反逆の商人1
今まで自分の中、奥底にあった何かが拡がっていく。
自分の底かと思っていたそれ。固く、黒く、自分には分からない自分の中にあった何か。
やりたくもない人を踏み躙る行為をやらされて自分は望まない悪人に成り果て堕ちた。
一生懸命や粉骨砕身で済ませてる訳にはいかない程の私の努力が『便利だった』・『俺の言う事を聞いた。だから使ってた。』・『厄ネタになって邪魔になったから殺し屋を差し向けた』で済まされた。
「商人は舐められたらお仕舞だからな?俺達ァ何も作ってねぇ、何も生み出さねぇ、ただ人のモン買って他に流すだけだと思ってる連中も多い。だからっ言ってゴミ掴まされて『売らせてやるんだ感謝しろ』なんて威張らせてちゃぁ駄目だかんな。
俺達だって仕事はしてる、大事な仕事をよぉ。
大陸の果ての甘ぁい実の味を大陸中心に届けた。海の向こうの世界の本をこっちに届けた。空の彼方にある景色を地べたに這う皆に届けた。
俺達は胸を張って仕事してんだ。その分キッチリ貰って釣り合わせろ。それが俺達の証明だ。俺達の価値だ。
舐めた真似して渋る奴からは多少強引でも搾り取れ。絶対だかんな。」
未だに覚えている商人の心得。自分には『多少強引な方法』は向かないと知っていたし、やりたくないからそれ以外の穏便な方法で公平な取引が出来るようにと心掛けてきた。
会長の言葉を胸に商人として今まで生きてきた。
当時の私は…今でもその心得は覚えている。
(だからこそ、キッチリ払ってもらいましょう会長。
私に多少強引にでも搾り取れと言ったんだ。今までの私の仕事分と残りの私の命の分がこんなちっぽけな袋一つっぽっちなんて釣り合わない!
私の価値はもっとずっと、これが端金にも及ばないと思える程在る!
それを証明して、価値を認めさせる。それが私の商人としての生き様です!)
商人なら商人らしく、拳ではなく金のたっぷり入った袋で殴り倒す。
「モラン商会のレンさん、今のアナタにどの程度の裁量があるか分かりません。どの程度まで出せるかを教えて頂いても構いませんか?」
目の前の楽しそうな顔の若者を真っすぐ見る。
「こう見えてモラン商会では俺、幹部ッス。超エライッスよ。
長丁場巨大プロジェクトだったり、商会の口座を一気にガッツリ減らすレベルの額をポンと出すのは無理ッスけど、そうでなければ副会長の言無しでこの場でも決定出来るッス。
馬車一台分の上等な魔石だろうと価値見出せれば即決で買うッス。無論この場で現金払いッス。」
板挟み潰される系商人が何時の間にか復讐人に変化しそうに……。続きます。
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