会いにいく
ご覧いただきありがとうございます。
この回が最期のお話になります。
「トキさん、ハルのことで聞きたいことがあるんですが、少しいいですか?」
彼はハルの護衛をしていたし、もしかしたら今ハルが居る場所が分かるかもしれない。
「少し待ってろ。」
トキさんは少し苦しそうな顔をして、どこかに行ってからしばらくして戻ってきた。
「こっちへ来い。」
静かな部屋に案内される。物は少ないが、壁は大理石でできていて、綺麗だ。
「この部屋はもう使われていないんだ。それはそうと、予定よりも早いが、そろそろ教えてもいい歳だよな。お前に渡す物がある。」
それは、切手ぐらいの大きさの肖像画のようだ。
そこには式典で1度だけ見ることができた王の姿。そして、忘れることができない女王の姿。
そして_______ハルがいた。記憶の中で薄れかけていたハルの姿がはっきりと見えた。
「そうですか」
「知っていたのか」
「いいえ、ですがそうなんじゃないかと思っていました。」
_______ハルが第一王子。
今まで見てきた第一王子の肖像画は悪魔や肥太った豚のように描かれていたから分からなかった。
もう、死んでいる。会うことはできない。
「そうか。ここはハル様の部屋だ。お前がどう使おうが構わない。」
「ハルはどこにいますか」
「ああ、この地図に骨のある場所の印を付けておいた。行きたいなら行け。墓は建てられていないから見つけにくいとは思うがな。」
「ありがとうございます」
「お前が気に病むことはない。仕方なかったんだ。時間が経てば受け止められるようになるさ」
トキさんはバツが悪そうに部屋をあとにした。
俺がハルの母親を殺した。
ふらふらと部屋を見渡す。
もう部屋は片付けられていてハルが生活していた感じはしない。
ハルが生きていたことをもっと感じたくて、ハルの私物を探した。
すると、机の引き出しの中に小さな箱を見つけた。開けてみるとそこには、色とりどりの押し花のしおりが入っていた。ハルらしいや。宝物入れだろうか。
奥を見ると、そこにはブレスレットがあった。偽物だ。
細部の作りが甘い。
俺の渡したブレスレット。
何よりも大切そうにしまわれていた。
「馬鹿だなあ。」
そっとブレスレットと肖像画を胸ポケットにしまう。
隣国との戦争中であったため、戦場にすぐに向かわなければならない。剣を持ち、いつものように敵を斬ろうとした。
しかし、ハルの顔がチラつく。
戦場は一瞬の躊躇いが命取りになる。
剣が胸を目掛けて近づいている。
_______死ぬ。・・・死んでもいいか。
その時、ネックレスが弾き飛び、青白い壁のような光が俺を守った。
「お守りのおまじない」
あれは気休めではなく守護の魔法だったのか。
そうだ。死んでいる場合じゃない。俺にはしなければならないことがある。
それからはいつものように戦った。
戦いが終わり、一息つくと思い出す。
死ぬ時ってあんなにも一瞬なのか。今までのことに思いを馳せることなく、あんなに一瞬で。
ハルもそうだったのだろうか。
さてと、俺がしなければならないこと、しにいこう。
王都に戻り、地図を元にハルに会いにいく。ハルは誰にも弔われることなく森の中にいた。ハルが眠るすぐそばにハルから貰ったあの花を植えて、水をかけた。
「どうぞご安らかに」手を合わせる。
「これでよし!」
俺は携えていた剣で自分の腹を突き刺した。
______________また、会えますように。
真っ赤な花は森の気候の中でも逞しく育ち、何十年後も美しい花びらを誇っていた。
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