除草剤作成だ!
また回復アイテムの店にやってきた。
正直、店はどこでも良かったが、探している時間がない関係でここにした。
店主は嫌だが、少なくとも錬金術に使えるアイテムはおいてあるのだ。我慢しよう。
「……らっしゃい」
やっぱり先程の店主がカウンターからこちらを睨みつけている。一体何なんだ。
気にしても仕方がない。無視だ無視。
必要な錬金術の素材を確認していく。今度はしっかりと店内を見て回ろう。
できるだけ安い毒草を沢山の種類手に入れるのだ。
現在手持ち、小銀貨4枚、銅貨1枚、小銅貨1枚、鉄貨1枚。オーバーして恥ずかしい思いをしないようにしなくてはな。
毒素材 毒カララミルの毛 小銅貨2枚
毒素材 エイリキーの爪 小銅貨2枚
毒素材 ゴブリンの耳 小銅貨1枚
毒素材 ビービービーの針 小銀貨1枚
毒草 ヘリウルの根 鉄貨1枚
毒草 イレツロサリア 鉄貨1枚
毒草 エスメス草 鉄貨1枚
毒草 モーリャ草 鉄貨1枚
毒草 ゴマリヅカの種 鉄貨1枚
毒草 ハラカラエリュの種 鉄貨1枚
両手に一杯、持てるだけ持ってカウンターへ置いた。
毒関連商品が沢山あって、まだ探しきれていない安い毒もありそうだ。
何が除草剤に使えるのか分からなかったからこの安い毒を全て1つずつ買うことに決めた。
合計で小銀貨1枚、銅貨1枚、小銅貨1枚、鉄貨1枚。計算しながら手に取ったのだから間違いない。キレイに全部1枚だ!
店主が口を開く前にカウンターにさっさと金を置いた。
「銅貨が1枚足りねぇぞ」
「なんだと?」
頭の中で素材の金額を思い出しながらもう一度計算し直すが、何度計算しても小銀貨1枚、銅貨1枚、小銅貨1枚、鉄貨1枚で間違いない。
「いや、この金額であっているはずだ。もう一度計算し直せ」
「クックック。銅貨が1枚足りねぇぞ。ん? 小銅貨も3枚足りねぇか?」
「……ほう、俺の計算が間違ってると言いたいのか、面白い。貴様とくだらん時間を費やすつもりはこちらにはない。どうやら大変頭の悪いお前のために素材毎、一つずつ値段を払って釣りを貰ってもこちらは一向に構わないんだぞ?」
「……チッ。持っていきな」
「さっさと渡せ。無駄な時間をとらせるな」
なんだあいつ。詐欺ろうとしやがったぞ。
店として終わってるな。それともどこの店もこんなものなのか? 金額の交渉とかもしないといけないのかもしれない。値下げ交渉しないからどこかから出てきた世間知らずの金持ちとでも思われたのか?
だとしたら俺が悪い……悪いか? いやどう考えても悪くない。どっちにしても詐欺はだめだろ。
クソ! わからん!
どこかで売り買いの常識を確認しないといけないな。
アイテムバッグ(極小)に素材を入れて店を出る。
いやー腹は減っても飯は無いし入った店の店主がクズだしだんだんと腹が立ってきた。
深呼吸で気持ちを落ち着ける。心に余裕が無いから腹が立ってくるのだ。焦るな。まだ日が沈むまで時間はある。
楽しんでいかなくては、早速調合しよう! 宿へと少しだけ走りながら向かった。
鍵を開け、部屋に滑り込むと直ぐにテーブルへ素材を並べる。
一つ一つアナライズをかけて詳細を調べていきたいところだが、時間がない。
“錬金術”
一番上の項目は現在の素材で作成できるアイテム名が表示される。
現在の素材数は10種類だ。全て毒。除草剤の一つや二つできるはず。
○カララミルの毒袋
○ビービービーの毒袋
○下位万能毒
○解毒薬
○防毒薬
○下位能力向上薬
○エイリキーの毒ナックル
○ゴブリンの耳飾り
錬金術で装備が作れるらしい。楽しみが増えたな。
装備は今、どうでもいい。ここで除草剤があればかなり楽だったが、表示はない。
これだけの数の毒を用意して表示はないのだから、もしかしたら除草剤というアイテムはないのかもしれない。10種類でも少ないのかもしれないが、そう疑いたくなる。
この中で草に効きそうな物は万能毒ぐらいだろうか。なにせ万能なのだから。
カララミルという魔物もビービービーもわからない。わからない事が多い。
それにしてもゴブリンの耳でゴブリンの耳飾りって洒落のつもりか?
ついでにスキルレベルを上げてみたが、作成できる物は増えなかった。スキルによって向上するもので今のところ確認できたのは、成功率、品質、付加要素の3つ。できる物が増えたりはしないらしい。
失敗はかなり厳しいのでスキルレベルを5まで上げる。
本当はレベル10で作りたいが世に出せない毒ができあがると結局失敗と同じになってしまうからやめておいた。
下位万能毒に必要な素材は10種全て。6種類でもできるらしいが、どうせなら全部使ってしまえばいい。残り4種類では下位万能毒はつくれないし。
下位万能毒を選ぶと、下の素材選択項目に自動で素材が選択された。
「調合」
魔力はできるだけ込めない。規格外の物を作らないための基本だ。
カッ! と光ると目の前にスプレー型の容器に入った紫色の液体が現れた。
容器は大きめの消臭スプレーに似ている。やっぱり俺のイメージが容器に反映されるようだ。毒のはずだから誤ってその辺りに散布させないように気をつけなくては。
「アナライズ」
何ができたか。この瞬間が物を作る楽しみの一つなのは間違いない。
詳細がスプレーの上に表示された。
下位万能毒
レア度 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
名称 アカの下位万能毒
作成者 アカ
素材 毒カララミルの毛 ✕ 1 エイリキーの爪 ✕ 1 ゴブリンの耳 ✕ 1 ビービービーの針 ✕ 1 ヘリウルの根 ✕ 1 イレツロサリア ✕ 1 エスメス草 ✕ 1 モーリャ草 ✕ 1 ゴマリヅカの種 ✕ 1 ハラカラエリュの種 ✕ 1
ダメージ量 HP1 中確率状態異常発生【 不安 憤怒 激痛 痒み 脱水 金属腐食 目眩 失声 視界不良 聴覚障害 意識混濁 呼吸困難 ダメージ耐性1〜10%低下 力減少1〜5 防減少1〜5 速減少1〜5】
期限 300日 300日経過後緩やかに劣化600日後完全に効果を失う
重量 400g 1噴射約2g使用
備考 一握りの上級錬金術師が粗悪な普通の量の素材で作成した毒。広範囲散布型。トリガーを押下することで噴出口から内容液が霧状に射出され広範囲に影響を及ぼす。ダメージ量は限りなく低い。状態異常に特化した毒。内容液が付着することで効果を及ぼすが、吸引もしくは粘膜部位に付着することで中位異常耐性、毒耐性を貫通してダメージ、及び確率で状態異常を発生させる。上級錬金術師による作成で、劣化速度はかなり緩やかになっている。
……なんか色々ヤバい気がするが、とにかく草に効けばいいのだ。
除草剤(仮)ができた!
早速どこかの草むらにかけて効果のほどを確認してみよう!
外に出て、シュッと一吹き雑草にかけた。
毒々しい紫色の煙のような霧が吹き出して草を一瞬で枯れさせ、腐敗させた。
なにこれ、腐敗した?
そこには焦げ茶色に変色した雑草の残骸が悲しげに転がり、土すら紫色に変色している。
……土壌汚染待ったなし。序盤で最強武器が手に入った気分だ。
草に効けば問題ない。そうだ。草に効いたかどうがか問題なのだ。間違いなく効いたし、さらに土壌汚染も追加されて2度と草が生えない一石二鳥だ!
……そうはならないだろうな。
「……エリアアンチドート」
小さな声で解毒魔法のアンチドートをかけてみた。
土の色が心なしか良くなった気がする。
「……エリアキュア」
別の解毒魔法も使ってみる。
やっぱりキュアの方が効果が高い。単独の毒に効く魔法ではなく“状態異常を回復する”という魔法だからだろう。他の土と変わらない色合いにまで戻った。
しかし、危ない。汚染された場所ができるところだった。
効果過剰ではあるが、除草剤(異常)は完成したと言ってもいいだろう。
さっそく依頼主の元へ向かわなくては。お金お金!