人と人
馬車は一時間と待たずに到着した。
当然、乗っているのはいつもの3人組。
にしても……勝手の違う馬車をよくもまあここまで無茶苦茶な速度で飛ばしたものだ。
目の前にあるのは馬車。だがその荷台側面には金属製の柱が縦横一定間隔で並び、さらに金網が取り付けられている。
後ろに取り付けられている扉も頑丈な金属製で、上下2つ、扉に1つの計3つの鍵穴が取り付けられ、魔法を使ったとしても破錠には骨が折れる。
そんな拵えだから当然、重量は並大抵ではない。
地面に刻まれた轍の深さはそれを雄弁に語っている。それを急停止した時に後輪が浮くレベルの速度で飛ばしてきた。
交通法規というものがあれば一発で捕まる。
「モラン商会特別便のご利用誠にありがとうございまさぁ!」
「運ぶのは……アイツらだな、任しときなよぉ。」
「ご愛顧、感謝だよ。元気にやってるかい?」
三人組が笑い、シェリー君がそれに微笑みかける。
「お陰様で元気です。皆さんは如何ですか?」
「バッチリさね。
最近来た変わり者の発明家先生のお陰で仕事が大分楽になったよ。」
商会から定期的に来る報告で自称そこそこ天才、ジーニアス=インベンターの活躍は伝わっていた。
簡単な施設設備の修理に始まり、魔道具の試作や改良、更には設計やそのアドバイスまで行っているという話だ。
まさに『自称そこそこ天才』と呼ぶに相応しい。中々良い掘り出し者だった。
「そいつらだね、捕まえたってのは。」
3人とも手袋をして手早く気絶した狼を檻の中へと運んでいく。
「お手間取らせます。そしてよろしくお願いします。」
「任せて下せぇ。確実に素早く運ぶ。」
「それが俺達、モラン商会の誇る運び屋のモットーだよぉ。」
「この子らは責任もって預かる。だからアンタは安心して自分の仕事に戻りな。」
サムズアップして、赤毛がシェリー君を軽く抱き締める。
「頼りないかもしれないけど、アタシらは大人で、力も無い訳じゃない。今回、それを覚えといてくれたの、嬉しかったよ。ありがとう。」
片目を瞑って微笑みかける。
シェリー君はそれに驚く様に反応し、同時に目を潤ませた。
「そんな、ありがとうを言うのは、こちらの方です。こんな私……いいえ、私に力を貸して下さった貴方達3人に感謝を。」
淑女としての振る舞いに変わる。
『こんな私』なんて台詞を聞いた途端、3人の表情が変わったからだ。
「良し。」
「ウッシ!」
「よーし。」
三者三葉にその振る舞いに笑顔で応え、馬車に乗り込み走り出した。
「仲がよろしいのですね。」
「以前、当主様を保護した時に、色々と協力して頂いた方々です。」
「なるほど、然様でしたか。良かった……」
「それでは、お待たせいたしました、帰りましょう。」
まことに遅れました。申し訳ありません。それなのに評価やブックマークをいただきまして、ありがとうございます。




