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アンテイムド・モンキーズ  作者: jonathan
南の国『オキナ』
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封印の宝剣

「太陽祭?」

「おう。年に一度のお祭りらしい。参加していこうぜ!」


 宿屋に帰って来た雄介は、街で手に入れたお面を手に、仲間達に祭りが開催されることを告げた。


「……うーん」

「でも、ねえ……」


 ……この時点で旗色はよろしくない。

 比較的このメンバーはノリが良い方だが、どうしたのか。雄介は首を傾げる。


「ふーん……面白そうだけど……アタシ達は迂闊に出歩けないし……」


 アリッサが表情を曇らせながら言った。雄介はすっかり失念していたが、他の三人は不法侵入者として騎士団から目を付けられていた。

 さすがに見つかるのはまずい。というか面倒だった。


「そうだったな……んじゃ俺だけ楽しんでくるからみんなは留守番ということで……」


 ギロリ、と三人の鋭い目線が向けられた。女性陣からはともかく、ゴンザレスからも睨まれるとは。


「あれ……ダメ?」

「ダメよ」

「ダメだね」

「さっさと街を出るぞい」


 やはりか。

 しかしこの反応は想定の範囲内。


「まあまあまあ! そんなに焦っても良い事ないよ! とりあえずもう一日! もう一日だけこの街に居よう! 明日の朝、祭りの雰囲気だけ楽しんだらすぐに街を出るから!」


 雄介がそう言うと、三人は顔を見合わせ、ゴニョゴニョと話し合いを始めた。


「どうする?」

「んー……まあボクは別に……」

「甘いなソフィア。ユースケはワシらを出し抜く気満々じゃぞ?」


 ……この距離でヒソヒソ話は無理がある。丸聞こえだ。というかゴンザレスが鋭い。


「大丈夫だから! 絶対大丈夫だから!」


 まあ出し抜くんですけども。


 

 


 それから時間は流れた。

 雄介の必死の説得により、今夜もこの町で過ごすことが決まり、現在はあと少しで日付が変わる時間帯。

 そして、イオからだいぶ離れた所に広がる広大な樹林。

 巨木が生え揃うその森には、日中でも光が届くことは無い。妖精の森と似ても似つかない、年中暗闇に包まれたその森に存在する……封印の玉座にて。


「ふぃー、意外と守りが堅かったなぁ。あんだけ大量に術式が仕込んであるとは」


 顔中で光る大量のピアス。オレンジ色の鶏冠のような髪。鋭い三白眼。

 奇抜で異様な空気を体中から放つその男は、目の前の玉座を見つめながら一人呟く。


「どれ……それじゃ早速取りかかるとしますか」


 暗い森の中、その玉座の周囲だけはなぜか明るい。カツカツと音を鳴らしながら白色の石階段を登り、男は奥へと進んでいく。

 そして。


「お……こいつだ」

 

 男が発見したのは台座に突き刺さった一本の剣。


「へぇ……」


 光の差し込まないその森の中ですら、眩いばかりに輝くその剣は、柄尻に太陽の紋章を擁している。


「こいつが『ゾルド』か」


 イオに伝わる宝剣。剣としての切れ味もさることながら、剣自体からも色の濃い魔力が発せられている。

 男は思わず目を奪われた。そして、手が自然に伸びていく。

 男はそのまま柄に手を掛け、引き抜こうとするが、剣はびくともしなかった。物理的に深く刺さっているわけではないが、なにやら特殊な力が働いているようだ。


「チッ、やっぱ無理か」


 早々に剣を引き抜くことを諦め、男は虚空に向けて声を上げた。


「んじゃ、封印の解除頼んだぜ……ノアさんよ」





 翌朝。


「おおー賑わってんね! 良い感じじゃないか!」


 雄介は、楽しげに街を行き交う街の人々、活気付く街を見て、気分を高めていた。絶対に参加したい。

 が……。


「ほれ、雰囲気は堪能したじゃろ? 行くぞ」


 ポケットの中からゴンザレスが声を掛けてくる。両隣ではソフィアとアリッサがしっかりと目を光らせていた。腕まで組む警戒っぷりには雄介も驚いた。

 普段ならばおいしい状況だが、今はまったく嬉しくない。


「あのー……やっぱりちょっとだけ参加……」

「ダメよ。アンタだけ楽しい思いしようったって、そうはいかないんだから」

「でもさ……俺達ここで買い出ししかしてないし……聞き込みとかしたらなんか有益な情報が出てくるかもしれないし……」

「ダーメ」


 困った。思ったよりガードが堅い。

 仲間達もこの旅で雄介について学んだのだろう。この男は自分の欲求を満たすためならどんな行動を起こすかわからない、と。

 こうなってくると、今まで以上にトリッキーなことをやらないと、この三人を振り切ることはできなさそうだ。さて、どうするか。雄介は何食わぬ顔で作戦を練る。


「ユースケ、また何か良からぬことを考えてない?」


 ソフィアが横から顔を覗き込んでくる。

 ……エスパーかお前は。


「なんか悪い事考えてる時の顔になってるよ?」


 あれ、顔に出てた?

 雄介はバツが悪くなり、顔を背ける。


「キャッ! な、なによ! いきなりこっち向かないで!」


 そうだ、反対側にはアリッサが居た。残念ながら逃げ場は少ない。仕方なく雄介は、目を細めながら空を見上げる。燦々と輝く太陽に、澄み渡る青い空。絶好の祭り日和だった。


「ん?」


 しかし、一つおかしなところがあった。雄介は首を傾げながら、口を開く。


「なぁみんな。あれ……」

「なによ。言っておくけど、そんな古典的な手には……」

「え? どれ?」

「ってソフィア!?」


 やっぱりソフィアはアホの子だった。この子相手ならこの状況でも出し抜けるかもしれない。

 しかしそれよりも今は気に掛かることがあった。


「いや、引っ掛けようとかそんなんじゃねえから。見てみろよ、太陽の周り」


 その言葉で、ソフィアとアリッサは太陽に目を向ける。ゴンザレスも密かにポケットから顔を出し、空を見上げていた。


「……なに? あれ……」


 アリッサが怪訝そうな表情でそう呟いた。雄介はそれに答えるように、見たままを口に出す。


「太陽の周りに……モヤみたいなものがかかってるな。しかも、なんか気持ち悪い色の」

「え? そんなの見えないけど」

「うむ」


 どうやらソフィアとゴンザレスには見えていないらしい。

 街の住人にも見えている様子は無い。雄介とアリッサだけに見えているということは、それは……。


「精霊とか、そっちの力絡みか……?」


 なんだか嫌な胸騒ぎを感じた雄介は、顔を顰める。


「この祭り、なんか一波乱ありそうだなぁ」



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