副会長 立つ
「我々がこうしている理由は、賊の制圧だけが目的ではありません。」
モラン商会。この商会は出自からして他と違う。
本来、金を儲けるのが商会の目的だ。どんな崇高な目的を掲げていたとしても、それは決して変わらない真理だ。
が、モラン商会は、本来使い潰されて亡くなっていた筈の人材、本来在る筈のない資金を元手に作られた、謂わば亡霊の商会だ。亡霊達に過ぎた金は必要ない。
まぁ、俺達亡霊は同じ亡霊がこれ以上増えない様に、亡霊らしくこうしてコソコソ足掻くのが似合ってる。ってワケだ。
「人質となった商人や商人見習い、その他賊に強制的に従わされている人間を罪に問わない事、そして、人質全員の保護を最優先事項として対応する事をお願いしたい。」
丁寧に、頭を下げて。そして単刀直入に無理難題を叩き付ける。
息を呑む音が頭上で聞こえる。死角で表情を整えて頭を上げると表情が一層険しいボンノー隊長が居た。
「手前、自分が誰で、相手が誰で、ここが何処で何をほざいているか分かってるのか?」
ドスの効いた声が部屋に響く。
モラン商会副会長が、警備官のボンノー隊長に、警備隊の拠点で無理難題を宣っている。
目の前の男の匙加減次第では、今直ぐにでも俺はとっ捕まってもおかしくない。
警備官達はあくまで国の法律システム側の組織。金でどうにかなる相手ではない。
要は俺は今、警備官相手に癒着を持ち掛けていると言っても過言ではない訳だ。
「重々承知しております。」
「じゃぁとっとと失せろ、俺達はお前らの犬じゃねぇ。秩序を手前らの匙加減で弄るんじゃねぇ。」
『もういい』とばかりに手を振って明後日の方を向く。
「待って下さい。我々も徒に秩序を乱そうとしている訳ではありません。
今回の調査で被害にあっているのは駆け出しの商人見習い。件の商会に騙されてしまった結果として協力を強制されています。
人命最優先は困難と存じますが、どうか尽力をお願いいたします。」
警備官達は基本的に人命優先かつ法の遵守最優先だ。
そして、困った事におっそろしく容赦が無く凄まじく融通が利かない石頭だ。
脅されて罪を犯した人間であろうと情状酌量なんてものはない。脅した奴と同様にブタ箱にブチ込まれるなんてザラにある話だ。
この場合、賊どもの被害の規模からして拠点制圧に乗り出したら確実に強引な武力制圧になる。
そして、首輪をされて強制されたとはいえ、賊の手伝いをした事実が有る以上その場に居る全員が罰則の対象になる。そして、こちらで調べた首輪の性質上、確実に頭と胴が分かれる輩は出るし、それの破片で警備官達も無事じゃ済まない。
そう、良くて逮捕。最悪死人が出る。此方も向こうも区別無く大量に死体が積み上がる。
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