お前はいつまで衛兵の真似事をしているつもりだ?」
なおも雑談は続いていたが、会話の区切りがついたところで突然、馬岱にそう声をかけられた。
「何か用があったんじゃないのか?」
「はっ、いえ、その…特に用事はありません。」
しどろもどろになりながら、そう答えた鄧聞に馬岱は一瞬、怪訝な表情を見せたが、すぐに納得のいった表情に変わり、ふっ、と笑みを浮かべた。
「強端殿は懐の深い御仁だ。何でも言ってみろ。」
来客中にとった鄧聞の一連の行動は本来なら首を刎ねられてもおかしくない行動だったのだが、馬岱という男はこうした配下の無礼に対して異常な程に無頓着だった。
更に言えば、その分と言うべきか、馬岱自身も上役に対して遠慮がない。
皇帝劉禅の次に地位の高い諸葛亮にさえ、端で聞いている者全員が凍りつきそうな事を平然と言ってのける場面に幾度となく遭遇してきた。
それが分かっていたのもあるが、もし首を刎ねられるとしても譲れない何かに突き動かされていた鄧聞にとっては些細な事だった。
命を失ってもいい。
だがこれだけは譲れない。
そう思いながら出鼻を挫かれ、ふと冷静になった時に、譲れないこれというのは一体何だったのか自分自身でも分からなくなっていた。
何でも…と言われたが何をどう切り出したものかも分からず、取り敢えず以前は呉蘭の配下であったというような事を口にしたが、しっかりと伝わったかは自信がない。
強端が「戦陣の習いであった。許せ…と言っても許し難いだろうが。」と返したのは辛うじて聞き取れたが鄧聞には何故か遠い昔の出来事だったように思えてきた。
気は晴れたか?と馬岱に聞かれたが、それすら遠く感じた。
そうだ。
自分とて、これまでに敵を何人も斬ってきて、ここで、こうしている。
自分に対して同様の感情を抱いている相手が、この世のどこかに間違いなく居るのだ。
軍歴が浅い頃以来、いつしか気にしなくなった青臭い事を何故か今頃になって気にしていると、いよいよ強端が本題を切り出した。
さすがの馬岱も人払いをしようとしたが、強端らも気にしない人柄なのか、それを止めた。
呉蘭の話になると静かにしていた符雙が口を開いた。
「おおよそ千人か。」
「そうだな。千人だ。」
そう答える馬岱の目が遠くを見つめた。
符雙も幾度か頷きながら続けた。
「散っていった者達を軽んじるつもりはないが、総数から言えばそれほど痛い被害でもなさそうだ。何故、軍勢を退かせたのだ?」
「思わぬ邪魔が入った。勅命…と言われてしまっては、な。」
「そういう事だったか。貴殿らしくない…とは思っていたが。」
「これでも結構、食い下がったのだがな。まあ、それ以上は言うまい。俺の用兵に問題があったのも事実だ。」
散関は漢中の北西にあって陳倉方面に抜けるには必ず通らなければならない関所だった。
かなりの難路ではあるが必ずしも進軍が不可能というわけではなく散関を失った蜀軍は今後、魏軍に漢中攻略という逆襲の機会を与えた事になる。
漢中が陥とされれば次は巴郡や広漢郡、蜀郡などの益州中心部…つまり蜀の本土だ。
これらの郡が陥とされれば次はいよいよ成都の番なのだが、これが分からないのが当の成都に居る連中だ。
今すぐどうこうという事はない、と高を括っているようにも思える。
実際、今すぐどうこうという事はないだろう。
だが、そのままにしておけば、いずれそれは必ず起きる。
と、言うより敵はそれを起こすために散関を奪ったのだから、高を括っている場合でも、時期尚早と事態から目を背けている場合でもない。
現に敵は司馬懿や郭淮という役者を揃えて軍勢を差し向けてきている。
散関陥落直後から早一年、そのように訴え続ける馬岱の言を成都は悉く黙殺してきた。
車騎将軍・漢中都督の呉懿、安漢将軍・漢中太守の王平と打ち合わせた綿密な散関奪取の計画書を添えてもなお、成都は黙殺を続けた。
そうしている間にも魏軍は攻勢を強めてきている。
それについては、ただ防げと言うだけで何も具体的な事を指示するわけでも支援策を実行するわけでもない。
ただ防ぐだけなら言われずとも既にやっている。
こちらが欲しいのは奪還と侵攻の承認だ。
呉懿が都督の権限で軍を動かす事も不可能ではないが、立場が悪くなるとしてそれを止めたのは他ならぬ馬岱だったし王平もそれに同調した。
返答を待つという名目で本来の任地とは違う漢中に留まり続けた馬岱は常に冷静であったが、内心では苛立ちが頂点に達しているであろう事は鄧聞にも分かっていた。
だから敗戦そのものを責める気にはなれない。
勝敗は兵家の常だ。
ただ、その後、何事も無かったかのように敵とも味方ともつかない者達と酒を酌み交わしながら談笑している様はどうなのか、とは思っている。
陣中では陣幕の設営や、各部隊の配置の割り振り、遅れた者の捜索や収容、負傷者の治療など、幾らか落ち着いてはきたものの、まだまだ完了していない事項が沢山ある。
鄧聞自身もこんなことをしている場合ではないのだが感情に任せて、ここまで来てしまった。
「どうしたものか…」
鄧聞は思わず口に出して呟いてしまった。
「簡単なことだ。」
その呟きを耳にしたのか馬岱は強端らの方を向いたまま言葉を返してきた。
続いて、とんでもない事を口にした。
「二人とも魏に降った方がいい。」
「は、はあ!?」
鄧聞は驚きを隠せなかった。
さすがの強端らも何か反論するのではないかと思ったが二人は黙り込んでしまった。
鄧聞にしてみれば全く別の事で、ああいう風に呟いてしまっただけだ。
だから、まさかこんな方向に話が進むとは思いもしなかった。
しかも氐族の今後の身の振り方の事など自分には全く関係が無い。
しかし、こうして自分の何気ない一言が氐族の今後を変えようとしている。
「失礼いたしました。」
正直、頭を抱えたい気分だったが鄧聞は何とか場を取り繕おうとした。
「別にお前が謝ることはない。俺が強端殿や符雙殿の立場なら、迷わずそうするというだけのことだ。」
強端が口を開きかけたが,,それを制するように馬岱は続けた。
「無論、これまでの友誼には感謝しているさ。馬孟起という狂人を信じて、今まで本当に良くしてくださった。」
「確かに錦馬超の看板は我等にとっては大きなものだ。諸葛公が、その名を出したからこそ我等が蜀の傘下に入ったというのも事実だ。だが、それ以上に、我等は貴殿だからこそ今まで付き合わせてもらったんだ。」
符雙の言葉に強端も頷く。
「かたじけない。その言葉だけで充分だ。」
「だったら、たった一度の敗戦でそう決断するのは早計に過ぎないか?」
「いや。むしろ、ゆっくりと構えている場合ではあるまい。散関が魏の物になった以上、そちらも、いつ侵攻を受けるか分からない状態だ。」
「確かにその通りだ。だが漢中には、まだまだ兵力があるはずだ。言い方としてどうかと思うが貴殿が敗けたことで、かえってそれらを動員しやすくなったのではないか?」
要するに、今回の敗戦で危機感を持った成都が大軍の動員を認めるのではないかと符雙は言いたいようだ。
だが…。
「いや。そうはならない。」
馬岱は静かに、しかし明確に、それを否定した。
それから、お前も何かを持ってきて座れ、と促されたので、鄧聞は初めて侍立の姿勢を解いてそれに従った。
言われるがままに余りの腰掛を持ってきて馬岱の隣に腰を降ろしたが、自分が加わって良さそうな場ではないことは確かだ。
「まず話しておかなければならないことがある。俺が出陣した直後に、病に臥せっていた呉懿の爺さんが逝っちまった。」
「なんと…。」
「そうだ。死んだんだ。つまり都督不在という状態だ。当然だが、代行も後任も、まだ決まっていない。残された兵達は今後、一時的に所属を解かれる。それらをそっくりそのまま子均が引き継げるのなら話は簡単だ。符雙殿の言い分も現実味を帯びてくる。だが実際には各方面にばらばらに転属させられるだろうな。可能性としてはそっちの方が遥かに高い。」
「漢中の近辺がこれだけ騒がしくても…か?」
「ああ。外敵への備えよりも一人の将に兵権が集中する事の方を気にしている。だったら何故、爺さんに都督の印綬を与えたんだって話だが、とにかく他の誰かが力を持ち過ぎないように荊州出の奴らも益州出の連中も足の引っ張り合いに終始している。」
そこまで言うと馬岱は空の盃を酒で満たした。
「残念ながら、これが今の成都だ。子均は一応は郡太守だが、だからといって、さすがに都督直属の軍に対する命令権はない。言えても、せいぜい別命あるまで待機…が関の山だ。」
「王平将軍が駄目なら貴殿が…。」
「それこそ有り得ん話だ。」
そう言って馬岱は深く溜息をついた。
「今回の事で俺は官位を剝奪されるだろう。悪くすれば死罪だ。まあ、この際、俺の事はどうでもいいとしても、爺さんが死んじまった以上…。」
「どうでも良くはありませぬ!」
鄧聞は思わず大声を出してしまった。
「おいおい、どうした?衛兵の次は小姑の真似事か?」
「茶化さないでください!もし、これで本当にそのような裁定が下されたら、千名はそれこそ只の犬死にではありませんか!」
「その通りだ。だから俺は俺で最大限の悪あがきをする。」
ふっ、と笑みを浮かべながらも馬岱は決意の固い表情を崩さずに言った。
そう言われてしまっては何も言えない。
馬岱が何の考えも無しに言っている訳でもない事も分かったので鄧聞もそれ以上は言わないことにした。
「話を戻そうか。ええと…。何だっけ?」
いささか重たい内容の話をしていたところにこれだったので当の馬岱以外は全員、苦笑した。
「ああ、そうだった。都督である爺さんが死んだ上に成都がそんな調子である以上、現状でお二方にとって最も安全なのは魏に降る事だ。ただでさえ隴西とこちら側が分断されている上に散関まで失っている。もはや、北伐どころか、いずれ魏の南征に屈する時を待つばかりになってしまった。現状を維持するのが精一杯だろう。」
「蔣 琬殿が考えておられるという構想はどうなるのだ?」
「ああ、長江を下って荊州辺りから上陸、北上するってアレか?それも夢のまた夢になってしまったな。それをやろうと思ったら、それこそ散関の奪回と維持は絶対条件だったろう。その上でなければ迂闊に川下りもできまい。」
他人事のようにそう言って馬岱は盃をぐいっとあおった。
別に馬岱が嫌っているわけではない事は知っていたが、益州|閥をいまいち抑えきれていない蔣 琬の事を諸葛亮孔明の後継者としては不足に感じているのかも知れない。
それより何故、そんな計画の事まで符雙らが知っているのか疑問だったが聞ける雰囲気ではなかった。
そして馬岱は盃をゆっくりと置き、言葉を続けた。
「国として今できることは国境を守ること以外にない。しかし国力が幾らか回復したら今度は伯約あたりが騒ぎ出すだろうな。」
「姜維将軍か。師たる諸葛公を失って、なお血気盛んだと聞くが…」
「ああ、丞相の意志を継ぐのは自分以外にない、と思い込んじまってる。あんな調子でいたら魏延の二の舞いになっちまうぜ。困ったもんだ。」
「困った…って、その首を刎ねた当の本人が何を言う。」
「ははは。符雙殿、調子が出てきたな。」
そう言って馬岱は符雙の盃に酒を足した。
二人とも笑い話にしているが馬岱が魏延をその手にかけた事を心のどこかでは後悔しているのを鄧聞は知っていた。
正確には勝手にそう解釈しているだけだが、あの時、承知と返答して本陣を退出する間際、馬岱が楊儀に向けて放った一言が鄧聞の耳にこびりついて離れなかった。
「お前、俺に何をさせようとしているのか分かってて言ってんだよな?」
笑顔で放った一言だったが、その目は冷ややかに、全員を射抜いていた。
居並ぶ歴戦の勇将達でさえ声も出せず、それを命じた当の楊儀は明らかに狼狽していたが馬岱は冷笑だけを残してその場を去った。
蜀軍中で最強は魏延だったが最恐は馬岱だった。
逃げ回る魏延を、俺とあんたの仲だろ、とか、俺がとりなしてやるから、などと、言葉巧みに落ち着かせ彼らの投降を成功させた…かと思いきや、背後からたった一太刀で、その首を切り飛ばした。
本当に一瞬の出来事だった。
抜きざまに斬る。
その言葉を忠実に実演したかのような、見事という表現すら場違いに感じられるほどの太刀筋だった。
その瞬間に何が起きたのかを理解できた者は自分を含め恐らく誰も居なかっただろう。
一瞬の静寂があったが、それを合図に一斉に斬りかかった馬岱麾下の将兵達は、残された一族郎党を、あっという間に首だけにしてしまった。
鄧聞自身も愛用の槍で三人ほど突き殺したが、後味の悪さだけが残った。
馬岱も、もしかしたら同じ想いなのではないかと思ったのは首を失った魏延のそばに腰を下ろしたまま、身動ぎもせずに無表情で、地面に置いたその首級を眺めていたからだ。
お疲れさん、と首に向かって呟いたあとは一言も発さず、馬岱は暫くそうしていた。
嫌味でもなんでも無く、ただ自然と口にした…そんな感じだった。
やがて、それほど反りの深くない、いつもの曲刀を杖にして馬岱はゆっくりと立ち上がり、帰陣する、とだけ言った。
勝鬨も何も無く、ただ静かに、その場を後にした。
何も読み取る事のできないその横顔に、将軍と声をかけたが馬岱は表情も変えずに、ただ一言
「戦場じゃあ、命が安すぎる…」
それだけを返してきた。
街亭以来、よく聞かされるようになったその口癖を鄧聞は何故か好きになれなかった。
…そんなことを思い出している傍で話は進んでいた。
「その姜維伯約の事もあっての投降勧告だ。」
「何故、姜維将軍なのだ?」
「はっきり言ってしまえば、あいつは兵の命を毛ほどにも感じちゃいない。ま、今回、千人も死なせた俺が言えた義理じゃないがな。」
「随分と思い切ったことを言うな。つまり付き合っていたら命が幾つあっても足りん。そういう事か?」
「そうだ。蔣琬や費禕が健在の内はまだ抑えられるだろうが…。」
「正直、我らは姜維という将軍の事を、まだ良くは知らない。馬岱殿はどうしてそう思うのだ?」
問われて馬岱は一旦、盃を置いた。
「あいつの目つきは…。」
置いた盃を見つめながら馬岱は重い口調でこう続けた。
「従兄と同じだ。」
幕内の空気が一瞬、重苦しい雰囲気で満たされた。
先ほどの狂人呼ばわりといい、馬岱は単に馬超に忠実な従弟というわけではなかった。
実際には、かなりの頻度で意見の衝突を繰り返してきた、と当の馬岱本人から聞かされたことがある。
それでも馬超軍から離脱しなかったのは単なる意地で、心はとっくの昔に離れていた、とも言っていた。
氐族の二人も恐らくこの辺の話は以前にも聞かされていたのだろう。
その例えなら分かりやすい、とでも言わんばかりに妙にあっさりと納得して頷いていた。
「いや、良く分かった。確かに話を聞いてみると我等の今後にとっては不安材料が多い。」
「ああ、正直に言うと私も漠然とした考えとして魏に降るという選択も視野に入っていないわけではなかったが、諸葛公が亡くなられてから、まだ1年ほどでしかないのに、ここまで影響が出ていようとはな。馬岱殿の懸念が良く分かったよ。」
「今のところ、こちらの方面の魏軍は司馬懿と郭淮が仕切っているようだ。彼等ならお二方を無下に扱う事はあるまい。」
そう言って、今日はもう遅いから、と馬岱は二人を引き留めたが二人は断った。
「ありがたいことだが魏の間者や斥侯に探知されないように帰るには夜間しかないのでな。」
「今日は会えて良かったよ。」
「こちらこそ。こんな結果で面目ない。」
そう言う馬岱に向けて二人は手を振りながら遠ざかっていった。
なんともあっさりとした別れ方だが、この3人には独特な絆があるのだろう。
これが最後、という感じが全くない。
「鄧聞、総員に飲酒と煮炊きを許可する。かなり遅いが晩飯の準備だ。ここまで来たのなら、どうせ敵も、もう討手は出せまい。」
「は!承知致しました。」
全員に触れて回るため鄧聞は踵を返した。
まあ、許可がなくても連中なら勝手に始めてるだろう、とも思いながら近くの兵達に声をかけた。
そして、ふと振り返ると馬岱は何かに驚愕したかのように、じっと一点を見据えていた。
その視線の先には何もなく少し距離を置いたところに、まばらに草木が生えているだけだった。
だが、かすかに動く口元から発せられた呻きにも似た馬岱のその一言を鄧聞は聞き逃さなかった。
「爺さん…。」
2 配信の傍観者
アキヤマ「はい!どーもアキヤマで~す!っというわけでですね〜、前回は衝撃的な!衝撃的な!大事なとこだから三回目も言っときましょう!衝撃的な!え~出来事がですね~起こりまして。まず、結論から言うと、ここ、完全に異世界です!もう、そうとしか思えません!で、前回も言った通り、目下の最大の悩みが食料の調達!これホントにどうしようっ!!…ってなってたんですけど、あっさり解決しちゃいました!なんとですね~、うちのアパートの近所のコンビニが同様に飛ばされて来ちゃいました!また、でっかい音がしたもんで慌てて見に行ったらやっぱりですよ~。で、このコンビニですが、ウチから見て南東の方角にあったんですけどウチのアパートとコンビニを対角線とした際にできる正方形の、恐らくですけど正方形の範囲内の土地が上に乗ってる建物ごと!恐らく住人さんも含めて!飛ばされて来ちゃったようです!でも大家の家は西隣なので範囲外!つまり家賃払わなくても大丈夫!!で、余談なんすけど~前回の動画!大バズり!…ではないけどww確実に見てる人が複数居るということが分かりました!見てるんなら、いいね!だけじゃなくコメントもお待ちしてますよ~!それと他の新規ユーザーさんが続々と登録されてるようです!アフィリエイトの登録も済んだし!日本円で振り込まれるようですし!もう最高!で、わたくしアキヤマ心に誓いました!ここで配信者として生きていきます!そこで今回はなんと!なんとなんとなんとなんと~っ!!ゲストにお越し頂きました!」
カンネイ「はいどーも!管寧です!って言っても『甘』い方じゃなくて『管』の方ですからね~!甘い方だと僕とは全然違う、もっとメジャーな人になっちゃいますんでね~!その辺お間違いの無いようにお願い致しますぅ~!」
アキヤマ「メジャーって、出で立ちと言葉のギャップが凄い事になってますね~!その辺も後で詳しくお聞きしたいと思いますぅ~。そして、もう御一方…。」
ヘイゲン「はーい邴原でーす。いや~アキヤマくんには命助けてもらったんでマジ感謝っす!これからアキヤマくんの配信手伝わせて貰いますんで視聴者の皆さん、よろしくお願いしま~す!」
アキヤマ「マジ感謝ってww配信てwwヘイゲンさんの方は更に凄いギャップが生まれてますね~!もうお気づきかと思いますが、そう!前回、倒れていたお二人にお越し頂きました~!というわけで、こんなメンツでお届けしていきま~す!その前に一旦CMで~す!」
二人「いやいや!ないからないから!」
アキヤマ「凄い!CMという現代語に反応した上にコンビでツッコミとかwwマジで神回確定っすよ!」
カンネイ「いいからもうww早いとこ本題入ってよ~ww」
アキヤマ「はい!ゲストのお二方から苦情を頂きましたwwで、さっそく処理していくんですが~、まず、お二人はどちらからいらっしゃったんですか~?」
カンネイ「僕ら三国時代の中国の東海郡ってとこから来ました。実は命を狙われてたみたいで家で仲間とくつろいでるところを急に!ある人物に襲撃されましてねー。やべぇってなって慌てて家を飛び出して、すぐ裏が川だったんで邴原と二人して飛びこんで必死こいで逃げてたんですよ〜。で、流れついた先で…要はここでアキヤマくんに助けられて現在に至る…的な?」
ヘイゲン「あれはほんと最悪だったっすわ。命狙うとかマジ勘弁っすよ。」
アキヤマ「そう!そこなんですよ!一体何をやってたら命を狙われるんですか?」
ヘイゲン「いや、そりゃ乱世だし。」
アキヤマ「に、してもですよ?カンネイさんもヘイゲンさんも隠者みたいな状態だったっすよねー?生命の危機的な要素、無くないっすか?」
カンネイ「まあ、歴史の裏側で色々とやってましたからね~。で、まあ、そのやってたことっていうのが後で紹介する持ち込み企画の内容その物なんで今は言えないっすけど、まあ、それに気づいちゃった人達が居て、その人達的には許せない事だったみたいで襲撃されたって流れです。」
アキヤマ「お二人に事前に伺った話だと、なんでも元々は清流派の知識人だったけど色々あって世の中イヤになっちゃった人達で集まって、魏、呉、蜀、どの国が天下を獲るか、で賭け事を始めて、で、ただ賭けるだけじゃ面白くないってんで、それぞれの推しの陣営が勝つように色々裏工作をして、互いにしのぎを削ってた中、皆様いかがお過ごしでしょうか?ってな具合に襲撃者が現れて、こんな風になっちゃったって事だったようなんですけど、その賭け事ってのが今回の持ち込み企画ってことでよろしいですか?」
二人「もー!先に言っちゃうしー!」
アキヤマ「スンマセーンwwいや、でもね?ここで不可解なことがワゴンセールになりそうなくらい沢山出てきちゃってるんですよー。まずは視聴者の皆さんのために、そのあたりを一つづつ紐解いていきたいんすけど~。よろしいですか?」
カンネイ「はい!ぜひぜひ!」
ヘイゲン「なんでも聞いちゃって下さい!」
アキヤマ「おおー!すごく前のめりっすね~!いやいや、こっちとしては助かりますよ~!」
カンネイ「べっ、別にみんなに話を分かりやすくしてあげたいとか思ってないんだからねっ!」
ヘイゲン「なぜに急にツンデレなんだよ!ww」
アキヤマ「やべえ!めっちゃ面白いwwなんか、掛け合いがもう、完成されてますね~wwホントに古代中国の人っすか?」
カンネイ「いや、そこ疑っちゃダメだよ~ww話進まないじゃんww」
ヘイゲン「これはマジレスするとマジなんすよ~。」
カンネイ「マジマジうるせ~わ!ww」
アキヤマ「いやもう、うp主たる僕の出番がまったくもってないですね~wwま、ここは話を進めるためにも信じましょう!でも、そうすると今度は、なぜに言葉が通じるの?っていう疑問が出てくるんすけどね。僕は英語できないし。ましてや古代中国の言語なんて、もう別の天体の言葉ですから。で、普通に日本語で話しかけてるのに普通に言葉が返ってくるってヤラセじゃないなら異常事態っすよ。なにか人を超越した存在が勝手に言語を変換してるとしか思えないんですが」
カンネイ「ああ、それはあると思うよ~。僕らの世界にもアキヤマくんみたいな人が居たから。アメリカ人のフランクくんていうんだけど、ノートパソコン片手に突然ひょっこり現れて、当の本人も何が何だか分からなくなってて、ちょっとした錯乱状態で、僕らは漢語で話しかけてるんだけど普通に通じてたからね。漢語分かるの?って聞いたら、え?僕イングリッシュで話してますよ?だってww」
ヘイゲン「多分だけどスキルってやつなんだよね。アキヤマくんの時代だと異世界転生モノが結構、流行ってるでしょ?その時に、大体どの作品のキャラも何らかのスキルを身に着けたり与えられたりするじゃん。多分それだよ。だってどの物語も真っ先に言葉が通じるようになるじゃん。」
アキヤマ「なるほど、納得です。」
カンネイ「おいおい。いやにあっさり納得しちゃったな〜。」
アキヤマ「だって動画撮ってない時も現状の整理で話しまくってたでしょwwで、てことはここもやっぱり異世界?ん?てか、お二人の元居た時代も異世界ってことになりません?同じ時間軸の中での、いわゆるタイムスリップだと、異国の言語がいきなり身に付くっていう設定はあんまり見かけないように思いますが…?」
カンネイ「そこがまだ話してなかった重要なとこなのよ。例えば三国時代の歴史って、どんな風に習った?結果だけでいいんだけど。」
アキヤマ「えーとですね。まず蜀が魏に滅ぼされて、その後、魏の重臣司馬炎が魏から帝位を簒奪して晋と国号を改めて、その晋が呉を滅ぼして天下を統一、三国時代は、その幕を閉じた…的な流れだと教わってますね~。」
カンネイ「ああ、じゃあもう全然違うわ。僕らの生きていた三国時代は蜀が天下を統一するから。」
ヘイゲン「平行異世界ってやつだね。パラレルワールドって言い方のが馴染み深いのかな?」
アキヤマ「なんかいきなりドン引きなんですがwwもう理解が全然追いつかなくて周回遅れ状態ですよ!重ね重ねで申し訳ないんすけど、本当に古代人っすか!?ww」
二人「本っ当ですっ!!ww」
アキヤマ「はい!分かりました!もう疑いません!ww」
二人「ええ~!?」
アキヤマ「もう何すか~?ww疑っちゃダメなんでしょう?ww」
カンネイ「いや、それはそうだけど~ww」
ヘイゲン「フリだからwwフリww」
アキヤマ「いや、もうなんちゅうか、本…。」
カンネイ「あー、今時そのネタ分かる人居ないからww」
ヘイゲン「古っ!」
アキヤマ「もー言わせて言わせて!つ~か古代の人が昭和ネタを古いってww」
カンネイ「だって今、令和じゃん。古代人でも中身のアップデートくらいするってww」
ヘイゲン「視聴者をはるか彼方に置き去りにして番組は進行しております!」
アキヤマ「こらこら勝手にまとめない!ま~このくらいにしておいて、あとはお二人についてご不明な点はコメント欄にください!」
カンネイ「うわ、出たよ!露骨なコメント数稼ぎ!」
アキヤマ「やなこと言わないでくださいよwwそうしとかないと進まないでしょww」
ヘイゲン「さてさて、ここでお二人にはある動画を…。」
アキヤマ「こらこら勝手に進めない!油断も隙もあったもんじゃないな~wwま、今ヘイゲンさんが仰ったようにですね~、ある動画をみんなで見ていこうということで、これは、このサイトに上がってた別のユーザーさんの動画でして、チャンネル名が笑っちゃうんですけど聞きます?そうですか~聞きたくないですか~残念だな~」
二人「いや、そこは聞かせて!」
アキヤマ「おっと、またしてもダブルツッコミwwじゃ特別に教えて差し上げましょう!チャンネル名は!どぅるるるるるるるるるるる…」
カンネイ「ドラムロールいいからww」
ヘイゲン「早く言ってww」
アキヤマ「じゃん!ハルコちゃんネル~!」
カンネイ「…普通じゃん。」
ヘイゲン「うん。普通。」
アキヤマ「リアクション薄っ!!まあまあ、これはですね~、説明しますと、まずは大枠のチャンネルがユーザー1人に対して1つ、で、その中に複数の小チャンネルをまとめることができるようになっているようでして…」
二人「ふむふむ」
アキヤマ「で、一人のユーザーが副アカ幾つも作るも良し、他のユーザーを小チャンネルとして参加させるも良しってな具合で、複数のチャンネルを一つに纏めてその視聴数が大チャンネルの総視聴数として計上される…だから大チャンネルの中でお笑いの小チャンネル、ドラマの小チャンネル、音楽の小チャンネル、ってな具合にジャンル分けするみたいな使い方ができるわけですよ。で、ツベみたいにサブチャン作り過ぎて視聴数が分散して数字が伸びねー、みたいな悩みがある程度解消されるという画期的なシステムになっておりまして…」
カンネイ「おお~なるほど~」
ヘイゲン「…って、他でそういう風になってるサイトなかったっけ?」
アキヤマ「ありましたっけ?まあまあ、でも、ツベよか良いシステムなのは間違いないでしょ?」
二人「ま、確かに」
アキヤマ「で、肝心のハルコちゃんネルの中身なんですけど、まず一つ目がコハルコちゃんネル。で、二つ目がチュウハルコちゃんネル。」
カンネイ「うんうん。」
ヘイゲン「なんか予想ができるな。」
アキヤマ「三つめがオオハルコちゃんネル。」
ヘイゲン「ふふww」
ヘイゲン「やっぱりか。予想通りだわ。」
アキヤマ7「まあ待ってください。四つ目があるんですよ。」
カンネイ「ほうほう。」
ヘイゲン「四つ目?」
アキヤマ「なんと!トクダイハルコちゃんネル~!」
カンネイ「ああ、確かに面白いね~ww」
ヘイゲン「俺的には、ややウケくらいかな。」
アキヤマ「なんだかな~。反応薄いっすね~。まあ、それでね、そのコハルコちゃんに動画が一本上がってたんですよ。それを今から三人で見ていこうっていうね、今回のメインはこれです!んじゃ再生しますよ~。ぼくらの反応はワイプで出ますんでね。視聴者の皆さんはそれも含めてご覧ください!お?字幕出ましたね~。『235年 散関』?なんだろうこれ?」
カンネイ「ああ~、漢中郡の北の関所だね。235年は何だろう?西暦?僕らそんな年になるまで、あっちに居なかったし…。」
ヘイゲン「状況説明の字幕も流れ始めたね。ええと…総司令官諸葛亮の死により蜀の第5次北伐は頓挫した。その報を受け魏帝曹叡は詔勅を発し蜀の北伐に対応していた司馬懿らの軍勢に、そのまま南征を命じた。魏軍は陳倉を拠点とし軍勢の一手を南下させ漢中の北、散関を攻め落とした。奪回のため北上する蜀軍。迎撃のため南下する魏軍。今ここに、戦いの火蓋が切って落とされた…だって。」
カンネイ「アキヤマくんの世界の三国時代みたいだね。」
アキヤマ「ああ、画が寄っていきますね~。郡指揮官…「郡」ってww「軍」の間違いだろwwで?黒い軍装で統一されてますね~。誰だ?あ!旗印が「馬」だ!ってことは…」
カンネイ「げえっ馬岱!!」
アキヤマ「それ漫画の『げえっ関羽!!』でしょ?wwなんでそんなネタまで知ってるんですかww」
カンネイ「言いたかっただけでしょ?」
ヘイゲン「バレた?でも、なんでこのリアクションかって言うと、僕らを襲った内の一人がこの馬岱その人なんですよ~!ああ腹立つ!」
カンネイ「でも、僕らが見た時より、かなり老けてない?」
ヘイゲン「そうだね。やっぱり平行異世界なんだな。」
アキヤマ「ちょっと待って。一時停止しますね。え?馬岱に襲われて、ここに来たんですか?というか馬岱だけじゃなく?」
カンネイ「そうそう。もう一人居た。馬忠って将軍なんだけど知ってる?」
アキヤマ「知ってます知ってます!同名の人が二人居て、馬岱と一緒に居たってことは、その内の蜀の将軍の方でしょ?」
カンネイ「正解!馬岱のご先祖様の後漢の伏波将軍馬援って人は、異民族討伐とか辺境で起きた反乱の鎮圧ばっかりやってたような人なんだけど、まあ、行く先々で女作ってはらませてたような人でもあるわけ。だから、あっちもこっちも馬氏だらけになっちゃって、この馬忠も、その子孫なのよ。ま、馬岱と遠縁の親戚だね。で、たまたまなのか、それとも、はなっから連携してたのかは知らないけど、とにかく二人とも僕らに辿り着いちゃったわけ。で、ハッキリ言って僕らが彼らに天下獲らせてやったようなモンなわけだけど、彼らは激怒しちゃっててさあ。なんでだよって今も思ってるもん。あ~わけわカンネイ!」
アキヤマ「え!?ダジャレ!?いやいや逆恨みみたいに言ってますけど、操られた結果だって知ったら、そりゃ誰だって怒りますってwwでも、それ面白そうだなww」
ヘイゲン「わけわヘイゲン!」
カンネイ「無理矢理過ぎるわ!」
アキヤマ「はいはいww続き見ますよ~。でもCGにしてはなんだかリアルな質感だったな~。役者さん使ってんのかな~?結構カッコいいオジサンでしたね~。馬上だったけど背も高そうでしたし、もっとマッチョで無骨な人を使った方が武将っぽく見えるんじゃないかな~。」
カンネイ「いやいや、さっきも言ったけど多少老けてはいたけどアレはCGでも役者でもなくて間違いなく馬岱本人だよ。つい昨日の事のように思い出されるけど自分を殺そうとした人の顔を忘れるワケ無いじゃん。」
ヘイゲン「昨日の事のようにって実際、昨日の事じゃん。」
アキヤマ「いや…それマジすか?ここから先は合戦シーンになると思うんですけど…。」
カンネイ「うん。かなりグロいシーンが続くと思うよ。」
アキヤマ「うわ~、見るのやめようかな~?てか、うp主、良くこんなの上げれたな~。このサイト、審査ユルユルなんですかね~?実際の戦場だと信じるとして、どうやって撮ったんだろう?」
ヘイゲン「主その人こそが神様みたいな存在なんじゃない?ま、その辺は一通り見終わってから考えようよ。」
アキヤマ「了解です。さて、だんだん画が引いていって今度は、もう一方の軍勢に…ってことはこっちは魏軍ということですね~。こっちに画が寄っていきますね~。さあ、指揮官は誰でしょうねえ?旗印には『牛』の一文字が…。」
ヘイゲン「げえっ牛金!!」
アキヤマ「だ~か~ら~wwネタfrom漫画を放り込むのやめてくださいよ~ww」
カンネイ「この人には何にもされてないでしょ?wwてかアキヤマくん、わざと振ってない?ww」
アキヤマ「あ、バレました?wwだって面白いんだもんwwでもこっちはこっちで結構シブいオッサンですね~。名前だけでのイメージだと、牛みたいにデカくて筋骨隆々な人を想像してたけど…。」
ヘイゲン「うん。名前負けの典型例だね。」
アキヤマ「それは言い過ぎでしょww」
カンネイ「もうww良いから続き再生してww」
アキヤマ「はいはいwwそれじゃ再生しますよ〜。画が引いていって…両軍の全体像を俯瞰で見せてくれてますね〜。お?画面が暗転して、いきなりワイヤーフレームで軍勢を表示してますね〜。カーソル入力風に各部隊の指揮官名ですかね?それと兵力と思われる数字が書き込まれていきます。」
カンネイ「ええと?隊形的には鋒矢の形ですかね?画面右半分の上から読みますよ~。【馬岱軍】。右翼:楊安隊/李秀徳隊の計二千、右脇備:趙融隊/丁勝隊の計二千、中央本隊:馬岱隊/鄧聞隊の計二千、左脇備:宋淋隊/関騰隊の計二千、左翼:厳亮隊/李秀明隊の計二千。五段構えの総計一万ですね。」
ヘイゲン「なんか格ゲーみたいな画面だな。体力ゲージみたいなやつ上に出てるし。つーか、1隊って3000人じゃなかった?馬岱軍はなんで1000人づつなの?」
カンネイ「あれ?もう忘れちゃった?10人集まって「什」、100人集まって…つまり「什」が10組集まって「佰」なのに、なんで「隊」だけ30佰も必要なんだよって言って馬岱は自軍の編成を10佰で1隊に変えちゃったじゃん。」
ヘイゲン「そうだっけ?僕的には別に「隊」って単に人の集まりって意味であって「仟」と同じ意味の言葉ってワケじゃないから3000人で1隊でも別によくね?って思っちゃうんだけど。」
アキヤマ「ま、その辺はひとまず置くとして、wikiだと『建興13年(235年)、馬岱は兵を率いて魏に攻め込んだが、牛金の軍に敗れ千余りの損害を出して退却した。晋書・高祖宣帝紀』ってなってますけど実際の戦闘の詳細な推移は、どこ探しても出てこないんですよね~。そう考えると目茶苦茶貴重な映像ってことになるな~。僕の世界では漫画とか小説ではやたらと活躍するのに実際は何やってたか不明なんで逆に有名になっちゃった人なんですよね~、馬岱って。」
カンネイ「あ~、でもその理由は分かるよ。この馬岱と僕らの居た世界の馬岱が同じ任に就いていたって前提だけど。」
アキヤマ「お~、それ是非聞きたいですね。」
カンネイ「要は忍者なのよ、馬岱って。倭の国…じゃなかった日本で言うところの。でなきゃ、近代軍隊の特殊部隊とか。」
アキヤマ「え?マジすか?じゃ、じゃあ暗殺とか諜報も自らやっちゃう系の?」
カンネイ「そうそう、やっちゃう系。だから、かなり高位の将軍なのに働きがほとんど表に出てこないのね。そりゃ出せねえよって内容の仕事ばっかりやってたんじゃないかな~?」
アキヤマ「うわ〜。怖いっすね〜。ま〜でも関係ないかww時代違うし、ここ異世界だしww」
カンネイ「分かんないよ〜?案外こっちの世界に馬岱が飛ばされる前フリだったりしてww」
アキヤマ「いやいや怖いこと言わないでくださいよ〜wwお二人だって馬岱がこっち来たらイヤでしょ〜?ww」
ヘイゲン「僕は全然構わないよ。もし来たなら今度こそ完璧に操って最後には泣かせてやるからwwてか続き見ないの?牛金軍の説明は?」
アキヤマ「お〜っと!そうでした!対する牛金軍も軽騎のみで総計一万!こちらは密集隊形ですね〜。」
カンネイ「そうだね〜。魚鱗っぽいけど、ちょっと違うのかな?中央に牛金隊が五千!多くね?で、残りの5部隊各一千づつに外周を囲ませて…」
アキヤマ「おっと、暗転が解けましたね〜。牛金軍各備えの指揮官名は無しか。馬岱軍と比べて扱いが雑だな。その牛金軍に画が寄っていきますね〜。」
カンネイ「外周の兵士は軽騎に似つかわしくない物を背負ってるね〜。」
ヘイゲン「大盾だね。あー、その大盾を構えたね。一番外側は下馬して…2列目は騎乗のままだ。馬岱軍の騎射を警戒してるね。」
アキヤマ「両者ともに、はなっから野戦のつもりだったみたいですね〜。でも馬岱軍は関所はどうするつもりなんでしょうね〜?見たところ攻城兵器は持ってきてないようですし。」
カンネイ「牛金は牛金で、あれじゃ軽騎の機動性を自ら犠牲にしてるようなもんだし。あ〜もう!わけわカンネイ!」
ヘイゲン「馬岱の方は別の部隊に後から持ってきてもらってるんじゃない?野戦の現場に雲梯とか衝車とか邪魔でしょ。牛金の方は戦場までの移動速度を考えて軽騎で来ただけで戦闘自体は本当なら歩兵でやりたかったんだと思うよ。」
アキヤマ「あ〜、なるほど。」
カンネイ「おお〜。ヘイゲンが戦術語るとか雪降ったりしないかな?ww」
ヘイゲン「そこ、うるさいよww」
アキヤマ「まあまあwwおっと!そんなこんなしてる間に馬岱軍が動きましたよ!両翼と中央が前進!しかし脇備えは左右共にそのままの位置ですね~。」
カンネイ「馬岱軍は曲射して盾の上から矢の雨を降らせているね~。しかし威力が落ちるから大して効かないんじゃない?一方で牛金軍も中央隊5千が盾の後ろから射返してるけど馬岱軍が動き回るもんだから、やはり効き目が弱いね。」
アキヤマ「馬岱軍の騎兵も腕に括りつけるタイプの小盾を…RPGで言うところのバックラーシールドって言うんですかね~?それで防いでいるってのもありますからね~。」
ヘイゲン「いや、それでも地味に効いてるみたいよ。こりゃ馬岱の方が先にガス欠になりそうだね。」
カンネイ「問題は温存してる脇備えをいつ参戦させるか…だね~。それによっては牛金の方も、かなり危険な事になりそうだよ。」
アキヤマ「指揮官が指示を出したりとかの個人にクローズアップした声は拾ってくれないんですかね〜?おおっと!画が馬岱に寄っていきますね〜。」
映像のバタイ「鄧聞隊に伝令!騎射を継続しつつ散開せよ!本隊は総員抜刀!肉薄して盾を排除する!」
カンネイ「うわ〜、この乱箭の中を?無理あるんじゃないの?」
アキヤマ「味方に誤射されないんすかね〜?それに下手に盾どかしたら、それこそ敵の射線をわざわざ確保してやるようなもんじゃん。馬岱って馬鹿なのかな?」
ヘイゲン「いや!でも一部は矢の餌食になりつつも槍のフルスイングで盾の姿勢を崩してってるよ!そこへすかさず散開してきた鄧聞隊の一部が矢を水平射撃で射掛けて牛金軍の応射を防いでるね〜!スゴイな〜!佰単位ならまだしも別の隊と、こんな風に連携するとかマジ神!っすよ!」
カンネイ「お前はどっちの味方なんだよww」
アキヤマ「確かにすごいけど一歩間違えば…ってやつですね~。現状、上のゲージは馬岱の方が減りが早いようですが、ここからどう巻き返していくのか!注目です!」
カンネイ「あれ?画が馬岱軍の遥か後方に寄っていくね~。騎馬が単騎で馬岱軍に近寄っていくよ。なんだろう?」
アキヤマ「あ、だんだん騎馬がアップになっていきますね~。音声入るのかな?」
映像の騎馬「我は尚書令の費禕なり!勅使として参った!馬岱将軍はいずこにあらせられるや!?勅命である!交戦中の各部隊は速やかに撤退せよ!繰り返す!速やかに撤退せよ!」
三人「え~!?せっかくいいところなのに~!」
ヘイゲン「あ、忘れてた。げえっ費禕!!」
カンネイ「いや、もういいからww」
映像のヒイ「馬岱将軍!陛下からの命です!即刻、軍を引き上げて下さい!」
映像のバタイ「馬鹿を言うな!敵の癖は掴んだ!もう少しで勝てそうなんだ!今ここで下手に背を向ければ被害が増幅する!お前だって分かるだろう!」
映像のヒイ「お願いです!これ以上続ければあなたの立場が更に悪くなる!はっきり言えば成都はあなたの排除を目論んでいます!失脚で済めばまだいい!しかし戦を続ければ勝敗に関係なく、それを理由に死罪を言い渡しかねない!」
映像のバタイ「なんだと!?なんでそんなことになる!?」
映像のヒイ「全てを話せば長くなりますが要は亡き丞相の信任が厚かった人物を少しづつでも排除していこうという空気が強まっています!」
映像のバタイ「馬鹿な! 蒋琬はどうした!?」
映像のヒイ「 蒋琬殿は立案なされた計画を遅らせてでも、そうした動きを止めようと尽力なされています!とにかく今、最大の標的になっているのはあなたです!身を守る事だけを考えてください!」
映像のバタイ「この勝機を作るために犠牲になっていった兵達はどうなる!?ここで俺が退けば只の犬死にだぞ!」
映像のヒイ「もう、そういう段階ではないんです!私はまた馬岱殿と旨い酒を飲みたい!旨い飯を一緒に食いたい!今は自分が生きることを考えてください!」
映像のバタイ「くっ…!」
映像のヒイ「お願いです!」
映像のバタイ「伝令!両脇備え前進!」
映像のヒイ「馬岱殿!」
映像のバタイ「安心しろ!安全に撤退するために一撃浴びせるだけだ!両翼へ伝達!戦場を大きく迂回して漢中方面へ撤退せよ!追って合流地点を知らせる!両脇備えは敵を牽制しつつ徐々に後退!本隊の撤退を援護せよ!鄧聞隊は我が隊と合流!共に後退せよ!」
映像のヒイ「馬岱殿!申し訳ござらん!」
映像のバタイ「酒と飯はお前のおごりだぞ!第三佰は費禕を護衛して先行し野営地を確保!狼煙を焚いて地点を報せよ!」
映像のヒイ「必ず生還してください!必ずですよ!」
映像のバタイ「お前もな!我が隊はこれより両脇備えと共に突撃を敢行する!一撃の後に反転!合流地点へ向けて戦場を離脱するぞ!」
カンネイ「いやいや…カッコよく見えるかもだけど、要は上から怒られて渋々撤退してるだけでしょ。ざまあとしか言いようがないけどねえ。」
アキヤマ「結局、なにがしたかったんでしょうね?」
ヘイゲン「散関奪取っていう目的はハッキリしてるけど、なんだかねえ。」
カンネイ「あ~あ、普通に撤退始めちゃった。」
三人「…。」
アキヤマ「まあ、でも人が死ぬところとかのアップは無かったし見やすかったですよ。そこはよかったですね。」
カンネイ「まあね~。」
ヘイゲン「ん?おまけ?」
カンネイ「ミノムシ?何このテロップ?」
アキヤマ「うわー!全身に矢がぶっ刺さって…。あー!あー!」
ヘイゲン「死亡集かよ。趣味悪いな~。」
カンネイ「次は?首無しライダー?」
アキヤマ「うわ~そのまんま!」
ヘイゲン「で?目ん玉?」
アキヤマ「刺さる瞬間のスローモーションとかやめて~。」
カンネイ「ご視聴ありがとうございましただって。やっと終わったよ。」
ヘイゲン「最後ひどいねwwびっくりしたわww」
アキヤマ「え~、ちょっと言葉が出てこないんでww締めちゃいましょう。持ち込み企画の事とかは次回冒頭で説明しますんで今回はここまで!以上、アキヤマと!」
カンネイ「カンネイと!」
ヘイゲン「ヘイゲンでした~!」
三人「バイバイ!」