表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIホラー劇場  作者: gramgram


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/29

これは私の知人、Mさんが大学生の頃に体験した話です。


Mさんは都内の大学に通っていましたが、ある春の夜、サークルの飲み会の帰り道に、少し酔い覚ましをしようと近所の大きな公園に立ち寄りました。

そこは桜の名所として知られていましたが、平日の深夜ということもあり、人影は全くありませんでした。


満開の桜が街灯に照らされ、まるで昼間のような明るさだったそうです。

Mさんは、ふと一本の大きなソメイヨシノの前に足が止まりました。


「綺麗だな」


そう思った瞬間でした。

風もないのに、どっと花びらが舞い落ち、視界が真っ白に染まりました。

ふと気づくと、周囲の音が完全に消えていました。

遠くを走る車の騒音も、木々のざわめきも、自分の足音さえも。


Mさんは怖くなり、公園の出口に向かって歩き出しました。

ところが、歩いても歩いても出口が見えません。

いつもなら数分で通り抜けられるはずの広場が、どこまで行っても桜、桜、桜。


(おかしい。さっきから同じ場所を回っているんじゃないか?)


焦ったMさんの目に、あるものが飛び込んできました。

一本の低い枝に、見覚えのあるキーホルダーがぶら下がっているのです。

それは、さっきまで自分のバッグについていたはずのものでした。


「いつの間に……」


震える手でそれを取ろうとした、その時。

背後から「くすっ」と、笑い声が聞こえました。


反射的に振り返ると、外灯の下に、スーツ姿の男がうずくまっています。

声をかけようと近づきかけたMさんは、その異様な光景に足を止めました。


男は表情を失ったまま、地面に積もった花びらを両手ですくい上げ、

口に運んでいたのです。指先で掻き集め、押し込んだその口元から、

さらに多くの花弁が、ぶわりと外へ溢れ出ていました。

まるで、喉の奥からせり上がる花びらを、必死で押し戻そうとするかのように。


Mさんは悲鳴も上げず、無我夢中で反対方向へ走り続けました。


どれくらい走ったか分かりませんが、急に視界が暗くなり、パッと

周囲の音が戻ってきました。

気づけば、自分は公園の入り口にある車止めの前に立っていました。


慌てて時計を見ると、公園に入ってから3時間以上も経過していました。

本人にとっては、ものの15分程度の出来事だったといいます。


後日、Mさんはその公園を訪れましたが、男性がいたはずの場所には、

それらしい木も、その形跡も全くなかったそうです。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ