第14話
二人の視界の先で、
ディローダとラヴャーナがカウンターで熱く語り合っているのが見えた。
酒の勢いで涙を流し、
「うちの坊ちゃんはなー!」
「あのお嬢様は本当に……!」
ルクスとサーラは、顔を見合わせて苦笑した。
この夜は、まだ少し長くなりそうだった。
次の朝。
「う……ん……」
ルクスはギルド二階の自室のベッドで、気持ちよさそうに寝返りを打っていた。
久しぶりの休息日。
魔王軍の動きが止まってから、毎日朝から晩まで剣を振り続けていた体が、ようやく休まっている。
そんな穏やかな朝を、
「おい! ルクス! 起きろ! お客さんだぞ!」
豪快な声がぶち壊した。
階段の下から響いてくるのは、ガルーヴァの太い声だった。
ルクスは目をこすり、上半身を起こした。
「……んあ? お客さん?」
(依頼か?)
最近は戦闘もなく、トレーニングばかりの日々が続いていた。
少し気合いを入れて体を動かせるのは悪くないと思い、服を着替えた。
階段を駆け下り、ギルドのホールに顔を出す。
「どうした? 依頼か?」
ルクスが下りきったその時。
彼は言葉を失った。
そこに立っていたのは、サーラだった。
淡いピンク色の、フリルがたっぷりついた可愛らしいドレスを身に纏っていた。
肩が大胆に露出したデザインで、彼女の逞しい肩と二の腕の筋肉がくっきりと浮かび上がっている。
可愛らしい色とデザイン、そして圧倒的な肉体とのギャップが、強烈だった。
だがルクスは特に動揺した様子もなく、普通に彼女の姿を眺めただけだった。
その後ろには、ラヴャーナが直立不動で控えていた。
サーラは頬を赤らめ、顔を背け、口を開いた。
「おはよう、ルクス……。今日は休みと聞いたんだ。デッ、デートに行かないか!?」
声が上ずっている。
拳を握りしめ、肩が少し強張っているのが丸わかりだった。
(……無理してるな、こいつ)
「おお! いいじゃないか! ルクス、行ってこい!」
ガルーヴァの声が飛んできた。
椅子に座っていたディローダも立ち上がり、拳を振り上げた。
「ルクス! 恥をかかせんじゃねーぞ! しっかりエスコートしてこい! お前は男だろ!」
ラヴャーナも一歩前に出て、意外と真剣な顔で言った。
「勇者、いや、ルクス! 今日は二人の表立っての初めてのデートだ。必ずや成功することを祈っているぞ」
(……なんでこいつ、急にこんな前向きなんだ?)
ルクスがラヴャーナを訝しげに見ていると、ディローダが親指を立ててこちらを向いてきた。
(間違いなく、こいつの入れ知恵だ……)
ルクスは結局、断る理由も見つからなかった。
「わかったよ。いや、もちろんだ。……行こうか、サーラ」
こうして、勇者と魔王の娘による、初めてのデートが始まることになった。




