拾ったふきのとうを食う
アクセスいただき、ありがとうございます。
不定期更新です。
クスリと笑ってくれたら嬉しいです。
私には、金がない。
日々金策に頭を抱えている。
4月、大学の授業が始まり、実家から雪国へと戻ってきた。
通学中、昨年チェックしておいたポイントにちらりと目をやり、ほくそ笑む。
ある、たくさん。
脇道の土からぽこぽこ頭を出しているまあるい黄緑色の植物、そう、ふきのとうだ。
状況を見る限り、昨年以上の収穫が見込めそうだ。
よしよし、美味しく食べてやるからな。
と内心うきうきしながらも、講義の時間が迫っていたため、足早に通り過ぎた。
〇
20時。辺りがすっかり暗くなった頃。
私は数名の有志とともに、ビニール袋とハサミを片手に道端にしゃがみ込む不審者と成り下がっていた。
警察が通りかからなかったのが幸いである。
パチン
とひとつ収穫する度に、こいつは良い、こいつはダメだ、などとヒソヒソと評価を下す。
ふきのとう界にも、出来の良い奴悪い奴がいる、ということに内心共感と同情を抱きつつも出来の悪い奴は処分する。
世知辛い。
道端を行き交う人に不審な目で見られながらも勝ち取った戦利品、およそ50個のふきのとう。
数人で食べるには十分であろう。
私たちは、いそいそと大学へ戻った。
〇
ふきのとうは、下処理をしてよく洗う。
その過程で、50ほどあったふきのとうはどういう訳か30ほどに減ってしまった。
まるで面接のようである。
見た目は良いが、中身が伴わないやつはここで落とされるのだ。
本日2度目の絶望を味わいつつも、精鋭たちの味を予想した私は、ゴクリと喉を鳴らした。
下処理を終えたふきのとうを、薄力粉と卵、水を軽く混ぜた天ぷら粉に漬け、油でからっと揚げる。
「......美味いな」
「ああ、思っていた以上に美味い」
「春って感じ」
口々に感想をいいながら、塩をかけたふきのとうの天ぷらを頂く。
「第2陣も行こう」
私はそう口にしながら、フライパンに持参したオリーブオイルをどぼどぼ注いだ。
〇
第2陣、第3陣......
と、次々に揚げていき、その度に塩と共に口に運ぶ。
1時間後、腹がくちくなった私たちは、数個残った天ぷらを前に、会話に興じていた。
酒も入り、箸が転げても面白くなってきた頃、視界の隅に小さな人影が2つ映った。
『あー、わしらの傘をこんなにしやがって』
『どういうつもりかね』
親指ほどの大きさの人影は、甲高い声で文句を言いつつも天ぷらをえっさほいさと担いでいった。
突然、何を思ったかそのうちの片方が、天ぷらを齧った。
『……美味いぞッ、これは絶品だ!』
『ジューシーでサクサクとしていて、ほろ苦さがアクセントになっている!』
『お前も食べてみろ』
もう片方は、半信半疑で口にした。
『ああ、初めて食べる味だな。こいつは全部貰って行こう』
口いっぱいに詰め込みながら、目を見開いて言った。
私はこの一連の流れを、酔いすぎてまた幻覚を見始めたな、とどこか冷静になって眺めていた。
〇
「おい、起きろ。もう23時だぞ」
肩を揺さぶられ、私は目を覚ました。
「お前、いつも23時頃に帰るだろ」
起こしてくれた友人に礼をいいながら、私は目の前の残骸をぼんやりと眺めた。
「片付け、するか」
流しで並びながら皿やらフライパンやらを洗っていると、友人が唐突に口を開いた。
「なあ、いつの間に天ぷらの残り食べたんだ?」
「俺、もう少し食べたかったのになぁ」
たしかに、天ぷらの残り、4つほどは、私の目の前にあった。
だがしかし、私は食べた覚えはない。
冤罪である。
「守り神が食べたんだろうな」
私は微睡みの中で見た気がする小人に思いを馳せて言った。
「冗談言うなよ。ほんとにそんな奴がいたら、捕まえて売ろうぜ」
友人は笑った。
「売るよりも、祀った方がご利益があるかもしれないだろ」
笑いながら私が言うと、友人はなむなむと拝み始めた。
「可愛い彼女が出来ますように」
その瞬間、どこからか甲高い笑い声が聞こえたような気がした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。
感想もとても嬉しいです。今後の執筆の参考にさせていただきます。
引き続き、本作をよろしくお願いいたします。




