M印の悪意の一つ
レンは有能な人材二人を商会に迎え入れながら手の中の物を見やる。
実際に作ったのは自分。しかし考案と設計を行ったのは若干ながらも我らが会長、モリアーティー。
最初は扱いに戸惑ったものの慣れれば手足を幾つも手に入れたも同然。器用過ぎる性能だと思った。
今回、殺し屋二人を相手に生け捕りという真似が出来たのはこれあってだと百手類と会長に感謝をしていた。
『モラン商会会長モリアーティー考案・設計魔道具』
名称:百手類
形状は手の平サイズの橙色の筒。
その性質を端的に述べるとすれば『周囲の物質を取り込み自身の任意の形へと変える事が出来る』というものだ。
構造はシンプル。筒の表面及び裏には術式が付与されており、魔力を流し入れる事で周囲にある任意の物質を百手類を中心として引き寄せ、強度強化を行いながら任意の形状にする事が出来る。
例えば周囲に土がある時に結集させる物質を『土』として発動すれば百手類を中心として土が集まる。
これを自分が望む形へ形成し、強化すれば魔力を流している間、その形を維持し続ける事が出来る。
これを瞬時に切り替えることが出来れば、
隠し持った百手類を起動→棒に成形→瞬時に籠手に変形→瞬時に盾に変形
と無手を装いつつ状況に応じた武器や道具を作り出す事が出来る。
応用が出来れば物質の集結と形成を同時に行い成形した物質を押し出して手足の代わりにする事や筒内部に空気中の水分を結集させてレンズを作り出し望遠鏡や発火装置として使う事さえも出来る。
総じて、単一の道具と比較した場合は劣化になる場合が多いが、手数と汎用性という点で優れていると言える。
ただし、運用時に注意すべき点がある。
第一に、この装置は『周囲の物質を集め成形する』という特性故に形作るものの材質は周囲の物質依存となるという事。
例えば周囲にあるものが砂鉄のみの場合にこれを使ったとして、出来るのは鉄性の物質。水だけならば水性になる。形状は操作出来ても材質に干渉は出来ない。
液体・気体・固体と物質の状態に関わらず干渉は出来るが、そもそも周囲に物質が無い場合は使い物にならず、砂や小石を集結して形成する事は出来ても岩の様な大き過ぎるものはそもそも結集が出来ず、当然形成も出来ない。
第二に、この装置は『形状データの記憶機能を持っていない』という事。
物質の集結は設定さえすれば自動で行われるが、形成は自身で行う必要がある。
剣を形作るのならば刀身の長さ、幅、柄の大きさや形状、両刃か片刃か等の詳細な形状を自身で作らねばならばい。
使い方を知らない人間が扱おうとすれば装置を持った手どころか全身が集結させた物質で埋まって最悪圧死や窒息死…となりかねない。
最初に言った棒→籠手→盾といった瞬時の変形をするには瞬時に形状を切り替える操作速度と詳細な形状を瞬時に作り出せる精密操作性が要求される。
第三に、最後に、この装置は物質の結集・形状の維持・強度の増強の三つの工程で魔力を消費するという事。
要は燃費が良くない。
以上の三点より最適使用候補者の条件は
・ある程度物質に関して知識のある者
・瞬時に最適な形状を選択し作り出せる精密さと迅速さを併せ持った者
・魔力を豊富に持つ者
・環境や状況の変化が高頻度で起こる者
である。
シェリー君にはあまり向かないな。
消費する魔力と実行出来る幅が釣り合わない。
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『百手類』。漢字表記は「百種類」の種を「手」段に変えただけで読みは英語の「hundred(百)」と「hand(手)」+「dread(恐ろしい)」というダジャレです。
刀剣同士の打ち合いと見せかけてギリギリで十手や大槌に変えて武器破壊を狙う事や武器をこれ見よがしに敢えて常時出しっぱなしにして使う得物を偽装する事も出来るので戦略的な悪巧み適正はそこそこ高い。
ただし、強度は材質依存で、部品が複数必要or飛び道具を作ることは性質上不可能。(筒を中心に形成を行っているため離れると術式の対象範囲外になる)
つくったものの中に別の機構を作り出すことも事実上不可能。ただし、外付けの部品を形成時に組み込むことは可能。




