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錬金術

 宿に入るとさっきのイケメンがまだ受付に立っている。それほど時間は経ってないからな。人が変わったりはしないだろう。



「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」


「そうだ。一泊たのむ」


「前払い、小銀貨4枚になります」



 小銀貨4枚は無いので銀貨を1枚手渡した。


 お釣り小銀貨1枚。金が欲しいのに金が無くなっていく不思議。世界七不思議に登録してやりたい。



「お部屋にご案内致します。どうぞ」



 イケメンがカウンターから離れた。


 ……カウンターに誰もいなくなるけど大丈夫なのか?


 部屋は一階、一番奥だ。



「お分かりでしょうが初めてご利用になるお客様ですので注意事項を話させて頂きます。隣にも人がいますので――」



 騒音だすな、ガタガタ振動させるな、足音も気にする客もいる、異臭には気を使え、備品壊したら言え、部屋のものを濡らすな、明かりが消えたら言え。


 まあ、そんなとこだろう。別に驚くほどのことを言われたわけではない。


 ただ異臭がな……錬金術で何かしら臭いが出るかもしれない。


 窓開けて換気しとこう。


 部屋は受付ホールと同じで明るくかなりの清潔感があって少し広く感じる。


 ベッド式の寝具に黒いシックな丸机が置かれテーブルクロスまで付けてある。



「では、こちらは鍵です。無くされると弁償していただきますのでご注意下さい」



 イケメンさんは俺に鍵を渡すと部屋から出ていった。


 さっそく窓を全開にすると、机にアイテムを並べる。


 この草たちも俺のコレクションにはない。お金が貯まったら沢山買ってコレクションしよう。


 机の上には名前の忘れた薬草4本と毒の花一つ。



 “錬金術”



 マップやアイテム欄と同じように半透明の四角いウインドウが目の前に現れる。


 上に一つ、左、真ん中、右と3つの選択欄があり、それぞれに今は何も選択されていない状態だ。


 上の選択欄には現在ある材料で作れるものを選択できるようだ。だが、作りたい物は無いのでこの項目は空欄でいい。


 試しに目の前のサクセルの茎、セワカラ草、ギャラドルフの花と3つ選択してみる。しっかり忘れた名前も表示されてくれた。


 選択欄の下に結果予想一覧が現れた。


 低級回復薬 ✕ 100%

 低級毒 ✕ 100%

 種 ✕ 100%

 ゴミ ✕ 100%


 錬金術スキルが10なのでこの中から何を作るか選択できるようだ。ただ、詳細は不明。投入するMPにより出来上がりが変わるらしいからしかたがないか。


 隣の数字は成功率みたいだな。流石スキルレベル10。100%だ。


 ゴミは論外、毒も作りたくない。種は錬金術なのか? ここは回復薬一択だろ。


 回復薬を選択すると机の上の素材が光始めた。


 ここで「調合」を唱える。


 そう、スペルが必要なのだ。この錬金術というやつはMPを使うからか魔法と同じ扱いらしい。


 そしていまいち感覚が掴めない魔力を込める。


 カッ! と一際大きな光を放つと3つの素材が合体した。


 透明な瓶に入った薄い半透明の青色の液体。瓶はどこから現れたのか。まあいい。


 とりあえず何か出来たのだ! 嬉しい! また一つ新しい事を知ることが出来た!



「アナライズ」



 興奮を抑え込み、さっそく何ができたのか確認していく。



 低級回復薬

 レア度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 名称 アカの適当な液体型回復薬

 作成者 アカ

 素材 サクセルの茎 ✕ 1 セワカラ草 ✕ 1 ギャラドルフの花 ✕ 1

 回復量 HP2250 MP543 部位欠損再生 下位状態異常回復 回復継続HP1毎秒133秒間

 期限 無期限

 重量 50g

 備考 錬金術を極めし者が極めて粗悪で少ない素材から作られた至高の一品。命さえあれば部位欠損していても回復、再生する。高純度で考えられない程大量の魔力が込められているためMPも同時回復する。ランクの低い毒や麻痺、部位石化、ウイルス性の風邪や虫歯、頭痛に吐き気、目眩めまい等の下位状態異常も完全に治癒する。また継続回復効果がある。飲む事でもかける事でも即時効果がある。技術と知識の結晶により時間による劣化はしない。



 いや、絶対にダメだろこれは。低級回復薬だからかレア度は星一つ。だが世に出して良いものだとはとても思えない。心なしか回復薬自体が発光している気もしてきた。……手で覆ってみると、やっぱりこれ自身が光ってる。


 それにしても作成者まで出るのか。不正をするとバレるからご自身を強調してたのか、あのギルド職員。


 こいつは既に低級回復薬ではない。エリクサーになりかけた別の何かだ。残念だが永遠にアイテム欄に眠っていてもらおう。記念すべき1つ目の作成だし、コレクションということで。


 残りは薬草2本。失敗できない。


 失敗した原因はどう考えてもスキルレベルだ。


 スキルレベルが高すぎてハイスペックな低級回復薬ができたのだろう。


 パッシブスキルのスキルレベルを変更する。


 3……いや2レベルでいいだろう。


 セワカラ草とサクセルの茎を選択しても結果予想一覧はでない。


 ゴミが出来たら最悪だが、やるしかない。


 素材が光り始めた。



「調合」



 魔力をできるだけ入れないように作る。


 カッ! と光ると目の前にすりガラスのように曇った小さな容器に入った液体が出来た。


 ゴミ……ではなさそうだ。



「アナライズ」



 詳細が表示される。



 低級回復薬

 レア度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 名称 アカの液体型回復薬

 作成者 アカ

 回復量 HP13

 期限 20日 20日以降緩やかに劣化し、30日でゴミと化す

 重量 89g

 素材 セワカラ草 ✕ 1 サクセルの茎 ✕ 1

 備考 中級錬金術師が粗悪な少ない素材で作った回復薬。裂傷れっしょう程度なら完治する。飲む事でもかける事でも即時効果がある。比較的緩やかに劣化する。



 よし、成功だ! 楽しくなってきたぞ! しかし、ゴミでなくて本当に良かった。MPも回復しない普通の回復薬だ。


 中級錬金術師というのが気になるが、満足のいくアイテムだ。


 さっそくギルドへ向かおう!

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