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大好き【夏樹②】

「有鬼堂さん!好きだ!俺と付き合ってほしい!」

「ごめんなさい、好きな人がいるのであなたとは付き合えません」


 ミーちゃんが告白される場面を見ながら思う。


 好きな人以外からの告白なんて面倒だよね、しつこい人もいるし……心の中で自分にブーメランが刺さった音がしたけど無視無視。


「ミーちゃんあんなカッコイイ人もふっちゃうんだね」


 ミハルの方がカッコイイよ、みたいに褒めてくれないかな?と期待しながら、隣に立つ春斗に尋ねてみる。


 カワイイの方が嬉しいけど、カッコイイの方でも良いから褒めて貰いたいな。


「好きな人って誰だろ?ミハルから告白すればすぐ付き合えると思うんだけど」


 期待した言葉は聞けないようだ、残念。


「聞いたんだけど告白してもフラれる可能性の高い相手らしいよ、すでに彼女のいる人とかじゃないかなぁ?」


 ミーちゃんの好きな人は私。

 それを春斗に教えるのはまだ早いから知らないフリをする。


「ごめん!待たせちゃったね、じゃあ帰ろっか」


 ミハルがこちらに駆け寄ってきた。

 憎たらしいほどカワイイし胸だって大きい、クソっ!揺らすな!


 自分の胸を見るとスカスカで悲しくなるけど無くは無いったら無い、チラリと春斗の目線を確認するが胸には向かっていないから大丈夫……だと思う。


 以前、春斗の性癖を調べようとしたけど結局分からなかった。


 春斗の部屋には18的な本とかゲームは一切無いし、読んでる漫画やラノベはジャンルがバラバラ過ぎて的が絞れない。


 話の流れをつくって聞いてもエッチな話題ははぐらかされて終わる。


 私にも触らせてくれない方のパソコンでエッチなサイトとか見てるんだろうなと予想は出来たけどそれまでだった。


 ガードが堅い、男子高校生なのに堅過ぎる、友人から聞く話や雑誌の情報と違う。


 私のガードは春斗限定でうすうすなのに……。


「ミーちゃん、凄くモテるよね、告白してきた人ってサッカー部の次期エースとか言われてて人気のある人でしょ?」


 学校である程度以上に有名な人の情報は把握してある。


 人の話はいい加減なもので聞いた話と違うなんて事は多いけど、複数人から聞いた話をまとめるとそれなりに正確なものは見えてくる。


 危険な人は私や春斗に近寄らせない、私の言う事を暴走しないで聞いてくれる女子にガードしてもらい排除している。


「えっ、そうなの?サッカーに興味あまりないから知らなかったわ」


「好きな人に告白しないの?ミハルなら多少無理めな相手でも可能性ありそうだけど……先生の誰かだったり?」


「ふふっ、先生じゃないわよ、でも可能性はほとんど無いかな、その人には好きな人がいるし、いなくても私と恋人にはなってくれそうにないもの」


「ミーちゃん、その人が誰かは教えてくれないんだよね、私の好きな人は教えたのに」


「ナッちゃんには話せないわ、それにナッちゃんも好きな人に告白してないじゃない」


「えへへ、それが上手くいきまして、私達付き合う事になりました」


 私の恋愛成就を初めて他の誰かに伝えた。


 言葉にしてみると多幸感に溺れそうになる。


 みんなに伝えて回りたいけど、春斗は嫌がるだろうし伝える人は選ばないといけない。


「あ……そ……そう、上手くいったのね、おめでとう……」


 えっ!?泣いちゃうの?思ってたより反応が強い、嫌な予感がする。


「どうしたの?ミハル」「ミーちゃん大丈夫?何で泣いてるの?」


 泣いちゃダメ!泣き止んで!


「私……私が好きなのはナッちゃんなの!気付いたらどうしようも無く好きになってて無理だって分かってるのに……うう……」


 チラリと春斗の表情を確認すると……マズいマズいマズいマズいマズいマズいマズい


「ミハルがそんなに辛いなら僕は夏樹と付き合うのはやめても……」


 ああああああああああああああああああああああ


 一気に血の気が引いた。


 ウソウソウソやだやだやだコワイコワイコワイ


「そんなの駄目よ!」「それは絶対駄目、ナッちゃんを悲しませないであげて」


 心臓がバクバクして、自分の声が遠くから聞こえてくる気がする。

 しかし、同時にミハルが助け舟を出してくれたお陰で少し気持ちが落ち着いた。


 大丈夫大丈夫大丈夫


「僕はどうすれば……ミハルもそう言うなら別れたりしないけど」


 大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫


「春斗はまだミーちゃんの事が好きなんだよね?」


 大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫


「うん……ごめん、付き合っといて不誠実だとは思うけどまだ僕はミハルが好き、夏樹は幼馴染だし一緒にいて楽しいから恋人になれるのは嬉しいと思ったけど」


 大丈夫。


 目から涙が溢れたけど気分は落ち着いた。


 嫌われたわけじゃない、恋人になれるのは嬉しいと思ってくれている、その言葉に嘘は無いだろう、嘘じゃないと信じたい、暗闇の中に垂れたかすかな好意にすがりつきたい。


 春斗は優しい人だからミーちゃんを悲しませたく無かっただけ、私から少しだけ気持ちが逸れただけだ。


「私は春斗が好きよ、大好き、小学生の頃からずっと好きで今はもっと好きなの、私を好きになって貰いたい、その為なら何でもするから……」


 自分の気持ちを真っ直ぐに伝える。


「ねぇ、ミーちゃんは私の事どれだけ好きなの?」


「夏樹の事は大好き、ここまで誰かを好きになったのは初めて、夏樹の為だったら私だって何でも出来る!……夏樹が春斗くんと恋人になって、私が夏樹と一緒の時間が無くなっていくのは辛いけど我慢も出来る……」


「じゃあさ、私がミーちゃんの恋人になったらミーちゃんは春斗と恋人になってくれる?」


 やっとのやっとで私と春斗は恋人になれたけど、その関係は薄氷の上に成り立っている、そう痛烈に思い知らされた。


 幼馴染としての関係もそうだ、これまで何回も壊れそうになってその度にあがいてもがいて必死に守り抜いてきた。


 もう、1人では限界。

 近くで一緒に守って助けて前に進めてくれるパートナーが必要だ。


「えっ?それってどういう事?」


「3人で恋人になるの、私は春斗の恋人だけど、ミーちゃんとも恋人になって、ミーちゃんは春斗とも恋人になるの」


 嫉妬心なんて要らない、捨ててしまおう。


「それは……嫌では無いけど……いえ夏樹と付き合えるなら春斗と付き合っても……夏樹がそれで良いなら喜んでくれるなら夏樹の次ぐらいには春斗くんを好きになれると思う」


 ミーちゃんは自分の気持ちを伝えるのが得意なタイプじゃないはずだけど、今は違って見えて必死さが伝わってくる。


 ありがとうありがとうありがとう、私も春斗の次にミーちゃんを好きになれるように頑張らないと。


「ちょっと待って!?それっておかしくない?3人で恋人なんて」


「春斗は嫌なの?」


「嫌では無いと思う……むしろ嬉しいけど、おかしいと思う」


「嬉しいならおかしくても良いでしょ?」


「良いのかな?」


「良いんだよ、3人で幸せになろうよ!」


「そこまで言うなら分かった、3人で恋人になろうか」


 あああ、良かった良かった良かった。


「ねえ、3人で恋人になった記念にキスしよっか」


「キスしたい!夏樹とキスしたいとずっと思ってた、夏樹と春斗がキスした後なら春斗ともキスしたい、夏樹との間接キスなら嬉しい」


 ミーちゃんが私の望み通りの答えを出してくれる。

 ミーちゃんを選んで良かった。


「ごめん、正直頭の中がぐちゃぐちゃで話についていけてないけど、僕もミハルとキスしたいと思った事はあるし、夏樹とキスするのも嬉しいかもしれない」


 話はトントン拍子で決まった。

 順番は私と春斗から。


 あっ、本当にキスするんだ。

 春斗の顔が近い、この距離は好きだけど苦手、思い通りに身体を動かせなくなる。


 何百回も想像してきたシーンが現実になろうとするにしてはあまりに呆気ない気がした。


 ミハルとキスしたいからだろうけど春斗が珍しく積極的になってる。


 緊張して動けない私の肩に春斗の左手が置かれ、右手がうなじにまわされ……。


 時間がコマ送りのように流れていく。


 胸の鼓動がうるさい、目をつぶる、春斗の良い匂いがする、唇が触れた、幸せ過ぎる、離れたくない。


 離れないように抱きついて春斗を拘束したいのに私の体が動いてくれない。


 唇が離れてしまった、目を開く、まだ間近にあった春斗の顔が見えた、いつもより真剣な表情がカッコいい、目が合うと照れたように微笑んでくれた、好き好き大好き、好きが溢れて止まらない。



 好きが止まってくれない、これ以上は怖い、お願いだから止まってよ。



 私の中の、春斗への好きを吐き出す部分は、私の言う事を聞いてくれない。

(・ω・)良かったらブックマーク、評価くだちぃ。

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