32.優等生たち
面談は順調に進み残りは年少組となった。とはいっても次のカミーは十四歳、再来年には王立学園を受験する年齢である。
「カミーリス、入ります!」
「ほい、わざわざありがとう、まあ座って。面談と言ってもそんなかしこまるようなもんじゃないから気楽に話してくれ」
「わかりました。なにか進路とかそう言うお話らしいですね」
「先のやつから話を聞いているなら早い。来年のことも含めてどうするのか、将来の希望や目標を聞いておきたいんだ」
「そうですね。私はまだ特に考えていることはありません。長男なので家を継ぎますし、小さいですが受け継ぐ領地もあるので、王立学園で経済や地勢を学んで領主になるでしょう」
「なるほど、将来の道筋は決まっているということか。それならそれで目標に向かって邁進してもらえればいいな」
「はい、それにしてもこの学校はすごいですね。今まで家庭教師に教わってきたのはなんだったのかと感じています。私も妹もめきめき上達して父上にも褒められているのですよ」
「そりゃあ良かった。カミーはもともと出来が良かったからな。あまり心配していなかったよ。魔法もだいぶ上達してるだろ?」
「自分でも驚くほどです。家庭教師には才がないと言われたので諦めかけていたのですが、初級ならおおむね使えるようになりました。これもハルマン先生のおかげです」
「キミの努力の結果さ。俺はきっかけを与えたに過ぎない。まあ現段階で問題があるとすれば―― 妹の存在だな」
「ユウリーですか? あの子もゆっくりですが上達はしているはずなのですが…… 私もできる限り様子を見ていますし、受験までにまだ四年もあります」
「そうじゃない。カミーがいつも付きっきりになっているから心配なのさ。おまえさんがいなくなった後はどうなる? 一人になっちまうぞ? それにカミー自体が寂しくて仕方ないなんてことになりかねない」
「ようは妹離れできていない、と?」
「簡単に言えばそうだな。別に突き放せと言っているわけじゃない。そのことを頭に入れて付き合っていかないとどちらもさみしい思いをしてしまうってことさ」
「ユウリーはたぶん大丈夫でしょうね。ここへ通うようになってからとても楽しそうです。歳の近いリュノもいますし」
「となるとやはり問題はカミー、おまえだな。来年もう一年通うのかどうかを含めて良く考えるべきだろう。おそらく今のまま来年は独学で磨いていけば王立学園には受かるだろう。その分、学問に集中するのもアリだ」
「いいえ、勉強は家でできますから問題ありません。それよりも来年もこちらへ通いたいと考えております。それは妹のことが無くてもそうしたいのです」
「それはうれしいね。ちなみになぜなのか聞いていいかな?」
「指導方針が自分にあっていると感じるからでしょうか。基礎の細かいところからじっくりと進めていただけるのは正直助かりました。理論や基礎がわからないまま覚えてきたので日々新たな発見があります」
「やはり家庭教師はそう言うものなのかね。俺は経験がないからわからないが、どうも即戦力な生徒を求めている節があるもんなあ」
「即戦力―― 確かにそうかもしれません。これくらいはできて当たり前から始まって、できるまで同じことの繰り返しでしたから」
「じゃあ引き続き基礎固めでもなんでもやっていきたいってことだな。今度からダンスも始めるし、楽しく過ごせるよう精いっぱいサポートするから安心してくれ。キミも悩みや壁ができたら気軽に相談してくれよな」
「はい! 次はリュノですか? 残り二人とも廊下まで来ていますから、交代してきますね。では失礼いたします」
「うん、よろしく」
そう言った会話内科のうちに扉を開けてリュノが飛び込んできた。どうにも聞き耳を立てていたような雰囲気である。
「こらあ、リュノ、盗み聴きは行儀がよくないぞ?」
「あははあ、ごめんなさい。でも気になってしまうのですよ」
「それじゃあ始めようか。まずは――」
「ええっと、リューはSランク冒険者になってギルドマスターになるのです!」
「おっと、早いな。それが目標か。大きく出たなあ。どうだ? 実現可能だと思うか?」
「お父さんだってAランクになれたんだもの。リューならもっと行けるはず。だから目標はSランクなのです」
「よしよし、その意気だ。ちなみに悩みとか行き詰まりとかそう言う困ったことはあるか? なんでも相談してくれ」
「うーん、特にはないですが武器があってないような気はするのです。ちょっと重いかなあとか」
「短めなんだけどまだ重いか。それなら強度は下がるけど細めのものにしてみるか。リュノの素早さが行かせるようできれば長いものが使いたいからな。何本か見繕っておくから数日待っててくれ」
「ありがとうなのです。やっぱり先生は頼りになります。ちょっとだけ女の子に甘いですけどそれもまたうれしいのですよ」
「なんだって!? 俺が女の子に甘い? みんな同じようにしてるつもりだけどなあ。男連中にはえこひいきしてるとか言われてるのか?」
「そんなことは無いのですけど、女の子の体力に合わせて軽めに終わらせることが多いのですよ。だから男の子は力が有り余ってるみたい」
「なんだ、結構へばったと思ったらフリだったか。じゃあもっとしごいても平気だな。こりゃ次の実技が楽しみだ」
「リューったらやってしまったのです……」
「よし、それじゃリュノはおしまいだ。最後にユウを呼んできてくれ」
「はーい。ありがとうございました!」
本当にリュノはいい子だ。あの熊のような大男、ギルドマスターの娘だなんてとても信じられない。そもそも結婚して子供がいたことも知らなかった。
確か今は四十代後半のはず。きっと遅めの子だったからかわいがっているんだろうなあ、なんて考えている間もなくリュノと交代でユウが入ってきた。




