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収穫

 国柄の違いと言えばいいのだろうか。

 セレ王国の軍勢には、かなりの割合で女性がいるようだった。

 厳密には、女性が騎士の大半を占め、重武装の歩兵は男ばかりと言う編成だ。

 尚武の国として知られるセレは女性も勇猛な戦士として前線に立つが、一般的に男に比べれば女の方が体格で劣る事実は否定できない。

 そこで、男は重武装の歩兵として前衛を務め、女は機動力のある騎馬で側面からの遊撃に徹すると言う構成になったというのが、セレにおける軍隊の歴史である。

 魔装機甲兵が戦争の主体となった現在にもその伝統は受け継がれ、前衛用の重装甲の機体は男、機動性のある遊撃用の機体は女が搭乗するのだそうだ。

 ケールこと、金森薫はシンゴを案内しながら、そのように説明した。

 ちなみに、セレと言う国の習慣では、他の国で名乗る時に本来の名前を使わないと言う話だった。

 このセレの名乗りに関する由来は、直ぐに分かることになるが、シンゴは面倒で奇妙な風習だ、と言う程度の感想で済ませてしまっていた。


「あたしのユーザ名称はカーラって言うのよ。この世界では、それがあたしの名前って事になるのかしら。あなたは、そっちの名前で呼んでくれても構わないわよ」


 道理で変わった名前だったと思いながら、シンゴは、今後、彼女をカーラと呼ぶ事に決めた。

 周囲の兵士(男)や騎士(女)は、カーラに気づくやその場で直立不動の姿勢になって敬礼した。

 カーラは時折軽くうなずきながら答礼していたが、その後ろに続くローセンダールの近衛騎士、つまりシンゴは、胡散臭そうな、あるいは、珍獣を見るような視線を向けられ、非常に居心地の悪い思いをしていた。


「将軍がまた異国の男を連れているぜ」

「しょうがないんじゃないの? でも、今度のは随分と変わっているわね」

「いやいや、いつもと違うのは事実だが、変わっていると言うよりありきたりな感じだな」

「ほら、毎日ご馳走ばかりだと飽きるっていうじゃない。たまにはああいうのもいいのかもね」


 などと、ひそひそ話す声が耳に入る。

 カーラにもそれは聞こえている筈だが、彼女は歩みを止める事無く平然としていた。

 そして、彼女専用と思しき一つの天幕にシンゴを連れて入ると、ようやく大きな息を吐き、毒づいた。


「ったく、しょうが無い連中ね。あたしはこれでも身持ちが堅い方なんだ」

「ははは、気にするな。噂もされなくなる方が怖いぞ。おや、お客人かね」


 天幕の中で彼女を迎えたのは、初老と言って良い年齢の男だった。

 線の細い学者のような雰囲気で、足を悪くしているのか、杖にしがみつくようにして、椅子からよろよろと立ち上がろうとしていた。

 その男にカーラが優しく言った。


「いいから、無理をしないで座っていなさい」

「いや、それではお前が連れてきた客に失礼だろう」

「ええと、お気遣いなく」


 シンゴとしても、そう言わざるを得ない。

 男は、すまなそうにして、再び椅子に座った。


「では失礼して。見ての通り、立つこともおぼつかない体なので、せっかく来て頂いても何のおもてなしもできず申し訳無いが、ゆっくりしていってくれ」

「はあ」


 この男とカーラの関係が理解できず、シンゴは曖昧に返答するしかなかった。


「先に紹介しておくわね。こちらはシンゴ。ローセンダールのティアンスン伯爵よ」


 本来の礼儀としては、ローセンダールからの、しかも伯爵と言う身分の高貴な客人であるシンゴに、セレにおける身内と思われる男を紹介するのが先であろう。

 だが、驚きと非難の表情を向ける男に、カーラは続けて言った。


「そして、あたしと同じところから来た、言ってみれば同類ね」


 男は、それまでとは異なる驚愕の表情を浮かべ、カーラとシンゴをかわるがわる見つめていた。


「ふうむ。言われてみれば、顔立ちはともかく、何となく気配に通じるものがあるかな」


 そう呟くように言うと、椅子に座したままではあったが、男は誠意を感じさせる態度でシンゴに一礼した。


「セレで軍部付きの文官を拝命しているコンドラートと言う」

「ええと、シンゴです。本名は九之……」


 シンゴも軽く頭を下げて、本名を名乗ろうとしたが、コンドラートはそれを遮った。


「みだりに、この世界の人間に本名を告げてはいかん。相手次第では取り返しのつかない事になる」

「はい?」


 いきなり、そんな事を言われてシンゴはきょとんとしてしまった。


「セレには、異世界から呼ばれた精霊が術者に真名を知られて永遠に虜囚になった伝承があるのよ。他の国での名乗りに関する由来でもあるわ。コンドラートは元々そういった方面を研究している学者だったの」


 カーラの説明の後半部分に、コンドラートはかぶりを振った。


「いや、研究とか学者などと言うほどのものでもないさ。ただの講師が仕事の合間に、趣味で色々と調べただけの話だ」

「何いってるのよ。セレ魔導学院と言えば王国の名を冠した最高峰じゃない。そこの講師だったんだから、もっと誇っていいはずだわ」


 カーラはそう言うと、不意に悲しそうな表情になった。


「なのに、私の為に魔力もその地位も無くしてしまって……」

「その代わりに、こんな素晴らしい妻を得られたのだ。『対価』を支払うに見合った取引だったと思うよ」


 コンドラートという人物の素性はわかったものの、全体の状況がさっぱり飲み込めないでいたシンゴだったが、その発言には、目を見張った。


「つ、妻?」

「そうよ。このシブいおじ様が、あたしの旦那ってこと」


 カーラは嬉しそうな笑顔と共に、コンドラートの首筋に抱きついた。

 自分の娘と言って良い年齢の彼女にそんな事をされた初老の男は、き然とした表情の中に、照れを主成分とする各種の感情を無理矢理抑え込んでいるように見えた。



         ◇



 天幕の中にあるもう一つの椅子に、シンゴがようやく腰を落ち着けると、初老の男がシンゴに対して最初に詫びを申し入れた。


「実情はともあれ、ローセンダールの貴族たる客人を立たせたままであった非礼は許して欲しい」

「あー、いえいえ、貴族っていっても、成り行きでそうなったみたいなもんですから」

「ティアンスン伯。ローセンダールにとっても、切り札とも言える家門だが、カーラと同じ世界から来た勇者となれば、うなずける話だ」

「ええと、それで、そのう、カーラさんはどんな感じでこの世界に?」

「そうね。色々あるから、最初から話すわね」


 二人の横で、天幕の奥から持ってきたティーセット一式で手ずからお茶の用意をしながら、金森薫こと、セレ女将軍カーラが説明を始めた。


「えーと、あたしは、あっちの世界で『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』の制作に携わっていたの」

「ええ!? じゃあ、ネクサス・コミュニケーションの?」

「ああ、それ、ユーザ募集と課金代行やヘルプデスクだけやっている会社よ。実体はカーソリスの独立した部局らしいけど、詳しい事はよくわからないわ。かく言うあたしのところも、あのゲームには部分的にしか関わっていないから」

「カーソリス?」


 シンゴはあまり馴染のない名前を聞いて首を傾げた。

 紅茶を満たしたカップを彼の前に置きながら、カーラが言った。


「一般には知られていないけど、業界じゃ有名なグローバル企業よ。最近のIT技術におけるキーテクノロジーの大半は、実はカーソリスがパテントを押さえているとも噂されているわ。米国じゃ国防省だかNSAだかの御用達もやっているとも言われているし。まぁ、そんな企業が、例え、独立した部局であっても、何で日本国内向けのオンラインゲームなんかに手を出していたのかは、私もよくわからないけどね」

「はあ」


 そのゲームの一般ユーザに過ぎないシンゴにとって、それは初めて聞く事実ではあったものの、言ってみれば、それだけの話であった。

 だが、続けて彼女の口から出た話には、瞠目せざるをえなかった。


「あくまでも、噂……というか、これは、あたしといっしょに仕事をしていた相方がアングラなネットから拾ってきた話なんだけど、カーソリスは異次元だか、異空間だかに関わる何かの理論を模索していた形跡があるらしいの」

「え? じゃ、まさか」

「出所も怪しい情報に過ぎないけど、あたしたちの今の状況を鑑みるに、まるきりのデマとも言い難いわね。ただ、今のところ、どうしようも無い話ではあるけれど」


 カーラは肩を竦めて見せた。


「ま、そういう話もあったし、どこか微妙におかしな依頼が多かったのよね。ちょうど、カーソリスの依頼を片付けた後の仕事が契約の事情で延期になって暇してたんで、色々と調べてみる事にしたわけ。手始めに、このゲームのユーザが何か関係するかと思って、さっき言った相方に全プレイヤーの個人情報を探らせてみたんだけど」


 あちらの世界では立派な犯罪行為なのだが、彼女の口調には罪悪感のひとかけらも無かった。


「そうしたら、ユーザの中に身近な人間の親戚がいるじゃない。驚いたわよ」

「親戚?」

「課長……九之池充さんは、あなたの叔父さんでしょ」


 シンゴは驚きに目を見張った。

 九之池充は母親の歳の離れた弟、つまり、まさしく叔父であって、『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』と言うゲームの存在を教えてくれた人物でもある。


「充兄さんの知り合いって事ですか?」

「ああ、十歳も違わないからおじさんとは呼んでないか。ええ、あたしは充さんの部下ってことになるのかしらね」


 叔父の為人ひととなりを知るシンゴは、彼女の口調からなんとなく人間関係に予想がついて、同情の念と共に小さな息を吐いた。


(充兄さん、どちらかというと押しの弱いところがあるからなぁ。この手の女性が部下についたんじゃ苦労してたかも)


 シンゴとしては、叔父の近況も気になるところではあるが、それよりも優先して確認すべき事があった。


「それで、かお……いえ、カーラさんは、どうやってこの世界に? 俺はゲームの合間にパソコンの画面に表示された、多分、この世界の映像をクリックしたらアバターやらBMRのデータごと転移したみたいなんですけど」


 シンゴは、この異世界ファーラに転移した時の状況を説明し、画面に表示された映像が、あるいは次元の裂け目だか、元の世界とこのファーラを繋ぐ通路のようなものではないかと言う自分の推論を話した。

 黙って一部始終を聞いていたカーラは、一つうなずいた。


「うん、経緯としてはあたしも似たようなもんかな」


 彼女も『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』のゲーム世界に参加している時に転移した、と語り始めた。


「本当は監視モニター用の画面で、あのゲームのあれこれを調べたかったんだけどね」


 彼女の相方が言うには、当の本人がCUI環境でのコマンド操作を含むオペレーションをこなす分にはともかく、監視モニターでのアクセスはセキュリティ上の制約で色々と問題が多いとの事だった。

 この、先ほどから会話に出てくる、彼女の相方と言う人物は、相当に優れたシステムエンジニア、もしくはハッカーのようだ。

 しかし、技術はともかく、この手の調査には不向きと言うのが、カーラの言い分だった。


「何て言うか、勘所がずれてるのよね。しょうが無いから、そいつにアクセス権限を高めたテスト用の臨時アカウントとアバター、それに偵察特化型のBMRを用意してもらって、ゲームの中から調査してたわけよ。ま、即興で造ったわりには、アバターがあたしそっくりなところが無駄に凝ると言うか、やっぱりずれていると言うべきなんでしょうね」


 その相方なる人物の評価はともかくとして。

 具体的なイメージが掴みづらいが、ゲーム内アバター、及び、BMRを経由する事でプレイヤーを装い、セキュリティ上の課題をクリアした、と言う事だろうか。

 だが、シンゴの興味を引いたのは別の言葉だった。


「偵察特化型?」

「ゲーム内で他のプレイヤーとエンカウントして、そのまま対戦になったら、色々とまずいわけよ。だから、ステルス仕様の汎用機……ええと、《ウジャト》とか言う機体の各種情報収集用機器を強化装備したカスタム機に搭乗するって恰好になったの」


 《ウジャト》は、あの《ナザ》と同世代の最新鋭機で、遠隔攻撃や強化武装に特化した《ナザ》に比べて、隠蔽性と電子戦に特化した機体だった筈だ。

 デザイン系統は著しく異なるが、分類としては《ジョイン》の最新鋭版と言うところだろうか。

 ただし、武装は皆無に近く、遠隔攻撃に特化したスナイパー専用機を補助する、言わばスポッターとしての役割を果たす機体だった筈だ。

 それ以外にも、大戦イベントにおける戦略級誘導兵器のビームライディング機能を搭載した、かなりマニアックな方向性でデザインされているBMRである。


「ただ、あたし、この手のアクション系操作って苦手なのよね。うっかり、デブリ宙域に突入しちゃってさあ。機体の損傷自体は軽微だったけど、当たり所が悪かったって判定になっちゃって。パイロットは重傷でメディカルシステムは故障。もぉ散々だったわ」

「メディカルシステムが? パイロットスーツ常備のあれが故障って、あり得なく無いですか?」

「よくわからないけど、デブリがぶつかった衝撃で、コクピットが破損したもんだからエネルギーが逆流したって事らしいわ。相方も珍しがっていたわよ。一応、事故としての設定にはあるけれど、当たりを引くのは大したもんだって」


 その時の事を思い出したのか、カーラの美しい顔に忌々しそうな表情が浮かぶ。


「頭に来たから、あいつにコーヒーを買いに行かせて、サーバ室で一人ふてくされていたの。そしたら、ディスプレイに前触れも無く、見たことの無い景色が映ったウィンドウが出てきたじゃない。おかしな操作をしたかと焦ったわ」


 彼女曰く、苛つくと指をタップする癖があるそうである。

 おかげで、マウスボタンを誤って押すなどは、結構あるのだが、この時は状況的にまずかったようだ。

 何しろ、人目を避ける為にメンテナンスを口実に会社のサーバ室で無断作業をしていたわけなので、それ以外の操作が履歴に残っていると、そこから痛くもない腹を探られかねない。

 まぁ、探られて困るような事をしでかしているのは事実であったのだが。

 そんなわけで、慌てて閉じようとして、結果として画面をクリックしてしまったようだ、と、小麦色の肌をした娘はぼやくように言った。

 つまり、これが、金森薫と言う娘がこの異世界ファーラに転移した経緯と言う事になる。


「え、そうすると、まずくなかったですか?」


 シンゴは思わず眉をひそめた。

 彼女がシンゴと同様に『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』におけるアバターとして転移したとすれば、重傷判定された状態で、この世界ファーラに顕在化した事にならないだろうか。


「ええ、転移した途端に、死にかけたわよ。いえ、コンドラートが居なかったら、確実に死んでたわね」

「私もびっくりしたよ。人里離れた住まいで、魔法実験の準備をしていたところに、いきなり、あんな巨大なものが現れて、その中から重傷を負った娘が転げ出て来たんだからね」


 それまで黙って二人の会話を聞いていたコンドラートが口を開いた。


「ちょうど準備が整ったところだったのは、さいわいと言えるかな。だが、他に手段はなかったとは言え、彼女は私の魔法研究の実験台になった事になる。そのことは今でもすまないと思っているよ」

「何言ってるの。あなたがああして下さらなければ、今、こうして無事にはいられなかったわ」

「だが、それと引き替えに、あるいは君の人生を縛ってしまう結果になったのではないかと思う事がある。こうして、同じ世界から来た仲間とも会えたと言うのに……」

「何度も言うけど、あたし、若僧には興味ないの。どっちかというと、苦み走った人生経験豊かな方が好みっていうか。だから、あたしは幸せなのよ」

「すまない。だが、君のように若く綺麗な娘と私が釣り合うとは思えなくてね」

「いいわよ。あなたが信じるまで何度でも繰り返し言ってあげるわ。あなたが好きで愛してるって」


 よく分からないが、二人で謝罪と惚気の応酬のような会話が始まったようだった。

 ともあれ、同じ世界から来た小麦色の肌をした娘から、眼中に無い旨を宣言された事実に何となく傷つきながら、シンゴは疑問に思った事を口にした。


「あのー、実験てのは?」


 コンドラートは、照れを隠すようにひとつ咳払いすると、その疑問に答えた。


「私は伝承の中から、巫女に依らずして神々と取引する魔導技術を研究していたのだよ」

「巫女に依らず?」

「そうだ。この東大陸におわす神々は『対価』さえ支払えば貴賤にかかわらず、その恩寵を与えたもう。故に、神々の元では全ての人々は平等であると盟約に謳われている。だが、実際には、神々との取引には巫女体質の人材を必要とする。その巫女の大半を擁する神殿関係者が決して公平であるとは、私は思わない」


 この辺りの事情は、シンゴの世界も同様であろうか。

 神の名の元に愛と平等を説く人々が、その権威を背景に、自己の欲しいまま振る舞う事例は、どちらの世界でも珍しい話では無いようだ。

 そのような社会学的、あるいは神学的な議論はさておくとして、巫女を介さずに神々なる存在とアクセスできる魔導技術と言うのは、この世界ファーラにおいては結構おおごとではないだろうか。


(ええと。話の経緯から、コンドラートさんは巫女でも無いのに、神々にカーラさんの治癒を祈願して、それが成功したから彼女は無事でいるって事だよな)


 魔法と言う超常的な力や、神々という超越的な存在が顕現する、この異世界ファーラであるが、しかし、その恩恵を受けるにはいくつかの制約がある。

 魔法を行使するには相応の魔力が必要だし、神々に祈願するには巫女が居なければ話にならない。

 シンゴの世界でも、情報弱者はIT技術の恩恵にあずかれず、名医にかかり十分な治療を受けるには相応の経済力を必要とするわけなので、その意味では、双方とも同じと言えるかもしれない。

 剣と魔法のファンタジー世界と言えども、決してユートピアでは無いと言う事だろうか。

 だが、巫女と言う存在無しに神々の恩寵を賜る事ができれば、あるいは、救われる人々は増えるかもしれない。


(うん、あのケントだって、その魔導技術があれば助かったかもしれないな)


 あの時、ローセンダールの宮廷魔導士が側に居たと言うのに、何もできないままケントを死なせてしまった。

 この世界の魔法体系に治癒系のそれが存在しなかったゆえではあるが、コンドラートの研究は、あるいは、治癒魔法として、この世界に新たな可能性を示すかもしれない。

 しかし、コンドラートが口にした言葉は、シンゴのその考えを否定するものだった。


「確かに神々との取引は成り、カーラを救う事はできた。だが、告知を司るフレア神は、このような取引は盟約に反するとして、二度とは無い旨を宣言した。そして、裁定の神ナスルは『対価』として私の魔力全てを召し上げてしまった」

「それでも足りないと言って。コンドラートの足が不自由なのもナスルが奪ったからだわ」


 カーラが憤然とした表情で叫ぶように言った。


「まぁ、ある意味、ルール違反をした報いと言えるから、それは仕方が無いと思っているよ。本来縁者でも無い私が、彼女の為の『対価』を支払う事が認められたのは感謝すべきなんだろうね。ただ、盟約の辻褄を合わせる為に、彼女に、私の縁者たる事を強いたのは納得しがたいところだが」

「あら。あたし、そこのとこだけは感謝してるんだけど」


 つまり、コンドラートが『対価』を支払う事を認める代わりに、後付けでカーラを彼の縁者とすることを強制した、と、そう言う事のようだった。

 なお、カーラがコンドラートの縁者たることを拒否した瞬間、この取引は無効となると神々は告げたという。


「ええと、無効って?」

「あたしが死にかけの状態に戻るって事よ。その場合でもコンドラートの支払った『対価』は返さないってんだから、結構えげつない真似だと思わない?」


 それを聞いた瞬間、シンゴは、この世界の神々に抱いていた印象が幻滅するのを感じた。

 だが、コンドラートの見解は少し異なるようだった。


「私には、それは神々の救いであるように思えるのだがね」

「どういうことですか?」

「こんな言い方をして良いものかはわからないが、この事でカーラには、ひとつの制約と言うか、枷が課された事になる」

「何度も言うけど、あたしはあなたとの関係を枷だなんて……」

「ああ、わかっているよ。だが、個人的な感想や感情は置くとして、私の考え……いや、直感を言わせてもらえば、だ。この枷が無かったら、君が君でいられたかどうか、危ういものだと思うよ」


 意味がわからずに、小麦色の肌をした娘は首を傾げた。

 おなじように首を傾げるシンゴに向かって、コンドラートは言った。


「彼女と同じ世界からやってきた君に確認したいのだが。いや、確認するまでもないか。ティアンスン伯の家門を与えられた事実が証明している事でもあるしな」


 初老の元魔導学者は少し考え込むと、改めてこう尋ねてきた。


「カーラは現在、セレの女将軍だ。この王国に突然に現れた、出自も家柄も明らかで無い娘が、さほど長くも無い期間のうちにその地位についたのは何故だと思うかね」


 唐突にそんな事を問われ、咄嗟に言葉に詰まるシンゴに、コンドラートはあっさりその答えを言った。


「強かったからさ。それも並大抵の強さじゃない。尚武の国と謳われたセレ王国の名だたる武人が、揃いも揃って素手の彼女に叩き伏せられたんだ」

「んもう、何てこと言い出すのよ」


 カーラは真っ赤になって抗議の声を上げた。

 コンドラートは、穏やかに笑って、その口調にからかうような成分を滲ませた。


「単なる事実さ。魔装機甲兵でも持ち出さなければ、君を御する事はできないともっぱらの評判だぞ」

「いくら何でも、あんな巨大なシロモノ相手じゃ、あたしだって素手じゃ何もできないわよ」

「まぁ、究極の魔導兵器は別として、だ。君はこの世界では、ほぼ無敵と言えるほどの強靱な身体能力を持っている。それはシンゴ殿も同じではないかな」


 その魔装機甲兵を生身で撃退したシンゴだが、話がおかしな方向にズレそうだし、ビームガンの類いを使わず、徒手空拳でそれができたかと言われれば、さすがに否定せざるを得ないので黙ってうなずいた。

 シンゴの場合、パイロット属性にポイントを注ぎ込むスタイルを取っていたが、たしかに『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』におけるプレイヤーのアバターは、よくよく考えてみると、デフォルトでも超人的と言えるスペックだったかもしれない。

 例えば、起立姿勢のBMRのコクピットから飛び降りて、あっさりと着地したりしていたが、これはおおよそ三階の窓から飛び降りるに等しい行為であって、通常の人間がこんな真似をすれば、まず無事には済まないだろう。

 あるいは束になって襲いかかるNPCの雑魚キャラ達を蹴散らすと言うベタでお約束なアクションなどは、ゲームなら違和感無いところだが、これもリアルに考えてみると、ただ事ではすまない強さである。

 『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』は、ロボット同士の戦いをメインとするゲームデザインの性質上、メカに関しては詳細にこだわった作り込みがなされているが、そのパイロットであるアバターは、外見デザインや、パイロット属性、生身でのミッションに関わるスキル関連はともかくとして、それ以外の部分は、かなりいい加減と言うか、大雑把に超人化されたデザインと言えるかもしれない。

 そして、シンゴ達プレイヤーは、この異世界ファーラに転移した時、そのアバターの属性をもって顕在化したようなのだ。


「彼女の戦いぶりは、私ですら見ていて背筋が寒くなる時があったよ。どんなにやられても、まるで痛みを感じていないように、平然として立ち上がってくるんだからね」

「痛くないわけじゃないのよ。ただ、気にならないというか、えーと、少し説明しづらいわね」


 カーラが言い訳するような口調になるが、シンゴとしても大いに身に覚えがあるので、そのあたりは充分に理解できる。

 だが、この世界ファーラの人々にとっては、昔にあった映画に出てくるターミネーターと言う殺人ロボットを相手にしているような感覚に近いかもしれない。


「ただ、あなたが『対価』を支払って治してくれたところだけは別。時々、支障が無い程度に痛むんだけど、これだけは妙に実感があるのよね」

「そう。それは神々が君に与えた枷であり、また、救いでもあると私が考えているものでもある。それがなければ、君は自身の苦痛を、ひいては他者の苦痛すらも考慮しなくなってしまうかもしれない。伝説の、戦いに明け暮れる狂戦士のようにね」


 それを聞いて、シンゴは思わず近衛騎士服のカラーに覆われた首筋に手をやった。

 ヘレーネが与え、そして治癒してくれた、この傷痕。

 あるいは、これこそが、あの性格的に豹変してしまったケントというプレイヤーが持たなかったものなのかもしれない。


(う~ん)


 シンゴは、この世界ファーラにおける、自身のありようをもう少し考えてみるべきか、とも思ったが、しかし、元の世界であっても、特に意識する事は無いだけで、そうした疑問に明確な答えはなかったような気がする。

 デカルトとかいう哲学者が「我思う、故に我有り」と言う言葉を残しているようだが、そもそもが歴史に残る偉人が頭を悩ませていた深遠な命題に、異世界トリップなどと言うおまけがついて、更にゲームデータの実在化と言う、斜め上になった状況が現在のシンゴ達の立場である。

 凡人が考えるだけ無駄と言うものではなかろうか。

 ただ、唯一言える事は、この異世界ファーラには、他にも『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』のプレイヤーが来ている可能性がある事は確かだろう。

 そして、それらのプレイヤーがまともな精神状況であるか否か、と言う事も考慮すべきだろうか。

 いちどきに考える事が増えて、知恵熱が出そうだったので、シンゴはそれらを後回しにする事に決めた。

 そして、もっとも興味のある事柄に関してだけ口にすることにした。


「それで、カーラさんの乗機……《ウジャト》はどうしたんですか?」


 話の流れも空気も読まない唐突な質問に、カーラは目をぱちくりさせたが、直ぐに肩を竦めて答えた。


「さっきも言ったように損傷は軽微らしいんだけど、あたしじゃ直しようが無いし、セレの、いえ、この世界ファーラの人々も手が出せないんで、そのままよ。もっとも、もう、あたしには不要なものなんで、部品取りに欲しければあげるわ」


 彼女はそう言って、腰の物入れのようなところから何かを取り出すと、あっさりと差し出した。

 それは、BMRの譲渡に使われるマスターキー情報を納めたチップだった。


「核融合エンジンなんて物騒なものを積んでるから、念の為、ロックかけていたのよ。処分に困っていたんで、引き取ってくれるなら助かるわ」


 最新鋭のBMRが、まるで超特大の粗大ゴミ扱いである。


「ええと、俺、《ガリア》とグレート・ストレージを持ってるんで、ひょっとしたら《ウジャト》も直せると思うんですが」

「ん~、あれ、最新鋭の機体よ。あなた、旧式の機体しか持ってない筈でしょ。使えるパーツがあるのかしら?」


 個人データで九之池慎吾のユーザ情報を見つけた時点では、あの研究所ミッションは遭遇前だったようだ。


「いえ、この世界にくる直前に実験用試作型を入手しまして。それで、ついでにパーツを新しく購入……」

「実験用試作型!? ひょっとして、XA‐0100を手に入れたの?」


 カーラは目を丸くして驚いた表情になったが、シンゴはもっと驚いた。


「あの機体を知ってるんですか?」

「知ってるも何も……偶然て怖いわね。あたしが、言うなれば最後に手がけた仕事が、あの機体の入手イベントなのよ」

「ええええ!?」


 シンゴは、今度こそ驚きの叫びを上げずにはいられなかった。


「まさか、もうネーミング設定しちゃったんじゃないでしょうね」

「いえ、あいつ、最近になって顕在化したんで、その辺りの初期設定はまだなんですが」


 初期設定も済んでいないうちに召喚しようとして、ハングアップ状況となっている事を説明する。


「あらま、無茶するわね。まぁ、機体コクピットから再起動すれば済む話だけど」


 呆れた声を出すカーラの視線に、シンゴは思わず小さくなった。


「まあ、いいわ。あのね、実験用試作型は正しいネーミング設定を行わないと本来の性能を……」


 そこまで言いかけて、カーラは不意に何かを考え込む様子になった。


「えーと、つまり、最後の仕事が無駄にならなくなった、かな」

「はい?」


 きょとんとするシンゴに、カーラは悪戯っぽい笑みを向けた。


「《ウジャト》のメモリにドキュメントが残ってるわ。XA‐0100の本来の性能を引き出したかったら、そこの謎解きに挑戦してちょうだいね」


 そこで、シンゴは初めて、実験用試作型に関わる隠しイベントなるものを知らされたのだった。


「ひでぇ。知らされなきゃ、わかりっこないですよ、それ」

「うんうん、そうよねぇ」


 くすくす笑うカーラに、シンゴは口を尖らせて不満げな表情をつくった。


「意地悪しないで、教えて下さいよ」

「ふふん。降参したら教えてあげるわ」

「降参……て?」

「そうねぇ。メイド服でも着てもらおうかしら」

「ちょ……」


 シンゴにはそんな趣味は皆無であったし、九之池慎吾本来の容姿でも、それとは大差無い現在のアバターでも、そんな格好をしたら爆笑必至であろう。

 だが、笑ってはいるが、カーラの目付きはネズミをいたぶっている猫のようだった。


(やれやれ)


 シンゴは、カーラの説得を諦めた。

 ともあれ、あの機体につけようと検討していた(格好いい筈の)ネーミング候補は全て却下する必要があるらしかった。

 そして、メイド服の格好をしない為にも、謎解きにチャレンジしなければならないと言う事も理解した。

 カーラ……金森薫と言う女性が、基本的にSのような性格だと言う事も。

 何とか取りなしてほしいと言う思いでコンドラートを見るが、初老の男はシンゴのアイコンタクトに苦笑いと共にかぶりを振って見せた。

 BMRに関する会話の内容は理解できていないにせよ、カーラの性格はよくわかっているようだ。


(本当に、充兄さん、苦労したんだろうなぁ)


 しみじみとそう思いながら、内心でため息をつく。

 ともあれ、XA‐0100も《ウジャト》も、そして《ジョイン》もそうだが、この会議に区切りがついたら、面倒を見ないといけないBMRが増えた事は間違い無い。

 もっとも、増えれば良いと言うものでも無い。

 偵察に特化した《ウジャト》……厳密にはカスタム機なので《ウジャト改》と呼ぶべきだろうが、これは使いどころが難しいスペックなので、下手をすると死蔵する事にもなりそうである。

 《ジョイン》も、その特徴とも言うべきステルス機能は、この世界でどの程度通用するものかは未知数だ。

 レーダーを始めとするBMRの各種センサーには確かに有効だったが、何しろこの世界には魔法がある。

 シンゴは、隠し撮りを宮廷魔導士に勘づかれた時の事を思い出していた。

 プローブの存在自体には気づかなかったようだが、全く別の側面から察知したわけで、条件次第と言う事はあるにせよ、油断はできない。


(それに、もし、有効だとしたら、あれほど傷だらけにはならないよなぁ)


 もっとも、ケントがどのように《ジョイン》を運用していたかがわからないので、これは機体の整備やら何やらが終わった後に、模擬戦でもやって確認しなければならないだろう。

 もし、ステルス機能が魔装機甲兵相手には無効だった場合、《ジョイン》の存在意義はデフォルト装備の《グランブール》の強化版と言う位置づけでしかない。

 同じ系統の機体ではあるが、規格や出力の相違から《グランブール》のオプション装備は使えない筈なので、使い勝手の面からはこれも微妙に扱いの難しい機体となる。

 そもそも兵器と言うものは、種類を集めれば良いと言うものでは無い。

 選択肢が増えると言うメリットは認めるが、運用できなければ意味が無い。

 『ウォー・アンド・ビルド・オンライン』でもBMRのコレクションに走るプレイヤーはいたが、とっかえひっかえしたせいで、個々の性能を引き出しているとは言い難いところがあった。

 千手を知る者よりも、一手に長けた者を恐れよとは拳法の達人の言葉だったか。


(あー、いや、そんな場合じゃないか)


 シンゴは、いったん、(珍しくも)BMR関連の事を頭から追い払った。

 そして、カーラに聞いてみる。


「元の世界に戻るとかは考えないんですか?」

「旦那と別れるつもりは無いわよ」


 カーラは数瞬も躊躇することなく即答した。

 それを聞いたコンドラートの顔に感動の表情が浮かぶ。


「カーソリス云々の話はともかく、そもそも、どういう理屈でこの世界に来たのか分からないしね。まぁ、女将軍なんて柄じゃ無いけど、レディースの頭張ってた頃より、やり甲斐があるのは確かだわ」


 何気にどのような青春時代を送っていたかを告白したカーラは、続けてこれで幾度目かの、シンゴを驚かせるセリフを口にした。


「それに、魔装機甲兵を操るのも中々に面白いしね」

「カ、カーラさん、魔装機甲兵を動かせるんですか?」


 シンゴも以前に《ルーヴ》を借りて試した事があるが、魔導機関が全くの無反応だった。

 異世界から来た彼には、やはり魔力が無い、もしくは一定量に満たないと言う結論になったので諦めた経緯がある。


「ん~、ちょっと裏技があってね」


 カーラは悪戯っぽく笑うと、左手の薬指に填められた指輪をかざして見せた。

 結婚指輪にしては、いささかに無骨なデザインである。


「魔力の無い者に魔法を使わせるにはどうするか、と言うのも私の研究のひとつでね」


 コンドラートが説明してくる。

 どうも、この魔導学者は、神々との取引、そして魔法という、この世界ファーラにおける恩恵を全ての人々に平等に与える事に生涯を費やしていた人物のようだ。

 カーラこと金森薫が惹かれたのもその辺りにあるのかもしれない。

 もっとも、それで綺麗な若妻を得たと言う事は、ある種、極めて不平等な結果と言えなくも無い。

 それはともかく。

 カーラの示した指輪は、魔力を吸引、蓄積し、指輪の持ち主が使えるようにする魔道具だと、コンドラートは説明した。


「魔装機甲兵を動かすのにそんなに魔力は使わないから、一回の充電で結構持つのよね」


 彼女にかかれば、この世界における究極の魔導兵器も、携帯電話かスマートフォン扱いである。


「ただ、欠点として相性問題があってね」


 少し困ったような表情を浮かべたコンドラートが言う。


「吸引という表現は問題があるので、分けてもらうと言い直そうか。その分けてもらえる相手は誰でも良いと言うわけでは無いんだよ。少なくとも、セレには妥当な人間がいないかな。それに同性も駄目だな。一番厄介なのは、一度分けてもらうと、その相手には二度と反応しないと言うところだな。改良の余地は大いにあるんだが、今のところは、そこまでが精一杯だ」

「でも、それが可能な相手がある一定距離まで近づくと教えてくれるから、今まであまり困った事はないんだけどね」

「ただ、魔力を奪うと言う事にもなるので、いずれ回復するにせよ、若くて体力のある人間で無いと難しいかな」


 シンゴは二人の説明を頭の中で整理して、その内容を口にした。


「つまり、カーラさんは異国の若い男を取っ替え引っ替え連れ込んで、たっぷり吸い取った後は二度と会わない……」


 シンゴはカーラの表情に気がついて、思わず口をつぐんだ。

 間違ってはいないはずだが、表現の仕方に大いに問題があったようだ。

 一方のコンドラートは、苦笑するだけだった。


「いちおう、事情は話して、謝礼は払ってるわよ」


 カーラは殺意にも似た視線でシンゴを睨みながら、押し殺すような声でそれだけを言った。


「ハイ、スミマセン」


 シンゴは自分の失敗を悟りながら、今日のところはこの辺りで退散しようと思った。

 他のプレイヤーがこの世界に来ている可能性など、色々と語り合いたい事は多かったが、コンドラートが宥めてくれるまで、まともな会話になりそうも無い。

 結構な時間を話し込んでしまったので、ローセンダールの方でも心配しているかもしれない。

 ともあれ、実験用試作型の重要な情報や、使えるかどうかはさておき、新たなBMRが手に入ったのだ。

 なによりも、これでセレの上級武官とコネクションが出来たとも言える。

 シンゴにとっても、ローセンダールにとっても大きな収穫だろう。

 爵位を賜った身ではあるが、じつのところ、シンゴとしてはローセンダールへの忠誠などの意識は皆無に等しい。

 しかし、ライル個人に対しては約束をご破算にしてしまった負い目を感じていたので、少しでもその穴埋めができれば、と会議に参加したところ、思いもよらぬ出会いがあったわけだ。

 少しは、真面目に伯爵してみるのも良いかもしれない。

 そう考えながら、ふくれっ面でそっぽを向くカーラはさておき、コンドラートに辞去の挨拶をしようと、腰を浮かした時である。

 彼の感覚が、凄まじい、異様とも言える気配を察知した。

 次の瞬間、セレに陣地内に、天幕の中からでもわかる眩いばかりの輝きが現れたようだった。


「な、何だ?」

「こ、これは?」


 コンドラートも息を呑み、カーラも呆然としたようだ。

 シンゴは素早く天幕を飛び出し、そして、「それ」を見た。


 会議場となっている一帯は結界が張られており、その中で各国の陣地が個別に防御結界を張っている。

 その二重の結界を引き裂くように、セレの陣地に巨大な魔法陣が出現していた。

 そして、魔法陣の中から闇色の巨人が姿を現す。

 それは、ザミーンの主力にして、重機動型陸戦用の《ノーム》級と呼ばれる魔装機甲兵だった。

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