納品しにきただけなのに
「納品だ。ユーリを出してくれ」
「アカ様。ありがとうございます」
早足でギルドに向かい、ユーリ以外は声をかけても動きが悪いのを知っているので指名する。
直ぐに出てきてくれる、ありがたい。
「こいつでいいだろう」
コトッと木のテーブルへ先程作った緑色の液体が入った回復薬を置いた。
「これは……試験の時の回復薬をお持ちいただけるとばかり思っていましたが、新しく作っていただけたのですか?」
「あれよりか良い薬になっているはずだ。確認してくれ」
「それでは失礼して……鑑定!」
鑑定魔法があるんだな。俺のアナライズとは根本的に違いそうだ。
回復薬を動かすたびに中の多分砂岩が水の中で浮いたり沈んだりしているのが見える。
無くても同じような効果の薬になる気がしたが、あえて入れておいた。少しぐらい無駄な物が入っててもいいだろう。
「かなり良い薬をお持ちいただいたようで、本当にありがとうございます」
「怪我をしてるやつがいるんだろう? できるだけ良いものの方ががいいんじゃないかと思ってな」
「ええ、緑のクチバシはメルートの宝ですからね。グレストルの依頼で傷を負って治せないでは少しマズいので、助かります」
メルートが何かは知らないが、彼らは宝なのか。そして依頼出したのはグレストルだろうが、勝手に怪我をするような依頼を受けて勝手に怪我したのにマズいも何もない気がするが。
まあ会うこともない奴らの事はどうでもいいか。
その時、扉が凄い音を立てて開いた。
両開きの扉の片方が壊れて床に転がった。
「薬はもうないのか!!」
金髪のイケメン男が入ってきた。
焦っているのがわかる。邪魔をすると腰の剣でも抜きそうな勢いだ。
邪魔にならないようにカウンター横にささっと移動する。
「緑のクチバシ……」
他の職員の声がチラリと聞こえてきた。
あー、あれが緑のクチバシか。イケメンで人気なんだな? なるほどわかった。
「なんでこの街の店はゴミみたいな回復薬しか置いてないんだ!」
「そりゃどこまで行ってもプチプチしかいないし、回復薬なんか置いてても使用期限を過ぎていくばかりで意味ないからじゃない?」と言ってやりたいが、我慢する。
自分達が用意してないのを棚に上げている状態で、そこで機嫌を悪くされてもわけがわからない。
だが、焦っている人間で遊んでもろくな事にはならないのは火を見るより明らかだ。
錬金術師がグレストルにいない理由もわかるだろう。そもそも依頼がないのだから。
「これはメルトリゥ様。ギルドの代理で?」
俺の受付をしていたユーリがそのまま対応に入った。
俺が横に避けたのを見て察してくれたか。
いや、こちらの方の対応してますので、とか言われて面倒な事にならなくて良かった。
「そうだ。ギルドが緊急の薬の手配をしたと聞いてきた! まだなのか?」
「いえ、丁度今そちらのアカ様から納品いただいたばかりですよ」
おい巻き込むな。
目で訴えるが、そもそもフルフェイスの兜があるのでアイコンタクトはできない。
はぁ、会うこともない奴らとかフラグを立てるべきではなかった。
「ん? あのときの、鎧男」
いつの時かわからない。自分の知らないところで見られている気持ち悪さを感じた。
「会ったことはないと思うが?」
「いやいや、こちらが勝手に見ただけだ。少し印象に残っていただけだから、気にしないでくれ」
「……そうか」
どこで見られていたか気になる。草を毟っていたときだろうか。
肉を焼いている時か? 街中で金を数えてた時か?
とにかく変なことをしているときでなければいいのだが。
「錬金術師だったか。薬は間違いないのか?」
「それは俺にはわからない。怪我の具合もわからないしな」
「我々錬金術ギルドも依頼以上の品を納品いただいたのは間違いないと思います」
そう言ってユーリが緑の液体の入った回復薬をメルトリゥの前に置いた。
自分で作っておいて、改めて見ると毒々しいな。
「これは……飲ませればいい、のか?」
「飲みたければ飲んでもいいが、体に直接かけても効果は変わらんよ」
「そうか、わかった。僕は急いで仲間の元に戻らせてもらう!」
壊れた扉から走って出ていった。
「いや、扉を弁償しろ」
「大丈夫ですアカ様。ギルドの代理で来ているのでギルドに請求しますので」
「そうか」
まあ俺には関係ないか。
嵐が去って風通しの良くなったギルド内は、すごく静かだった。




