他の囚人が口を閉ざせばジレンマは無くなる
毎日投稿途切れて申し訳ないです。
題名は有名な『囚人のジレンマ』というものから来ています。詳しくは省きますが、口封じ出来ればそもそもこのジレンマは崩壊します…多分。
サイクズル商会には仕事終了の報告をした。
殺し屋の行く末やその後を詮索するのは暗黙の了解で禁止されているし命が惜しければやる事は無い。
こうして、サイクズル商会から殺しの依頼の代金分をレン達三人は巻き上げるに至った。
そうして、用意した馬車の中で。
「話を戻しますけど、やっぱりイタバッサさん、アンタも悪いッスよ。
盗賊のさばらせて、ソイツらを使って新人売り飛ばして、ライバル潰して、許されるモンじゃないッス。
で、煮え切らないどっちつかずの態度でアジトまでノコノコ行って、会長に始末される。もうダメッスよ。
悪くない悪くないって、アレ見たッスよね?アンタの事だってどう思っていたか…聞きましたよね?
アンタはあんなのの悪事の片棒を担いでいたんッスよ。悪くない訳無いじゃないッスか。」
やめてくれ………
「アンタはこのままだと悪人側ッス。商人には見えないッス。」
もう、いやだ……
「ま、俺達にはもうどうでも良い事ッスね。
ハイこれ。あげるッス。」
手にさっき見た袋を握らされる。
軽くはなっているが、金属が中でチャリチャリと鳴る。
「殺しの報酬の半分。成功はしてないし、受け取る資格が無いから本人達は受け取れないと言ってたので俺の分とアンタの分、二つに分けてその内一つッス。
ま、要は俺達の命の価値ッスね。やー、安いモンッスねー…これでどうにか出来ると思ってるとか、甘いッスねー。」
楽しそうに袋をチャリチャリ弄んで笑い出す。
笑えない。終わったんだ。
必死に働いてきた。何度も心が折れながら、理不尽に潰されそうになりながら、苦しみを噛みしめながら、必死に働いた。
不器用で頭が悪い私には強みと呼べる力なんてない。人が要領良くやる中で愚直に懸命に働かないと私にはもう何も残らないから必死でやってきた。耐えてきた。
報い……何故だ⁉
懸命にやって、感情を押し殺して、罪悪感を殺して、自分を殺して、殺して殺して殺して殺して…………
汚れ仕事をやらされて、最後に罪悪を感じてその報いで殺される?
なんで?なんでだ?
「じゃ、サヨナラッス。アンタが生きてる事は他人にバラさないし、アンタが何処で何をしても俺達の足を引っ張ったり敵に回らない限りは関知しないッス。
それだけ金があれば田舎でゆっくりゆるく商売して老衰で死ぬまで過ごせると思うッスよ。
傭兵時代に疲れた連中は、やっちまった事は忘れて楽しそうに過ごして終えるってのをやってたッスよ。」
願ってもいない、甘い誘惑が用意されている。
これだけあれば、今の自分の力を使えば、倍以上に増やして海沿いの綺麗な街で過ごす事だって出来る。
でも、そうなったら私はその人生を苦しんで生きていく事になる。
自分の着ているもの、食べているもの、眠るときに見る天井。
全てがこの時のこの光景を呼び起こすだろう。
悪くない
自分の中に何かが湧き出す。
どろりとした、ドス黒い何かが体の中に溜まってそれが体中を走っていく。満ちていく。
私のせいじゃない
努力して血を吐いてそれでも立ってきたのに、その結果商人を否定されて、自分を否定されて、命を奪われたも同然。
惨めにこれっぽっちの金で自分の命を売り渡す。
とぷん
ドス黒い何かが全部を染めた。
「元サイクズル商会の古参商人としてモラン商会のレンさんに商談があります。」
「お?何ッスか?おぉ、目…その目ッス。
普通の人間が真面目に何かを積み上げて、で、なんかの弾みで弾けて、それを惜しげも無く後先考えずに使い潰して何かデカイ事をブチ噛ます時の目ッス。
商談、聞くッスよ。」
ジレンマなんてどちらか一つを潰せば終わりじゃないかね?と教授が囁きました。囚人になってことなんて無いくせに!




