表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーナーズ・オブ・ブレイド~チート刀と少女達で、俺は異世界を救う~  作者: 高下 高
外獣編 プロローグ+第一章 ゲームクリアと異世界
1/171

プロローグ 『謎刀(めいとう)』との出会い

 「え……」


 見渡すとそこには、見慣れない景色、二人の少女、そして、『(けもの)』があった。


 少年は状況が()み込めず、立ちすくむ。


 視界に入った獣の、あまりの怖さに足が震え、一歩たりとも踏み出せなかった。


 獣は、少年に目もくれず、少女達に爪を振り下ろしたりしていた。


 それを彼女らは、剣で防御(ぼうぎょ)したり、回避(かいひ)したりしていく。しかし、動きはバラバラで、チームワークが取れていないように見える。


 「む、貴様(きさま)さっき(わらわ)に当たりそうになったではないか!」


 「……」


 といった、注意する少女とそれを無視する少女が、見える。


 その時、彼に気づいた、少年に近い方の少女が振り向き、声を()けてきた。


 「!……、まだ避難(ひなん)していない者が、いたか。な……、まさか、いや、しかし」


 歯切れが悪いように少女は言ったが、すぐに顔を伏せ、頭を振る。


 顔を上げ、再び少年を見つめる少女は、剣を納め、顔をキッとし、指を差して言う。


 「とにかく、そこの男よ、ここは危険だ。早く避難するがいい」


 少年はその言葉に首肯(しゅこう)し、震える足を無理矢理にでも止め、(きびす)を返し、礼も言わず、全速力でこの場から去って行く。






 「はぁ……、はぁ、はぁ、はぁ……」


 息を切らしながらも、少女達、そして、獣がいる所とは逆方向に、少年は走り続ける。


 ――?……、なんだ、これは。


 どれくらいか走ったときに、少年は、ピタリと足を止め、あるものを感じた。


 しかし、止まった瞬間(しゅんかん)、少年は顔を上げ、口から込みあがるものを両手で(ふさ)いで(おさ)える。抑えきってから両手を離し、肩を使って体を上下にさせ、所々で息を吐きながら言う。心臓が早鐘(はやがね)のように鼓動(こどう)し、お腹が前に出たり引っ込んだりした。体中に汗をかき、それは、服にべっとりと付き、少年は、不快感を覚えた。


 「それは……はぁ、ともかく……はぁ、止まったから……はぁ、(つか)れがどっときたぁ。……はぁはぁ……」


 疲労(ひろう)により荒くなった息を、体を曲げ、両手をそれぞれ(ひざ)に当てて、整える。


 ――どこだか分からないところで、こんな思いをするはめになるとはな。逃げるためとはいえ、全力ダッシュは、流石(さすが)にヤバい。体力ねぇの、自分が一番分かっているはずなのに、してしまうとは……。


 つい、そんなことを思ってしまった。


 数回息を吐いて、整え終えると、手を膝から離し、体を曲げ戻す。


 「ふう~、少しマシになったし、これについて考えてみるか……ん?」


 額にかいた汗を左腕(ひだりうで)(ぬぐ)いながら言って、感じるものに意識を向けると、近くに反応が強い所があった。それは、左右に向かい合って建てられた建造物の右側の中に、住宅とは違う構造をしているものである。高さは二階ほどあり、住宅と違うのは、一階に少し長めの窓が二つあり、外側に読めなかったが、おそらく文字らしきものが書かれた木枠(きわく)が設置してあった。


 それは、少年にとっては、店に見えた。


 ――店、だよな、これ。看板っぽいものがあるし、窓の大きさや配置がそれっぽいが。それに今となっては、多くはない、目に見えて分かる程の、木造建築物ってのが、引っかかる。まあ、ここは(おれ)の知らない場所だから、主観が通じないのかもしれない。


 少年は、心の中で、そう疑問に思う。


 視線を店内の一部が見える窓に向けると、何かが発光しているのが見える。


 光は、店全体に強く発光しているわけではなく、ごく一部分を淡い白で、ゆっくりと光の範囲を広くしたり、狭くしたりを繰り返す。


 「何が光っているんだ? ……ん? なんか、あれを見た瞬間、反応が強くなった気がする。まるで、あの光とこれが関係あるみたいだ。偶然か?」


 少年は、それについて首をかしげつつ言ったが、それを戻して、あることを思う。


 ――まあ、どこに逃げればいいのか分からないし、これの正体を知るためにも、応能強めの店? ぽいとこに、行ってみるか。行くあてもないし、彷徨(さまよ)うよりは、何かある所にいく方がいいしな。


 そう胸中(きょうちゅう)で言い、反応のある建物に、少年は呼吸を整えたとはいえ、走るのは難しかったので、一歩一歩ゆっくりと歩いていく。






 そして、たどり着いたのは、窓から見えてくる武器から、武器屋だと推測した。


 「! 剣多っ! 武器屋だと思うけど、剣多すぎじゃねぇ? 商売になっているのか、分からない店だなぁ。剣の専門店かな?」


 剣の多さに突っ込みつつも、少年は、そう言う。


 それもそのはず、窓から見えるだけでも、種類はあるが大きく分けると、そこにあるのは、ほぼほぼ剣だけだった。


 少年は、深呼吸し、数秒間、間を開けてから、口を開く。


 「し、失礼します……」


 (おそ)る恐るドアを開け、後ろを向き、ゆっくりと閉めて向き直ってから入ると、まず目に入るのは予想以上の数である剣である。


 ――さっきも思ったが、これは、想像以上だなあ。流石に、剣だけってわけじゃないけど、武器は剣だけしかない。後は、隅に、防具があるくらいだし。っても、その防具が何故(なぜ)か、形から察するに、女性用しかないのが、気になるのだが。あ、確か、さっき戦っていたのは少女達だったな。ともかく武器といい、防具といい、変わった店だなあ。


 少年は、剣の次に、防具を見ていく動作の中、口中(こうちゅう)で言った。


 店内は薄暗(うすぐら)く、店員はおらず、武具とカウンターだけがあった。


 ――誰もいないのか。そう言えば俺に声を掛けた()が、避難とか言ってたし、奥にいるのかな。もしいるのなら、避難場所を教えてもらうとするか。感じたものが、気がかりだが。それに、出てきたのが、場所的に、いかつい人だったら、どうしよう。ちゃんと言えるかな、俺。


 そう思いつつも、片手を、口の横に親指を触れさせるようにして横に置き、店員を呼ぶ。


 「誰かいませんか~」


 退避(たいひ)しているようなので、少し大きめに言ったが、なにも返って来ない。


 ――実は、本当に誰もいないのではないのか。いやいや、まさかな。


 と、胸中で思うが、すぐに否定した。


 「まあ、それはそうと、反応があるのが、何故ここなのかは、分からない。だが事実、ここで反応が強くなったから、何かがあると思うから、行ってみるかな」


 そう言いつつも、仕方なく反応が強い所に行くと、数本の剣の中に、発光しているものを見つける。


 それは一振(ひとふ)りの刀だった。


 少年は、心の中で言う。


 ――これが、反応の正体なのか。刀……だよなこれ、……何が起こるか分からないけど、一応持ってみるか。正体がこれならば、持たない限り、反応が治まらないしな。


 そして、恐る恐る発光する刀に手を伸ばす。


 「ちょっと待て、少しだけ、心の準備を、……よし」


 そう言いつつ、手と刀が間近に迫ったときに、少年は手を一旦(いったん)止め、つばを飲み込み、再び手を伸ばす。


 そして、左手で少年は、刀を持つ。


 「!……」


 すると、刀が強く光るのと同時に、頭の中に膨大(ぼうだい)な量の情報が流れ込んだ。


 ――ぐっ……、頭の中に何かが、入ってくる。頭が、痛ってぇ。でもなんとなくだが、()えなければいけない気がする。痛いけど、そうするしかないな。でもやっぱり、痛ったぁ。頭割れるんじゃねぇこれ。いや、比喩(ひゆ)とかじゃなくて。


 情報の奔流(ほんりゅう)に脳への負荷が多くなったので、そう思い、頭を抱え込み、必死にそれに耐える。


 負荷が治まり、光が消えていく。


 少年は、胸中で(つぶや)く。

 

 ――……やっと終わったか。うぅ……、まだ頭がジンジンしてくる。でもまあ、割れるよりはましか。でも、これって……。


 それにより、少年は刀の使い方とこれが『謎刀(めいとう)』と呼ばれていること、そして、正式名を知ることになり、その名前を言う。


 「言技化丸(ことぎかまる)……」と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ