第1話
子供の頃に交わした、あの約束。
「将来大きくなったら……」
赤髪の少女の声は、震えていた。
大きな瞳から、涙がこぼれ落ちる。
彼女は両手で握りしめていた指輪を、金髪の少年の手に乗せた。
少年はそれを親指に通し、ぎこちなく、少女の目の前に突き出した。
「うん。絶対に……」
そして少年も、頬を伝う熱い雫を拭おうともせず、
胸を張って誇らしげな表情を浮かべていた。
「結婚しよう……!」
風が二人の間を優しく通り過ぎる。
まだ幼い二人は、泣きながら笑いながら、
違う方向へ足を進め、互いに離れる道を選んだ。
あの日の指輪は、今も少年の胸の奥で温かく輝いている。
でも。
十年が過ぎた今、少年はまだこの指輪の少女には再会できていなかった。
「お前らあああ!! いくぞおおお!!」
「「「おおおおおおっ!!」」」
金髪をツンツンと逆立てた少年が、剣を高く掲げて叫んだ。
その青い瞳は澄んで輝き、整った顔立ちが、少年らしい無邪気さを覗かせた。
ルクスは十五歳になっていた。
その圧倒的な実力から、国より勇者として正式に認定されていた彼は、魔王軍との最前線で戦い続けていた。
背後から響く冒険者たちの雄叫びを背に受け、彼は魔王軍を真正面から突き破った。
黒い服の上に肩・胸・腹を守る軽鎧を身につけた体躯は、それなりに高い身長から繰り出される一撃が重く、ほどよく筋肉のついた腕が剣を振るうたびに風を切った。
一撃で魔族がまとめて吹き飛び、地面に叩き付けられた。
間髪入れずに動きを繋げ、槍を構えた蝙蝠の魔族を跳躍して蹴り落とし、着地と同時に背後の狼の魔族を横一文字に両断した。
敵の悲鳴と、肉を断つ重い音、そして血の臭い。
ルクスは剣を振り回し続けた。
誰かの命を一つでも救えるのなら、それでいい。
そう自分に言い聞かせた。
ルクスの左手の薬指には、指輪がはめられていた。




