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まるでドラマのワンシーン

本日2話目


 駅の手前で夏樹の手を離すと少し残念そうな顔をされた。


 夏樹は開かないドアにより掛かり、僕はその前で吊り革につかまる。


 いつもの定位置、座席は毎回埋まっているけど混んではいない。


 朝の電車の中で会話するのは向いてないからお互いスマホをいじってすごす。


 学校に近い駅に近付くにつれて混み合いスマホもいじれなくなり、身長の近い僕と夏樹は至近距離で見つめ合う事になって、以前はそうでもなかったのに付き合ってからのこの時間は周りにどう見られてるんだろうか?と気になってしまって妙に照れ臭かった。



「おはよー」「おはよう」「おはー」「桃島さんおはようございます」「おはよう」「はよー」


 学校付近、校門、教室、夏樹と一緒にいると道のりで女子からよく挨拶される。

 慣れたもので自分がモテているとか勘違いする事も無い。


 1人で登校した時は夏樹に何があったのか心配された。

 風邪だと答えたらさっさと離れていったけど。


 教室までに周りを取り囲む女子が増えていくが、僕と夏樹が横に並んで歩くのは変わらない。


 女子が僕と夏樹の間に割り込んだり、僕を夏樹から遠ざけようとする動きもあったけど、夏樹の機嫌が露骨に悪くなるから最近はそんな事も無くなって平和だ。

 いつからか適度な距離感が保たれている。


 中学生時代は酷かった。

 冷たい目をした女子の集団に囲まれ夏樹と別々に登校するように脅され詰め寄られるとかトラウマである。


 その事を夏樹に相談して次の日から別々に登校しようと言ったら


「絶対に嫌!私がなんとかするから!大丈夫だから!」


 と押し切られ次の日には微妙に離れて登校したのだけど、放課後には涙目としんだ目をした女子の集団に謝罪され夏樹と一緒に登校するように頼まれた。


 怖くて夏樹が何をしたのか聞けてない。


「おはよう」「「おはよう」」


 教室に入ると挨拶を返してくれた人達の中にミハルがいて、笑顔で手を振ってくれる。


 たった半日ぶりに見る僕が1番好きな人の笑顔と声。

 それだけで舞い上がるように嬉しかった。



 教室の席は僕が窓側の後ろの方で、夏樹は廊下側中央でミハルはそのすぐ後ろ。


 教室内では夏樹もベタベタと寄ってくるわけでもなく、僕から寄っていくわけでもなくそれぞれの友人と会話してすごす事が多い。


 教室内でずっと一緒にいると疲れてしまって、1度離れようとした事があってからほどほどに離れてすごすようになった。


 昼は一緒に食べたり食べなかったり、昼に僕と夏樹が一緒にいる時は囲まれないけど夏樹が一緒に食べる生徒のローテーションが出来上がっている、正確に把握してるわけじゃないけど。



「うっす」「ちっす」「よっす」


 うっすが僕でちっすがノッポ眼鏡でちっすがチビ前髪目隠れ。

 清涼系タブレットのお菓子を食べながら、Vtuberとかアニメの話題でテキトーに盛り上がる。


 教室についてからしばらくして、ほとんどのクラスメイトが登校してきたのを見計らい黒板の前に立つ夏樹とミハル。


 最近のクラスメイト達は何かを期待してか登校時間が早い。

 朝のショートホームルームまでまだ30分ぐらい時間がある。


「みんなに報告があります!」


 夏樹がいつにも増してイケメンだ。

 パッチリ開いた吊り目がパーツ単体でカッコいい。


 眉が半分ぐらい耳はギリギリ全部隠れる程度の長さに伸びた黑髪がキラキラと光を反射して輝いている。


 ミハルの表情は緊張しているのが目にとれてわずかに引きつりがちだけどその美貌にはいささかの陰りもない。


 タレ目にぷっくりとした涙袋、小顔に理想的なバランスで配置された小さな鼻と唇、わずかに茶色がかった髪がサラリと伸びて流れている。


 こんな美少女がクラスメイトという近い距離にいて惚れないわけがないだろ、と叫びたくなる。



 教室にいるクラスメイト全員の視線が一斉に二人へ集中した。


 劇のクライマックスシーンのような、スポットライトが当たる演者以外は音を立ててはいけないかのような緊張感に教室が包まれ静まり返る。

 

 もう結果分かってるよね?とツッコみたいというイタズラ心をこらえて僕も見惚れたまま様子を見守る。


 夏樹がミハルの肩を抱き寄せ、頬を紅潮させたミハルが遠慮がちに夏樹に抱きつく。


「私達!」「つ、付き合う事に」「「なりましたー!」」


 言い切った瞬間。


 キャーッ!!オオオオー!!ワアァァァァー!!


 ドラマで1番盛り上がる場面を再現するような状況に教室が大きく沸いた。


「おめでとう!」

「どんな風に告白したの?教えてよ」

「記念に写メとらせて!お願い!」


 二人を中心に人集りが出来上がっていく。

 アレに入っていくのは僕には無理だ、精神的にしねる自信がある。


 こんな状況で何を話しかけたらいいか分からないし、このムードに水を差したくもない。


 離れた席から見守るぐらいが丁度いい、ちょっと寂しいけど祝福される二人を見ていると嬉しい気持ちでいっぱいになる。


 そして、二人とも僕の彼女になったのは夢か何かだったのでは?という気がして、非現実感が強い。


 二人を見てると、夏樹とは目がたまに合ってわずかにだけど微笑んでくれている気がする。

 ミハルは……ちょっと困った感じ?


 困り顔もカワイイなぁ。


 放課後が待ち遠しいけど、こうして離れた場所から見ているだけの時間も幸せだった。

(・ω・)良かったらブックマーク、評価くだちぃ。

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