これが、噂の作戦B!?
ローカに出る。
そこには俺の行く手を阻むように、数人の一年が両手を広げて待ち構えていた。
こいつらもラグビー部員か!
教室を出たときの勢いは殺されて、俺は立ち尽くした。
後ろを向くと、パソコン教室の文字。
道が、ない。
その上、そいつらは両手を広げたまま俺との距離を縮めてきた。
本当にやばいぜ、これっ!
「ちょっとごめんね。」
その時、そいつらの間を縫って、一人の男子生徒がこちらへ来た。
長身で綺麗な顔立ちのその生徒は俺の前に立つ。
頭一つ分は大きくて、見上げた。
「君が、倉田?」
以前、聞いたことがあるような台詞だ。
「はい。」
俺は正直に答える。
「そうか。」
そう言うと、その生徒は俺の手を掴んだ。
そして、両手を広げたままたじろいでいる一年の中につっこんでいった。
「倉田、走れるよね?…じゃあ、
しっかり走って!」
俺は引きずられていた状態から、走り出した。
一年は簡単に抜けた。
だが、一生懸命走ってもこの生徒は、抜けない。
それだけ速かった。
四階から一気に一階まで下り、体育館へつながる渡りローカの所で止まった。
少しの間、息を整える。
「とりあえず、自己紹介だよね。俺は、白河草太。陸上部の二年で、今日は倉田の護衛隊長任されたから、よろしく。」
「…はぁ。」
俺はイマイチ状況がつかめず、気のない返事を返す。
白河先輩は微笑みながらうなずいた。
「ところで、今日の作戦なんだけど…。」
そこまで言って、白河先輩は気の毒そうな顔を俺に向けた。
「うちの部長がね、絶対これがいいって言うから、決まったんだけど。」
部長…って、あの時の鼻唄の人か。
確か、作戦Bがどうとかって言ってたな。
「その…変装作戦ってのになったんだ。…とりあえず、これに着替えて。」
言いながら白河先輩は右手に持っていた紙袋を俺に渡した。
中を見る、…絶句!
白河先輩を見る、気まずそうに目を合わせてくれない。
もう一度中を見る。
そして白河先輩を…それを何度か繰り返した。
そして最後に、袋の中を見る。
そこにあったのは、紛れもなく台坂中学のセーラー服だったのだ。
三度は確実に見たので間違えようがない。
非常に残念ながら…。
「……これに、ですか?」
「俺たちは、反対したんだけど…部長が…。」
俺が部長に殺意を覚えたのは言うまでもない。
何が作戦Bだ、部長さんよぉ!?
俺に何を目指させたいんだ、あんたは!
「…どうしてもですか?」
「ああ。」
かすかな望みをかけ尋ねてみたが、あっさりと却下された。
あの時の峰川先輩の哀れみの視線の意味が今、わかった。
数分後。
「おー、けっこう似合ってる。」
白河先輩が俺を見ての第一声がこれだ。
俺はぎこちない動きで歩いてみて、異議を申し立てる。
「あの、こんなのでバレないとは到底思えないんですが…。」
「そんなことないよ。倉田、普通に可愛い。」
白河先輩は感心したように何度もうなずく。
誉められても、全然嬉しくなかった。
ただ、下に来ている体操服がもごもごするのがすごく気になる。
「じゃあ、行こうか。」
「へっ?」
間の抜けた声で聞き返す俺の手を、白河先輩が握った。
何の迷いもなく、白河先輩は階段を上っていく。
そして、二年の教室へと入っていった。
「まぁ座って。とりあえずバレるまでここで時間を稼ごう。」
俺はすすめられた通り、その席に座る。
ひたすら、居心地が悪かった。
部長さんの作戦は、自分が見てて面白いかどうかで決まります。 ちなみに作戦Aは、部長さんが集になりすますという、入れ替わり作戦だったとか…。




