肉屋
小銀貨3、銅貨3、小銅貨2。
ギルドの依頼報告ができていないので手持ちはこれだけだ。
何が食えるだろうか。
ギルド前のゴタゴタから離れて食地区へと向かった。
ギルド前だけが異常なだけで食地区には人が少ない。
さて、どこに入ろう。
目の前には前に入った肉屋。ここに入るとこの店以外の比較対象を持てないので別の店にしよう。
どの店も肉屋だ。タンパク質感がすごい。
肉は大好物なので良しとしよう。
時間帯の問題なのか客引きがいない。客引きに引かれようと思っていただけに残念でしかないが諦める。
どこに入ろうか迷いながら歩くとすぐに飯屋が無くなった。
……少ない。
飯屋が、少ない。
看板が出ている店舗が10も無いのだ。
看板はないが店のような外観の家も片手で数えられるほど。
あまり売れないみたいだな。
端にある一番近い店に決める。“肉、あります!”翻訳がおかしいのか? 妙な看板をかかげている。
まあ、飯が食えればどうということのない些細な事だ。
「……いらっしゃい」
若いがゴツい男が店の中に立っている。
文字通りゴツい。岩肌というのだろうか。ゴツゴツしていて灰色で黄色く光る不思議な目が俺を見つめている。
背丈も2mはあるだろう。そこに立っているだけで威圧を感じるデカさだ。
「初めてだな。壁を見て肉を選べ」
そんなに広くない店舗をジロジロ見ていると声をかけられた。あまりにも入口で固まりすぎたのだろうか。
店主だろう男に促されるまま壁の文字を見た。
・カマノグラブ
・クスリクタ
・ガイコツサハ
・ヤラハマ
・カバァサ
壁の一角の文字だ。まだまだよくわからん名前が書かれている。
正直全然わからんし、金がいくら必要なのかも書いていない。
どうする。金がわからんのでは選択が限られる。
いや、一つだけ価値も名前も知っている肉があったな。
「プチプチを貰おうか」
これなら知っているのだ。食いたい味ではないが金が無い今は我慢しよう。
入口近くのテーブルに座った。これで一安心だな。
店主が少し地面を揺らしながら近づいてくる。なんだ? 早く作ってくれ。こっちは腹が減っているのだ。
「うちはプチプチを取り扱っていない」
な……なんだと!?
……思わず立ち上がりかけたが、ギリギリのところで動きを止めることに成功した。
この世界の事がまだわかってないのだ。既に鎧で目立っているのだからこれ以上目立つ行為はできるだけ避けなければ。
座ってしまってはいまさら帰りますというのもおかしいかもしれない。
「で、ではカバァサを」
適当にさっき見た文字をつぶやく。もうどうにでもなれ。
「小銀貨1枚だ」
ゴツい手を差し出してきた。そうか先払いか。
良かった。小銀貨1枚はクソ高いが払える。額の汗を拭いたいがヘルムに阻まれてできなかった。
店主に1枚の小銀貨を渡すと何も言わずに店の奥へと入っていった。
ふぅ、一息つけた。
食べるときにどうせ外すのでヘルムを取る。
暑い、がヘルムを脱いだだけでいくらかマシになったな。
どんな肉が来るのか楽しみにしながら、昨日採取した物をインベントリで眺めて整理することにした。




