表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/3

3

1年ほどあいてしまいましたが、お付き合いいただければ幸いです。

香菜子とは職場で出会い、彼女からのアプローチもあり交際に発展した。正直、あまり恋愛や結婚に向いていない性格と自負していたのもあり、数カ月くらいで愛想尽かされると思っていた。香菜子と付き合い始めて数ヶ月たった頃、俺と付き合ってることを知らない出入り業者の男に香菜子が言い寄られてるところに出くわした。始めは愛想笑いでやり過ごしていたが、あまりにも食い下がる相手に「何度もお伝えしてますが、お付き合いしてる方がいるので無理です」と温度のない声色で答えていた。彼女は普段、俺の前でも職場でもニコニコと愛想が良く、怒っているところを見たことがなかった。この出来事が俺にとって、感情的な彼女の一面に意外性を感じるとともに、香菜子をとても魅力的で手放したくない女性と思うきっかけになった。

香菜子と過ごす日々はとても平穏で、気まずくなることはあっても大きな喧嘩をすることもなく、温もりのある時間だった。これが家庭を築いても続いていくと確信できたから、彼女へプロポーズをした。

結婚して数年、愛娘の実里が生まれた。

結婚当初から家事の殆どを香菜子が担ってくれていたが、娘が生まれてからもそれは変わらなかった。時々、夜遅く帰宅すると洗濯物がそのままで、娘と一緒に寝落ちしている様子すら愛おしかった。香菜子は料理も上手かった。「家庭料理しかできなくて、あまり凝ったものとかできないんだ」と言っていたが、料理が全くできない俺にとって、家に帰ったら何も言わず食事が出てくるだけでありがたかった。実里の保育園が決まり、仕事をしたいと相談された時、これまで以上に忙しく動き回る彼女を想像して本当は止めたかったが、安月給な自分が否めなかったのも事実だった。仕事を始めてからも家事や娘のことの殆どを香菜子がしていた。時々、手伝うことはあったが、普段していないと勝手も分からず、迷惑とは言われないものの「しなくていいよ、置いといて」と制されることも多々あった。「何か手伝おうか」と声をかけても、「大丈夫だよ」と断られることに甘えた。

少しずつ香菜子の中で何かが変化していることにすら気づかなかった。

実里が生まれてからも、頻度は多くないものの彼女を求めることは続いていた。子供を産んで体型崩れを恥ずかしがる様子すら可愛らしく、より丁寧に愛しさを込めて触れるようになった。香菜子も応えてくれていることで、夫婦の愛情がより深まっていっていると思っていた矢先、香菜子から断られることが増えた。「気分じゃなくて」「疲れてて」ごめんね、と言われたらそれ以上無理に誘えなくなった。セックスレスの期間が1年ほどになった頃、香菜子から離婚を切り出された。最初こそ驚いたが、どこか腑に落ちている自分もいた。

話し合いの中で本当の理由を知りたいと、香菜子の言葉を慎重に聞き取った。けれど「わがまま」と曖昧な言葉を言い続ける彼女は頑なだった。結局、彼女が何に疲れてしまったのか、それがどうしてわがままだったのかは理解できなかった。ただ、話し合いをするたびに疲弊していく香菜子を、離婚を承諾することでしか解放できないと思うようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ