コズマ=ボンノーの伝説 7章
「ぎぇえ!」
市街専門窃盗団『シルフの風盗賊団』:壊滅
「ピギャァ!」
混沌魔術開発研究所『イビルマジックユニバーシティー』:廃校
「クソ…が…………」
戦闘狂派遣会社『ベルセルクカンパニー』:倒産
今、街の暗部が大騒ぎになっている。理由は簡単。有名な組織が幾つも幾つもドミノでも倒すように崩壊しているからだ。さらに、その芸術的といえる騒動を一目見たい、一枚噛みたい、利用したいと考える裏社会の愚か者達を突き動かし、当事者とじゃじゃ馬でごった返し、おまけにそのどさくさに紛れて更なる小競り合いや抗争といった事件も起こっていた。これは正しく大騒ぎだ。
「グフェ……」
移動売春旅館『ソー』:閉店
どれくらいの騒ぎかと言えば、一晩でこの街の勢力図は一度破って新たに一から書き直さねばならない程。
そちら側の人間には『勢力図を描くのが趣味』という人間が少なからず居る。そして今回、この街の変わった勢力図を描こうとした有志が数人居たそうだが、数人とも書いている途中に勢力図が変わり、訂正をしようとして、その途中にまたしても勢力図が変わり、これを何度も繰り返されて勢力図を書き込むノートや壁、ストックの紙や壁紙までもが無くなってしまい、騒動が一度収束するまで筆を仕舞っておくことにしたそうだ。
「やだやだやだやだやだやだぁ!」
美人局組合『ハート&クラブ』:離散
そんな訳で大騒ぎの(血)祭り騒ぎ。警備官達も小競り合いに駆り出され、街は物々しい雰囲気に包まれていた。
「今回緊急で呼び出しをした理由は分かってるだろうが、今回のこの馬鹿騒ぎだ。
お前さん達も知ってるだろうが、少なくとも今晩だけで大小8つの組織が潰れてる。
やった野郎は警備官の男。しかもたった一人で、だ。」
目の前の水晶に向かって話しかける男がいた。
右目には大きな十字の傷、体のあちこちにも刀傷や爪で切り裂かれた後、火傷の痕があり、歴戦の侠客である事を肉体が物語っていた。
その男はもう老齢で肉体は衰え、皺だらけの老体ではあるものの、若かりし頃から変わらない鋭い猛禽の眼は健在だった。
「ホント、何の冗談なのかしら?
冗談じゃないのは百も承知なのだけど、一体向こうは何考えてるのかしら?」
水晶の向こうから声が聞こえる。
水晶の前に投影されたのは目が痛くなる程の真っ赤なドレスを身に纏い、血よりも赤いルージュを引き、羽飾りの付いた赤い帽子を戴いた、恰幅の良い堂々とした女性。不思議なことに、それだけ赤に身を包んでいるというのに本人はその赤に呑まれず、輝いている。
二十年。血よりも紅く、夜の太陽であり続けている彼女は水晶を通してもその輝きは健在だ。
「どうでもいい……と言いたいところですが、そうもいかないのでしょう。
どうやら、その一人とやらは衝動的かつ無差別に組織を襲い、壊滅させているらしい。
我々が標的になる可能性は十二分に考えられる。」
水晶から響く音と映る影が切り替わり、映し出されたのは神経質かつ面倒臭そうに睨む双眸。
わざとらしく眼鏡をクイと上げ、白衣をはためかせる男は少し滑稽に映りそうになるが、本性や本質の片鱗でも見たことのある人間は男を笑いはしない。
「『戦争』しかねだろ。
向こうが喧嘩売ってきたんだ。ブチ殺される覚悟は当然してんだろ?」
ガサツ。粗野。考えを放棄したと言わんばかりの投げやりな男の声。
鳥の巣のようになった髪を手入れもせず伸ばし放題、狩った獲物の革をそのまま身に纏う様は山賊の類だ。
「野蛮よ、喧嘩売られたから殺すなんてやり方。
互いに殺さない様にしなきゃ明日には誰も残らないわ。」
「考え方が動物的ですね。それをしたら総力戦。文字通り互いに致命傷の痛み分けになるでしょう。」
山賊の発言に二方向からすかさず否定が入る。
「あ?誰が動物的だ。」
「おや、もしかして『的』は無くても平気でしたか?
流石にそれは礼を欠くと思ったのですが、不要ですかね?」「戦争前に手前を殺す。」
「……………。」
この街のアンダーグラウンドのトップ4人。顔を合わせると、話をすると、こうなる。
魔道具を用いたトップ同士の遠隔会議だった事で今回の会議を何とか続行させる事が出来そうだ。
「じ、辞世の句………む…無念なり……天誅ならず、刃失く………」
通り魔集団『天誅隊』:人誅
天誅!天誅!天誅!『天誅隊』は大体某なろう小説の会話能力を殺傷力に変換している『幕末プレイヤー』の親戚だと考えれば大丈夫です。(『』内を検索すると…)
因みに、多分コレを幕末志士に見つかれば私は天誅されます。
いやはや、にしてもこの街、物騒ですね!何でここまで色々な組織がうじゃうじゃいるんでしょうか?




