342話 冥界で会いました
俺達は地上から冥界に降りてきている。
本来なら冥界に住まう悪魔と、死者の魂しか来られない場所だ。
「悪魔と取引がある一部の魔族しか知らない。冥界への通路を〈術〉を使って開く方法。
マスターは何故知ってるんだ? 教えてくれないか」
「昔、悪魔に襲われたことがあるんだ。俺は返り討ちにしたそいつから、〈術〉を教えてもらったんだよ」
思い出すと今でもムカムカするけどね。
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あれはサタナを倒しエワード王になった直後の事だった───。
「勇者アベルは、魔王イフマイータに敗れ生涯を終える。
天界冥界、二界の取り決めに従い、その魂を冥界へ連れてゆく」
「人が寝ている時に襲ってきて!
口を開いたと思えばたわ言かい。俺はイフマイータに勝ってるんだぜ。
ふざけなさんなよ!!」
悪魔も反論できず。帰るかな? と思ったら襲って来たため、仕方なく返り討ちにしちまった。
絶対アベルちゃんは悪くないよね。
その時に悪魔を見逃す条件で冥界に行く〈術〉を教えてもらったのだ。
何時でもこれで本拠地に乗り込めれる様になったわけだぜ。
「開け冥界獄!!」
呪文は悪魔の説明によると〈※:我は星々が浮かぶ夜を|外套《がいとう〈※:マントの事〉》にする者。開け冥界獄〉と言う意味らしい。
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とにかく、コイツを唱え俺は冥界と地上を繋ぐ通路を開いた。
と、いっても見た目は魔法陣そのものである。
悪魔達が召喚される時の魔法陣と全く同じなのだ。
そんな経緯で肉体を持ったまま。
俺は、こうして冥界に来れたという訳なのだ。
「僕は冥界があることを知っておるが、こうして来るのはじめてなのじゃ」
「僕もルーナと同じー。ジイでさえ行った事がないって言ってたもん。
肉体を持ったまま来た人間はソンクーがはじめてじゃないかな?」
ルーナと、ミラルカの魔王一族でも来た事がないと発言している。
冥界は基本悪魔しかおらず、死者の魂を管理する場である。
それもそうかと俺は一人で納得した。
サタナでさえ「僕も冥界に降りるのはこれがはじめてだ」と、言うので冥界とは、地上の干渉を受けない独立した場所であることがわかったのだ。
悪魔と魂しかいない場所なら行きたいと思う人もいないよね。
「アベルさん。誰かが火を焚いています」
「悪魔かな。アベル君、攻撃される前にやっつける!?」
「まだ敵かどうか。今の時点では判別が難しい。
シャーリーは落ち着いて。レムも一旦戦闘態勢を解くんだ」
サタナに視線を向けると一瞬で意図を把握した様子だった。
「冥界は広大だが、住民は全てエリジウム。アルカディアが治める国都に住んでいるんだ。
国の外であんな風に、焚火の煙が上がる事は絶対にない!」
俺の知りたい情報を教えてくれた。
凄く賢い。
同時に焚火をする者をこの時点で仮想敵に決定する。
サタナの情報から異常事態発生中だとわかったからである。
レムは、俺の視線にコクリと頷きまたたく間に戦闘態勢になった。
そうして俺達は、火を焚く謎の人物に近づいていく。
「おや!? こんな場所に人が居るなんて珍しいですね。冒険者の方ですか?」
女性が火にあたってるだけだった。
敵意はなく悪魔ですらない。
長い髪は白く透き通り前わけの髪型だ。
目は水平に線を引いたのかと思える糸目である。
口調と物腰が柔和な大人の女性だ。
胸は小さくはないが大きくもない、腰も同様だった。
そして面識がない相手なのに、妙な親近感を覚えるのだ。彼女も同じ感覚を持ったらしい。
「『白い小妖精』!? ああぁぁ。つ、つ、ついに辿り着きました。アベル・ジンジャーアップルですね!
貴女は『はじまりの勇者』。もうひとつの名は魔王タイセイで間違いありませんね!!!」
謎の女性は食い氣味に喋り出す。
興奮してるようだが、あんたの目を開く限界はそこまでなのかい!?
この人は興奮してるせいか目を見開いてるんだけど、糸目の時と3ミリくらいしか変わってない。
話しぶりからどうやら俺を探していた様だぜ。
この頃には敵じゃない事がわかっているため、俺は皆に戦闘態勢を解くよう指示を出しておいた。
わかったって。
謎の女性よ、わかったから体を揺さぶるない! 落ち着ついてくれってばよ!
「なんとなく゛あんたの正体゛がわかるけど、その口から聞きたい。あんたは一体誰なんだい?」
「アベルさんと同じ存在です。
【七勇者】の一人。『漆黒の旅人』ジョリオン・N・トランベリーと申します」
やっぱりそうだった!! 思った通りだぜ。
【七勇者】の仲間を見つけたのだ!!
「「やったねアベル君!!/アベルさん!!」」
「ふむ。こんな事もあり得るんだな」
俺はシャーリーとレムに抱き着かれる。
彼女達もこの出会いを心より喜んでくれている。
レムが抱き付くのは珍しいけど、嬉しかったんだろう。そのくらい素晴らしい出会いなのだ。
サタナのやつは素直に驚いてた。
「やったねソンクーー!!」
「姉上にはキルレイン兄上がおるじゃろ。僕のアベルなのじゃ。
獲ったら嫌なのじゃ!!
……しかし、何で【七勇者】が冥界なんぞに居るのじゃ…………?」
ミラルカに後ろから抱きしめられる。
ヒトにする様な愛情たっぷりのハグだ。
ルーナは変な勘繰りをしていた。アベルとミラルカの間にあるのは友情だけだよ。
心配しなくてもとられたりしないさ。
俺が好きなのはルーナだからね。
安心してくれたまえ。
しかしルーナが思う疑問は、俺も考えていたことなのだ。
どうしても氣になる。
『ジョリオンはどうして冥界に居たのか?』
冥界の通路を開く呪文は閻魔、泰山府君、ヤマのアナグラムになります。全部同一人物です。
インドで最初の死者となったヤマは、その事死後の管理者になりました。
中国に伝わり泰山府君。日本に伝わり閻魔大王になります。
孫悟空には寿命が存在します。『西遊記』によると悟空は342歳で死ぬ予定でした。
でも、この時悟空は仙人になっており「俺に寿命はないはずなのに、どういうことだい!と、暴れ閻魔帳から自分と水簾洞の仲間の寿命を消すエピソードがあるのです。
アベルが冥界の悪魔を返り討ちにするエピソードは、ここから頂いてます。
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