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それは偶然ではない。起こるは必然。激動の瞬間は突然に。

黒いローブに光を放つ金の刺繍が入った魔術師が3人、円陣を組んで魔力を放出している。


あたりは暗く、遠くには国境である壁が見えていた。


国境側から見えない小さな丘に隠れて魔法を唱える。



「「「強大きょうだいな炎、灼熱しゃくねつかたまり灰塵かいじんと化す大地! デスメテオ!」」」



3人の足元に複雑に書かれた魔法陣から光が放たれた。


魔法陣は魔力を込めることで使用する魔法の効果を補助するものだ。


立ち居振る舞いが明らかな上級魔術師な彼らが補助として使うということはそれだけ難しい魔法なのだろう。


複数人で同時発動させる魔法は儀式魔法と呼ばれ、2人以上分の魔力からなる強力な魔法を唱える事ができる反面1人のミス、タイミングやイメージの違いで失敗するため難易度は極めて高い。


当然、人数が増えればそれだけ難易度が上がる。


魔術師たちのはるか頭上に火球と呼ぶにはあまりにも大きな火の玉が出現した。


地の底を揺らすような低い音を響かせて国境である壁へと吸い込まれていく。


地を揺らす衝撃しょうげき、耳を突き抜ける轟音ごうおん、目を閉じてなおまぶしい閃光せんこう


広い範囲にクレーターを作り、衝撃波でさらに広く崩れる壁。


破片が飛び散り、そびえ立つ物に等しく刺さる。


クレーターはこの場所が瞬間的に灼熱しゃくねつだった事を表すように、赤黒く溶けて煙を空へ吐いている。



「攻撃、開始ぃぃ!!!」



金や銀に輝く美しいフルプレートアーマーに見を包む、龍の眷族けんぞくとされるハイリザードマンが剣を天にかかげて咆哮ほうこうをあげた。


その鎧は戦闘に向くものではなく、防御に特化した身を護る事に徹した装備だ。


格好を見ただけで身分が高い者であることがわかる。しかし、その顔は明らかにせ、そのうろこは乾燥していた。


命を削るようなハイリザードマンの咆哮ほうこうの後には、凄まじい数の兵が崩れた国境の壁へと突撃して行った。


国同士の戦争が始まったのだ。


小競り合いすらなかった国からの完全な奇襲攻撃。しばらく対応できない事が予想される。


増えすぎた人口は単純に食料を圧迫あっぱくする。


雨がとぼしく干ばつが続き、湖は枯れ川は汚染される。その悪環境は住みづらい街や村が増えることにつながった。


使える水もなく、作物は育たない。物を食べることができないストレスはやがて統治者へと恨みになって襲いかかってくる。


どうすることもできなかった彼らは他国への侵略へとかじを取ることとなった。生き残るため、それしか選択肢を見いだせなかったのだ。



世界の激動の瞬間は、今日この場所から始まってしまった。

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