識者②
私は口を開けたまま顔を固まらせて、青年のキレイな顔から視線が外せなくなった。
こんな所で訳が分からない状況なのに、突然登場したこの人物も訳が分からない事を言い出して理解が追いつかない。
新手のジョークだよね? さすがに。
そうであってくれ……。
祈るような気持ちで何か尋ねる事にしたけど、えっと。どこからつっこめばいい?
「えっと……排泄の必要なくてトイレ使ってなかったら、えっと……どうなってるの? あなたの体」
「私は人を模して造られていますが、エネルギーは空気中の成分と体内を循環している特定の物質等で化学反応を起こし生成、肉体に供給を行っています。エネルギーを使用した後に残る物質は更に分解され……」
長くなりそうだな……。
彼の言葉を遮って、確認したい事を口にした。
「えーっと、つまり……。あなた、人間じゃないのね」
「管理者キーが必要です」
遅くない? 言うの遅くない? ドジっ子か!! もうほとんど人間じゃないって分かっちゃったよ!!
でも、この人(?)の攻略法分かったかも!! 聞き出したい事がある時は違う角度から攻めてみようと心の中でこっそり決めた。
早速、試してみよう。
『三百年もトイレ行ってないなら、一体あなた何歳なの?』
って尋ねたら、きっと
『管理者キーが必要です』
って返してくると思うから……うーん。
あ、そーだ。
さっき、ちらと気になってた事を聞いてみよう。
「私……あなたと以前、どこかで会った気がするんだよね。いつだったか、あなた憶えてる? 会ったことある?」
私を見たまま、青年はフリーズしたように動かなくなった。
「お?」
私はどうせ『管理者キーが~』と言われるかもと覚悟していたので何も言わず微動だにしなくなった青年に少しの期待と不安な気持ちから、ごくりと息を呑んだ。
青年はその三秒後くらいに口を開いた。
「十万と九千三百七十八年前に一度、目が合いました」
「嘘でしょ」
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