見回り
眠ったのが朝頃だった。
起きるのが夜になるのも仕方がないだろう。
家を出て固まった筋肉を伸ばすために背伸びをする。
さて、なにをしよう。
正直グレストルが別の場所へ移動したいというだけで、なにも考えていなかった。
確か対策か討伐か現れなければ見回りということだったはずだ。
別に魔物が暴れまわっているわけでもなくウロウロしているわけでもない、見回りしかないな。
大きな松明があちこちに立ててある。火の光だけでも街の中に数本あればそこそこの明かりになる。
魔物が寄ってこなくなったりはしないが、夜目が効かない村人には必要な物だ。
今がどれだけ夜か今起きたばかりの俺にはわからないが、村人たちはまだ畑で作業している。農業も大変だな。
柵の隙間から村の外に出た。
しばらく周りをぐるぐると文字通り見回るか。
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10周ぐらいしただろうか。
何も現れない。そもそもプチプチもいない。
マップでも確認して魔物を指定するが、歩いて5分ほどの距離にある森まで行かないといない。
盛大にお腹が鳴る。そういえば何も食ってない。
眠気が勝って寝てしまったが、腹も減ってるのだ。
焚火を用意して野草の料理をスタートさせた。
肉は依頼の度に手に入れていたプチプチ肉しかない。
金貨も手に入れたからそろそろ贅沢するべきなのかもしれない。
今度街に戻ったら住む人の迷惑にならないようにいくらか手に入れよう。
「飯か? 一緒に食おう。おーいみんな!! 飯だ!!」
あらかた具材を切り終えて鍋に入れて火にかけると、畑仕事をしていた村人の一人が近づいてきた。
そしてこちらが質問に答える前に大声を上げる。
畑仕事をしていたものはそのまま、家にいたものは何かしら手に持ってゾロゾロ村の外へとやってきた。
「俺はクーマ、お前、名前は?」
「アカだ」
「そうかそうか。俺たちは歓迎するぞ!」
小柄な男が肩を抱いてきて木の器を渡してきた。中に濁った液体が入っている。……泥水じゃないだろうな。
「酒だよ。飲めるだろ?」
「あ、ああ。酒か。ありがとう」
この世界に来て初酒だ!
酒豪ではないが、元の世界でも家で時々飲む程度には好きだった。
みんな火の光のせいか酒のせいか赤ら顔に見える。酒のせいなら結構アルコール度数は高めだな。
調味料は塩すら入れて無いが、鍋はもういいだろう。
酒のお礼に木の皿に鍋の具を入れて渡してあげる。
それを見ていたみんなが真似をしてご飯交換会が始まった。
……俺は自分の鍋を一口も食べることができず、村人からもらった野菜を生でムシャムシャして酒を飲んでいた。
「この村の人は夜にお酒を飲みながらみんなで食べることが習慣なんです」
隣に全身鎧、俺のコピーのコロンが座ってきた。
そうか、明日からもこんなになるのか。……鍋を大きくしていっぱい作ろう。
どこで純人族が嫌われているかわからないので兜をずらしながらムシャムシャしていると、隣の鎧も俺と同じようにずらしながら食べている。
多分俺と同じ考えなのだろう。何族か知らないが嫌われた種族だと突然殴りかかってくるんだからな。隠した方が賢明だ。
「あ、お酒をどうぞ」
「ああ、すまない。ありがとう」
俺の器に酒が無くなったのを見て、近くの酒樽から酒を注いでくれた。
まだ夜は長い。酒は飲んでしまったが、お開きになったらまた見回ろう。




