裏路地はどんなとこ
金を稼ぐのが難しいのなら出費を下げるのが定石だ。
まずは安宿探しと行こう。
現在小銀貨4枚の宿だから、それより少しでも安い宿を探し回ろう。
こういうのは大通りに面していない方が安いと相場が決まっている。
大通りから外れて裏路地的な場所に足を伸ばす。
この街に来て裏路地に初めてきたな。
大通りは罰せられるからかキレイだが裏路地はキレイではない。ゴミは散らかっていないがあちこちに汚れが目立つ。
マップを確認しながら一度来た道に行かないように歩く。
店らしい店はない。民家だなこれは。
ポーンポンポン………。
ボールが飛んできて、すね当てにあたって転がる。
ゴムかと思ったが何かに糸を巻き付けた糸ボールだ。ゴムでもないのによく弾むな。
片手で拾い上げる。
「あ……!」
少し離れた距離から声が聞こえてきた。
こちらの様子を伺う獣人の子どもたちだ。
警戒……というより威嚇しているような気がする。
活発そうな犬2人とおとなしそうなネズミ1人。多分。違うかもしれない。
こんな鎧男がボール持って佇んでいたら怖いだろうからさっさと立ち去ろう。
ただ返しても怖がられて終わりだ。ちょっとびっくりさせてやろうか。
うーむ…………。リフティングはできるかどうかわからない。この体ならできるだろうが、ミスしたときのブサイクさといったらありえないだろう。
手品、そうだな。手品でもなんでもないが、インベントリに入れたり出したりして驚かしてやるか。
よーく見てろよって言わなくてもありがたいことに子どもたちの注目の的だ。
「はっ!」
気合と共にインベントリへボールをしまいこむ。
「あ!」
子どもたちの声が重なる。
そして出す。
「ほっ!」
「わ!」
「はい!」
「わー!!」
パチパチパチ!
…………俺はなーにをやっとるんだ。
今更ながら恥ずかしくなってきた。
近づいてきた犬の獣人君にボールを返す。
「おい! ボールみたいなやつ! お前凄いことできるんだな!」
誰がボールじゃ! と大きな声を出しそうになるのをこらえる。
間違いなく泣きながら走り去って不審者扱いされるだろう。
「さっきのやつ教えて!」
「いや……」
「ねえ! さっきのやつ! どうやったの!!」
これは……変なことをするんじゃなかった。
なんで懐かれにゃならんのだ。さっきまで威嚇してたじゃないか。
子どもたちに囲まれてギャーギャー騒がれる。
教えろと言われても「インベントリに入れるんだよ」って言ってもキョトンとするだけだろうし。
「あ、あれはな、手品だから。教えることはできないんだ」
「ええー!! なんで? なんでテジナとかいうのだと教えれないの?」
「なんでなんで!?」
ああ、なんで攻撃が始まってしまった。
なんとか逃げる隙はないか。
「タリュン、メリー。騒いでなにしてるの? ……あら?」
「あ、お母さん! なんかね、テジナとかいうのでこのボールがね!」
あ、犬っころの親が来た。逃げれる。
「ではこれにて――」
ガシッ。
小指を掴まれた。
ずっと気配を消していたネズミの子だ。
おい。なにしてんだせっかくのチャンスを。
選択肢は少ない。この小さな手を振り払うのか、この場に残って親の警戒を一身に浴びるか。
……………………振り払う!!
「あの? うちの子どもたちの面倒を見ていただいたようで」
振り払う選択肢を選ぶまでに時間をかけすぎたようだ。
親から声をかけられてしまった。
恨むぞネズミ君!!




